「実態」と「実体」
どちらも新聞やニュースなどでよく目にする言葉ですよね。
「実態を調査する」
「実体経済が悪化する」
この2つの違いはどこにあるのでしょうか?
さっそく、確認していきましょう。
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実態の意味
まずは、「実態」の意味からです。
【実態(じったい)】
⇒実際の状態。本当のありさま。実情。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「実態」とは、
「実際の状態や本当の様子。実情」という意味です。
「実態」は、
外から見ても分かりにくい状態に対して使います。
例えば、以下のような使い方です。
- スマホ利用者の実態を調査する。
- ギャンブル依存症の実態に迫る。
スマホ利用者というのは、外から見ると、
どんなサービスを使用しているか分かりにくいです。
また、ギャンブル依存症についても、
実際に調べないと本当の様子は分かりません。
このように、「実態」とは、
表面だけでは分かりにくい状態に対して使う言葉だと思ってください。
実体の意味
続いて、「実体」の意味です。
【実体(じったい)】
①そのものの本当の姿。実質。正体。
②多様に変化してゆくものの根底にある持続的、自己同一的なもの。アリストテレスでは具体的個物、デカルトではそれ自身によって存在し、その存在のために他のなにものも必要としないもの、カントでは現象を認識するための範疇 (はんちゅう) にすぎないとされた。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「実体」とは、
「本当の姿や正体」という意味です。
「実体」は、
そのもの本来の姿を表現する場合に使います。
例えば、以下のような使い方です。
- 仮想通貨には実体がない。
- 彼の実体を知ってしまった。
仮想通貨というのは、
ネット上に存在するだけで本当の姿はありません。
また、人の正体というのも
なかなか本来の姿は表れにくいですよね。
「実体」とはこのように
「そのものの奥に秘められた本当の姿」に対して使うわけです。
ちなみに、辞書の説明にもあるように、
「実体」にはもう一つ意味があります。
しかし、
この意味の場合は哲学の専門用語なので
今回は覚えなくて結構です。
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実態と実体の違い
ここまでの内容を整理すると、
「実態」=実際の状態や本当の様子。実情。
「実体」=本当の姿や正体。
ということでした。
改めて比較すると、
両者は全く違う意味を持った言葉ということが分かるでしょう。
まず、「実態」は、
何かの「状態や様子」に対して使います。
一方で、「実体」は、
何かの「姿やモノ・人物など」に対して使うのです。
これはなぜかと言うと、それぞれの語源に関係しているからです。
「実態」の「態」という字は、
「状態」の「態」から来ています。
よって、「実態」の方は
「アルコール依存症の実態について調べる」のように、
人がアルコールに依存しているという状態に対して使うわけです。
一方で、「実体」の「体」は、
「物体」の「体」から来ています。
「物体」というのは、
「目に見える姿や形があるもの」という意味ですね。
したがって、「実体」の方は
「黒い影があったが、その実体は猫だった」
のように姿や形があるものに対して使うのです。
まとめると、
「実態」=何かの「状態」に対して使う。
「実体」=何かの「姿やモノ・人物」などに対して使う。
となります。
ちなみに、両者の「類語」としては、
次のような言葉が挙げられます。
【実態の類語】⇒「実情・真相・現実・現状・実相・状態」
【実体の類語】⇒「中身・内容・実質・正体・正味・要素」
「実態」の方は、
外から見た状態や様子を表した言葉となります。
一方で「実体」の方は、
そのもの本来の中身を表した言葉となりますね。
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使い方・例文
では最後に、それぞれの使い方を
具体的な例文で確認しておきましょう。
【実態の使い方】
- 子供がたくさんいたため、家計の実態は苦しかった。
- いじめの実態を知らなかった先生の責任は重い。
- 不動産業界の実態について、明らかにする。
- 被災地の実態を調査するため、現地に行く。
- 不正な取引を行っている会社の実態調査が行われた。
【実体の使い方】
- A社は実体のない架空の会社という噂がある。
- 株価は上がったが、実体経済は反映されていなかった。
- 実体経済と金融経済の間に乖離が生じる。
- 実体顕微鏡によって、生物を細かく観察する。
- 実体のないビジネスを行っている悪質なショップだ。
補足すると、「実体経済」とは、
実際に実在する活動がもとになって起こる経済のことです。
要するに、私たちが実際にモノを買ったり売ったりした行動が
反映された本当の経済ということですね。
それに対して、
「株式を買ったり国債を買ったり」
などの行為が元になる経済を「金融経済」と言います。
どちらも経済の用語ですが、
新聞やニュースにも比較的よく出てくる言葉です。
また、「実体顕微鏡」とは、
「物体をそのままの状態で観察するための顕微鏡」という意味です。
物理的な観察に用いるので、
姿や形を意味する「実体」を使うと考えて下さい。
まとめ
以上、内容を簡単にまとめると、
「実態」=実際の状態や本当の様子。何かの「状態」に対して使う。
「実体」=本当の姿や正体。何かの「姿やモノ・人物」などに対して使う。
ということでした。
どちらも読み方が同じでややこしいので、
しっかりと違いを整理しておきましょう。
では今回は以上です。
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国語力アップ.com管理人
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