「就労」と「就業」
どちらも「企業で働く」という意味でよく使われている印象です。
さらに、似たような言葉で
「就職」も使われています。
社会人になるとよく目にするこれらの言葉ですが、
一体どう使い分ければいいのでしょうか?
さっそく、確認していきましょう。
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就労の意味
まずは、「就労」の意味からです。
【就労(しゅうろう)】
⇒仕事につくこと。仕事を始めること。また、仕事をしていること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「就労」とは、
「仕事につくこと・仕事を始めること」を意味します。
例えば、以下のような使い方です。
- 就労時間は朝9時です。
- 就労ビザを取得する。
「就労時間」とは、
「仕事につく時間」を指します。
また、「就労ビザ」とは、
「海外で仕事を始めるためのビザ」という意味です。
このように、
人が仕事についたり仕事を始めたりするような時に
「就労」を使うわけです。
ポイントは、
「就労」の「労」という字です。
「労」は「労働」という言葉があるように、
「働きそのもの」を意味します。
したがって、
「就労」は「働く」という行動に対し、
広く一般に使える言葉なのです。
就業の意味
続いて、「就業」の意味です。
【就業(しゅうぎょう)】
①その日の業務に従事すること。仕事に取りかかること。
②職業につくこと。⇔失業
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「就業」とは、
「その日の業務につくこと・職業につくこと」を意味します。
例えば、以下のような使い方です。
- 朝8時に就業する。
- 就業規則を守る。
※「就業規則」とは、
「会社で働く上でのルールのようなもの」だと思ってください。
「就業」は、
会社などの組織で使われることがほとんどです。
理由としては、漢字の由来から来ています。
そもそも、「就業」の「業」は
「事業」や「業務」などと同じ漢字です。
つまり、
「事務所や事業所などに出社して、仕事を行うこと」
が本来の「就業」の意味なのです。
「業」という字は、元々
「仕事」や「職業」を意味していました。
そのため、実際の仕事や職業につくときに
「就業」を使うわけです。
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就労と就業の違い
ここまでの内容を整理すると、
「就労」=仕事につくこと・仕事を始めること。
「就業」=その日の業務につくこと・職業につくこと。
ということでした。
両者の違いを簡潔に言うと、
「労」につくか、「業」につくか。だと言えるでしょう。
※ここで言う「労」とは、「労務(賃金を得るためにする労働)」
「業」とは、「業務(職業としてする仕事)」のことだと考えてください。
「就労」は、「労につくこと」です。
よって、会社員やアルバイト・フリーランスなど、
ほぼ全ての労働に対して使うことができます。
このように、
「働くこと」に対して幅広く使えるのが
「就労」という言葉なのです。
一方で、
「就業」は「業につくこと」です。
そのため、こちらは大前提として業務についている必要があります。
例えば、企業の正社員などは
当然業務についているのでこの条件を満たしています。
ところが、アルバイトはどうでしょうか?
アルバイトは、「一定期間、労務を提供する」
というケースがほとんどです。
したがって、厳密には
「アルバイトは就業している」とは言えないのです。
よく、履歴書の記入欄に「就業経験」という項目がありますが、
「就業経験」とは、過去に正社員として働いた経験を記した内容です。
もちろん、
アルバイトやフリーランスは含まれません。
このように考えると、
「就業はなぜ会社限定で使うのか?」という理由が分かるかと思います。
補足すると、意味の範囲としては「就労」が広いですが、
実際は「就業」の方を使うことが多いです。
日本の労働者のほとんどは会社で働いている社員です。
そのため、「業務を含んだ言葉」として、
「就業の方が使いやすい」ということでしょう。
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就職の意味
似たような言葉で「就職」があります。
こちらの意味も確認しておきましょう。
【就職(しゅうしょく)】
⇒職業につくこと。新しく職を得て勤めること。⇔(退職)
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「就職」とは、「職業につくこと」を意味します。
まず、「就職」は
会社に雇われる正社員限定で使います。
この時点で、アルバイトやフリーランスにも使う
「就労」とは異なることが分かるでしょう。
また、「就業」との違いですが、
どちらも、「職業につくこと」という意味は共通しています。
ただし、「就業」の方はすでに働いている状態
を指す時に使うことが多いです。
【例】⇒「就業人口・就業規則」など。
逆に、「就職」の方は
これから働き始める場合に使うことが多いです。
【例】⇒「就職活動をする・再就職を目指す」
さらにつけ加えると、
「就職」の方は「その日の業務につく」
という意味までは含まれていません。
よって、
「業務」という意味を強調する場合は、
「就業」を使うのが適切と言えます。
【例】
「朝8時に就職する」⇒「×」
「朝8時に就業する」⇒「〇」
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使い方・例文
では、最後にそれぞれの使い方を
例文で確認しておきましょう。
【就労の使い方】
- 本日は朝の8時から就労しています。
- 就労ビザの取得手続きを進める。
- まずは短時間就労者として働いてください。
- 障害を抱えた人へ就労支援をする。
- 就労移行の支援サービスを行う。
【就業の使い方】
- 就業時間は、朝9時から夜6時までです。
- 就業人口の推移をグラフで示す。
- 就業管理を雇用とあわせて行う。
- 就業規則は守るようにお願いします。
- 就業機会をもっと増やす社会を目指そう。
【就職の使い方】
- 不動産会社へ就職することになった。
- 就職活動は、早めにしておいた方がいい。
- 地元の企業に就職する予定です。
- 面接前に、簡単な就職試験を受ける。
なお、似たような言葉として
「就任」があります。
「就任」の意味は下記の記事で
詳しく解説していますのでこちらを参照してください。
まとめ
以上、内容を簡単にまとめると
「就労」=仕事につくこと・仕事を始めること。
「就業」=その日の業務につくこと・職業につくこと。
「就職」=職業につくこと。
【それぞれの違い】
「就労」⇒「働くこと」に対して広く使える。
「就業」⇒実際の仕事や職業につく時に使う。(原則、会社内)
「就職」⇒(正社員として)これから働き始める場合に使う。
ということでした。
この記事をきっかけに、ぜひ違いを理解して頂ければと思います。
では今回は以上です。
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国語力アップ.com管理人
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