安くておいしい国の限界 問題 ノート 教科書 解説 テスト問題

『安くておいしい国の限界』は、小熊英二による評論文です。教科書・現代の国語にも収録されています。

この記事では、『安くておいしい国の限界』のあらすじや要約、語句の意味などを解説しました。

『安くておいしい国の限界』のあらすじ

 

本文は、内容により四つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①2016年のランキングだと、日本は国際観光客到着数で世界16位だが、増加率が高く、2012年から17年に三倍以上になった。今や観光は日本第五位の産業である。理由として、中国が経済成長し、近場の日本が観光先になったことも一因だが、観光客からみれば、日本は「安くておいしい国」になったことが挙げられる。

②日本が外国人観光客からみて「安くておいしい国」になったのは、日本の一人当たりGDPが、世界的に見て落ちたことと関連している。「安くておいしい店」は千客万来で忙しいが、利益や賃金は上がらない。これは観光客や消費者には良いことでも、労働者にとっては歓迎できないことだろう。

③日本は諸外国と比べて就労条件が緩いため、途上国から『苦学生』が留学生として集まる。いま日本では人口が減っているが、外国人が、低賃金で日本人が働きたがらない業種を支えている。だが、外国人観光客が喜ぶ「安くておいしい日本」は労働者には過酷な国なので、外国人で低賃金部門の人手不足を補う政策は、早晩限界がくるだろう。

④「安くておいしい日本」はもうやめるべきだ。良いサービスには適正価格をつけた方が、観光業はもっと成長できる。そうしないと、ブラック企業の問題や外国人の人権侵害は解決しない。また、デフレからの脱却もできないし、出生率も上がらないだろう。良いサービスを安く提供する労働に耐えながら、安くて良いサービスを消費する生き方は、もう世界から取り残されている。

『安くておいしい国の限界』の要約&本文解説

 

100字要約日本が「安くておいしい国」になったのは、観光客や消費者には良くても労働者には良くないことだ。良いサービスを安く提供する労働に耐えながら、安くて良いサービスを消費するような日本の生き方はやめるべきだ。(99文字)

筆者の主張を簡潔に述べるなら、「安くておいしい日本はやめるべきである」ということになります。

冒頭では、2000年代の過去20年において、世界の物価が上がり、日本が安くておいしい国になったことで、日本に外国人観光客が多く来るようになったことが説明されています。

しかし、日本が「安くておいしい国」になったことは、観光客や消費者には良いことでも労働者にとっては歓迎できないことなのだと筆者は続けます。

分かりやすい例が、途上国からの苦学生です。日本は諸外国と比べて就労条件が緩い国なので、途上国からの苦学生が留学生として多く集まります。そして、技能実習生、留学生、日系人といった外国人が、日本人が働きたがらない業種を低賃金で支えています。

筆者は、外国人で低賃金部門の人手不足を補うこのような政策は、人権軽視であるだけでなく、早晩限界が来るだろうと考えています。

また、良いサービスには適正価格をつけなければ、いま日本が抱える諸問題も解決できないとも述べています。具体的には、ブラック企業の問題や、デフレからの脱却、出生率が上がらないといった問題です。

そのため、良いサービスを安く提供する労働に耐えながら、安くて良いサービスを消費するような日本の生き方は、もうやめるべきだと結論付けています。

『安くておいしい国の限界』の意味調べノート

 

【ベイルート】⇒レバノン共和国の首都。地中海に面する港湾都市。

【バンコク】⇒タイ王国の首都。

【産業(さんぎょう)】⇒人が生活する上で必要とされるものを生み出したり提供したりする経済活動。

【一因(いちいん)】⇒一つの原因。

【物価(ぶっか)】⇒物の値段。

【GDP(ジーディーピー)】⇒国内総生産。一定期間内に国内で生産された付加価値の総額。

【千客万来(せんきゃくばんらい)】⇒多くの客が入れ替わりひっきりなしに来て絶え間がないこと。

【歓迎(かんげい)】⇒喜んで受け入れること。

【起業(きぎょう)】⇒新しく事業を始めること。

【強いて(しいて)】⇒あえて。無理に。

【英語圏(えいごけ)】⇒英語が日常で使用される地域。

【足し(たし)】⇒足りない分を補うこと。

【おのずと】⇒ひとりでに。

【指摘(してき)】⇒大切な点や欠点、過失などを具体的に取り上げて指し示すこと。

【要請(ようせい)】⇒必要だとして、強く願い求めること。

【滞在(たいざい)】⇒よそに行って、ある期間そこにとどまること。

【早晩(そうばん)】⇒遅かれ早かれ。いずれ。

【過酷(かこく)】⇒厳しすぎるさま。ひどすぎるさま。

【適正(てきせい)】⇒評価や判断が正当で正しいこと。

【最低賃金(さいていちんぎん)】⇒企業が労働者に最低限払わなければならないとされる賃金。

【合意(ごうい)】⇒互いの意思が一致すること。

【対価(たいか)】⇒他人に財産・労力などを提供した報酬として受け取る財産上の利益。

【デフレ】⇒物の値段が継続して下がり続ける現象のこと。デフレーションの略。

【脱却(だっきゃく)】⇒よくない状態から抜け出すこと。

『安くておいしい国の限界』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

カンコウ客が増える。

カンゲイ会を開く。

③人権がシンガイされる。

④産業界のヨウセイに応じる。

タイザイ期間を延長する。

テキセイな価格をつける。

⑦危機をダッキャクする。

解答①観光 ②歓迎 ③侵害 ④要請 ⑤滞在 ⑥適正 ⑦脱却
問題2「これなら外国人観光客に人気が出るだろう。」とあるが、人気の理由は何か?
解答例海外の三分の一で牛丼が食べられるのに味はおいしく、店はきれいでサービスは良いことや、ホテルなども同様に、諸外国より安くてサービスが良いこと。
問題3「このことは、日本の一人当たりGDPが、1995年の世界第三位から2017年の二十五位まで落ちたことと関連している。」とあるが、「このこと」とはどのようなことか?
解答例外国人観光客からみて、日本が「安くておいしい国」だといえること。
問題4「外国人のあり方は、日本社会の鏡である。」とあるが、これはどういうことか?
解答例日本に観光や留学、働きに来る外国人の様子は、日本社会の状態を反映しているということ。

まとめ

 

今回は『安くておいしい国の限界』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。