「直喩」と「隠喩」
どちらも中学や高校の国語で勉強する内容ですね。
しかし、
何となくややこしくて難しいという印象だと思います。
そこで今回は、
この2つの違いや覚え方を簡単に分かりやすく解説しました。
後半では、間違えやすい言葉でもある
「換喩」と「提喩」についても触れています。
さっそく、確認していきましょう。
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直喩の意味
まずは、「直喩」の意味からです。
【直喩(ちょくゆ)】
⇒比喩法の一。「ようだ」「ごとし」「似たり」などの語を用いて、二つの事物を直接に比較して示すもの。「雪のような肌」「蜜に群がる蟻 (あり)のごとく集まる」の類。明喩。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「直喩」とは、簡単に言うと、
「~のようだ」等の語を使って他を例える方法だと思ってください。
例えば、以下の文は
「直喩」を使った表現だと言えるでしょう。
「彼女の肌は、まるで雪のようだ」
この場合、
彼女の肌がいかに白いかということを
雪を使って例えています。
もしも「直喩」を使わずに、
「彼女の肌は白い」という言い方だった場合、
読者にはどれだけ白いかがイメージしにくいです。
そこで例文のように、
「まるで雪のようだ」と表現することにより、
具体的に肌の色を想像することができるのです。
また、「直喩」のその他の表現としては、
以下のものがあります。
- 「~のような・~のように」
- 「~のごとく・~のごとき・~のごとし」
- 「~みたいな・~みたいに・~みたいだ」
いずれも共通しているのは、
これらの語を使って他を例えるということですね。
ちなみに、
「直喩」のことを「明喩(めいゆ)」と呼ぶ場合もあります。
「英語」だとどちらも「simile」という単語を使います。
隠喩の意味
続いて、「隠喩」の意味です。
【隠喩(いんゆ)】
⇒比喩法の一。「…のようだ」「…のごとし」などの形を用いず、そのものの特徴を直接他のもので表現する方法。
「花のかんばせ」「金は力なり」の類。暗喩。隠喩法。メタファー。出典:デジタル大辞泉(小学館)
「隠喩」とは、
「~のようだ」等の語を使わないで他を例える方法だと思ってください。
例えば、以下の文は
「隠喩」を使った表現だと言えます。
「彼女は天使だ。」
この場合、彼女という人物を
「~のようだ」を用いずに天使と言っています。
冷静に考えると、
「彼女」=「天使」ではありません。
ところが、「隠喩」というのは、
本来イコールで結びつくはずのないものを
「○○は××だ」という形で言い切るのです。
逆に、言い切ることによって、
聞き手に対して両者の関係を暗示的に想像させることができます。
「暗示的(あんじてき)」とは、
「物事をはっきりと示さずに、それとなく知らせること」です。
それとなく暗に知らせることにより、
逆に読者にインパクトを与えるわけですね。
そのため、「隠喩」のことを
「暗喩(あんゆ)」とも言います。
他には、「英語」を使って
「メタファー(metaphor)」と言う場合もあります。
「メタファー」はよく使われる言葉なので、
覚えておいたほうがよいと言えるでしょう。
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直喩と隠喩の違い
ここまでの内容を整理すると、
「直喩」=「~のようだ」等の語を使って他を例える方法。
「隠喩」=「~のようだ」等の語を使わないで他を例える方法。
ということでした。
つまり、2つの違いを簡単に言うと
「~のようだ」等が使われていれば「直喩」
「~のようだ」等が使われていなければ「隠喩」
ということですね。
「直喩」は、
「例えるもの」と「例えられるもの」を
「ような」などの語でつないで表現します。
一方で、
「隠喩」は「ような」などの語では
つながずにそのままの形で表現します。
どちらも便利な表現ですが、
それぞれ長所と短所を持っていると言えるでしょう。
「直喩」は、
「読者にイメージを伝えやすくする」というメリットがあります。
ただし、例えるワードを間違えてしまうと、
余計分かりにくくなるというデメリットもあるのです。
例えば、直喩を使って「CPUのような人」と表現したとします。
※「CPU」=「コンピュータの中枢部分のこと。」
ところが、
「CPU」の意味が分からなければ
相手にイメージが伝わりません。
「直喩」というのは、
ある程度みんなが知っているワードを
選ぶ必要があるのです。
「隠喩」も同様です。
「隠喩」もうまく例えることができれば、
相手の心に暗示的に伝えることができます。
しかし、
例えるワードを間違えてしまうと
相手に伝わりにくくなってしまうのです。
特に「隠喩」の方は
「~ようだ」等を使わないため、
余計分からなくなってしまう可能性があります。
したがって、両者とも使い方には
十分注意する必要があると言えるのです。
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換喩・提喩の意味
似たような言葉で、
「換喩(かんゆ)」と「提喩(ていゆ)」があります。
念のため、これらの意味も確認しておきましょう。
【換喩(かんゆ)】
比喩法の一。ある事物を表すのに、それと深い関係のある事物で置き換える法。「青い目」で「西洋人」を、「鳥居」で「神社」を表す類。メトニミー。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「換喩(かんゆ)」とは、
「ある言葉をそれと深い関係がある言葉で置き換える技法」という意味です。
例えば、以下のような文は
「換喩」を使っていると言えます。
ホームランにより、スタンドが大きく湧いた。
ここで言う「スタンド」とは、
「スタンドにいる観客」という意味です。
つまり、単に「観客」と言うのではなく、
あえて「スタンド」と表現しているということですね。
「換喩」の「換」は「変換」の「換」と同じであるように、
「何かを換(か)える」という意味があります。
したがって、
ある言葉を関係の深い言葉に置き換えるような時に使うのです。
続いて、「提喩」の意味です。
【提喩(てんゆ)】
⇒比喩法の一。全体と部分との関係に基づき、「花」(全体)で「桜」(部分)を、「小町」(部分)で「美人」(全体)を表現する類。シネクドキ。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「提喩(ていゆ)」とは、
「全体と部分の関係に基づき、言葉を表現する技法」のことを意味します。
例えば、以下のような文は
分かりやすい「提喩」だと言えます。
「ちょっとお茶をしませんか?」
ここでいう「お茶」とは、
紅茶など特定の飲み物に限定しているわけではありません。
緑茶・コーヒー・オレンジジュースなど様々な飲みものが含まれます。
つまり、「お茶」という全体的な意味を含んだ言葉を使うことにより、その他の部分的な飲み物の意味も伝えていると言えます。
このような表現方法を、「提喩」と言うのです。
なお、これらの技法は
「直喩」と「隠喩」も含めてすべて「比喩」と言います。
「比喩」という言葉は受験によく出る大事な用語です。
そのため、受験生は
上記の記事も確認しておくことをおすすめします。
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使い方・例文
では最後に、それぞれの使い方を
実際の例文で確認しておきましょう。
【直喩を用いた例文】
- 彼が怒っている姿は、まるで鬼のようだ。
- 彼女は太陽のように明るい性格である。
- ライオンのように凶暴な性格の持ち主だ。
- 光陰矢の如し。(こういんやのごとし)
- その役者は鬼のごとき形相で相手をにらみつけた。
【隠喩を用いた例文】
- 彼は歩く辞書と言われている。
- 彼女は一輪のバラだ。
- 人生はドラマである。
- 食べすぎて牛になる。
- 上司は氷の心を持っている。
【換喩を用いた例文】
- あいつはパトカーに捕まったようだ。(警察をパトカーに換えた表現)
- 青い目の男が、来店してきた。(西洋人を青い目に換えた表現)
- 最後のゴールで、スタジアムは熱狂に包まれた。(観客をスタジアムに換えた表現)
【提喩を用いた例文】
- 先週は家族でお花見をしてきました。(花(全体)で桜(部分)を伝えている)
- 医者から酒の飲みすぎを注意された。(酒(全体)でアルコール飲料(部分)を伝えている)
- 久々に息子の運動会に足を運んだ。(足(部分)で体(全体)を伝えている)
まとめ
以上、今回は主に
「直喩」と「隠喩」の違いについて解説しました。
内容をまとめると、
「直喩」=「~のようだ」等の語を使って他を例える方法。
「隠喩」=「~のようだ」等の語を使わないで他を例える方法。
「換喩」=関係がある深い言葉で置き換える方法。
「提喩」=全体と部分の関係で言葉を表現する方法。
ということでしたね。
では今回はここまでとなります。
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国語力アップ.com管理人
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