「並行」と「平行」
どちらも日常的に使われている印象ですね。
「線路と並行する道路」
「議論が平行線をたどる」
また、似たような言葉で、
「併行」や「平衡」も使われているようです。
これらの言葉の使い分けは、
一体どのように行えばよいのでしょうか?
さっそく、確認していきましょう。
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並行の意味・読み方
まずは、「並行」の意味からです。
【並行(へいこう)】
①ならんで進むこと。
②二つ以上のものが同時に行われること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「並行」には2つ意味があります。
1つ目は、
「ならんで進む」という意味です。
- 線路に並行する道路。
- 川に並行する道路。
- 彼女と並行して歩く。
言い換えれば、
「同じ方向を向いて隣り合う」ということですね。
そして2つ目は、
「二つ以上のものを同時に行う」という意味です。
- 2つの計画を並行する。
- 学業と仕事を並行する。
- 国語と英語を並行して学ぶ。
この場合は、一言で「同時進行」と覚えてもよいでしょう。
平行の意味・読み方
続いて、「平行」の意味です。
【平行(へいこう)】
①一平面上の二直線、または直線と平面、あるいは平面と平面とが、どこまで延長しても交わらないこと。また、そのさま。
②「並行 (へいこう) 2」に同じ。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「平行」の意味も2つあります。
1つ目は、
「二つの直線が交わらない」という意味です。
- 平行四辺形を描く。
- 平行六面体を描く。
- 二つの平行線を引く。
この場合は主に、
「数学的な意味として使うことが多い」と考えて下さい。
ただし、場合によっては
「議論が平行線をたどる」のように
「話し合い」に対して使うこともあります。
つまり、
「お互いの主張が、一切かみ合わない」ということですね。
そして2つ目は、
「二つ以上のものを同時に行う」という意味です。
これは、
「並行」の②の意味と同じになります。
よって、この意味の場合はどちらも使えるので、
特に使い分けを意識する必要はないと言えます。
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並行と平行の違い
ここまでの内容を整理すると、
「並行」=ならんで進む。同時に行う。
「平行」=二つの直線が交わらない。同時に行う。
ということでした。
両者の違いを簡単に言うと、
並んで進むのが「並行」、直線が交わらないのが「平行」
となります。
基本的には、
上記のような理解で問題ありません。
ところが、ここで一つの疑問が浮かび上がります。
それは、
「平行の方も並んで進んでない?」ということです。
確かに、
平行の方も二つの直線が並んでいますよね。
しかしながら、両者には明確な違いがあります。
まず、「平行」の「平」という字は、
「ひらたい・たいら」などの意味があります。
言いかえれば、「偏りがない」ということです。
一方で、「並行」の「並」は、
「単にならぶ」という意味です。
そして、両者に共通する
「行」は「行く・進む」などの意味です。
これらを踏まえて考えると、
「平行」=かたよりがなくまっすぐ進む。
「並行」=単に並んで進む。
ということになります。
つまり、「平行」の方は
どこまで行っても直線は交わらないのです。
一方で、「並行」の方は、
場合によっては交わる可能性もあるのです。
ここが両者の一番の違いだと言えます。
例えば、「人が並行する」とは言いますが、
「人が平行する」とは言いません。
なぜなら、人が並んで歩く行為は、
場合によっては交わったり偏りが出たりすることもあるからです。
このように比較すると
両者の違いがよく分かるかと思います。
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併行・平衡との使い分け
似たような言葉で
「併行」と「平衡」もあります。
まず、「併行」ですが、
これは「並行」と同じ意味だと考えてください。
なぜなら、多くの辞書では、
「並行」と「併行」は同じ項目として載っているからです。
一般的には、その中でも
「併行」=「同時進行」という意味で使われることが多いですね。
例えば、
「併行審理(へいこうしんり)」という言葉です。
「併行審理」とは、
同じ裁判官が同時に複数の事件を担当することです。
「集中審理」の反対語としてよく使われるので、覚えておくとよいでしょう。
そして、もう一つの「平衡」ですが、
「平衡」とは「つり合いがとれている」という意味です。
使い方としては、
- 平衡感覚
- 平衡器官
- 平衡機能
ように使います。
「平衡感覚」とは、
「生物がバランスを保って運動するときの感覚」です。
この感覚を可能にする器官を「平衡器官」と言い、
可能にする能力を「平衡機能」と言います。
「平衡」の「衡」は、
元々「はかりのさお」という意味を持った字でした。
転じて、現在では「何かのバランス」
という意味で使われているのです。
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使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を
実際の例文で確認しておきましょう。
【並行の使い方】
- その自動車道は、鉄道と並行して走っている。
- 彼と並行して歩いている彼女を、偶然見かけた。
- 大通りに並行して、細い道がずっと続いてるようだ。
- 幼少期から、日本語と並行して英語を学ぶ。
- 並行輸入品を海外から仕入れる。
【平行の使い方】
- 平行四辺形とは、二組の対辺が平行な四角形を言う。
- 平行な二直線を引いてから、問題を解き始める。
- 彼らと話をし続けても、議論は平行線のままだ。
- 仕事と平行して、プライベートも充実させる。
- 数学の授業で平行軸の定理を求める。
【併行・平衡の使い方】
- 新事件は、併行審理によって進めていく予定だ。
- 平衡感覚を失わないようにして、台の上を歩く。
まとめ
以上、今回の内容をまとめると、
「並行」=ならんで進む。同時に行う。
「平行」=二つの直線が交わらない。同時に行う。
「併行」≒並行。「平衡」=つり合いがとれている。
ということでした。
「並行」は「単に並ぶこと」
「平行」は「平らにまっすぐ進むこと」と覚えておきましょう。
では今回は以上です。
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国語力アップ.com管理人
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