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環境問題と孤立した個人 あらすじ 教科書 学習の手引き ノート プリント 200字要約

 

『環境問題と孤立した個人』は、高校現代文の教科書に出てくる評論です。ただ、実際に文章を読むとその内容が分かりにくいと感じる箇所も多いです。

そこで今回は、本作のあらすじや要約、定期テスト対策などを簡単に解説しました。

『環境問題と孤立した個人』のあらすじ

 

本文は、大きく分けて5つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①環境問題の改善には、国際的な政治合意を形成して問題に対処していく必要がある。だが、より深いレベルでは近代科学の自然観を見直す必要がある。近代科学が自然を使用するにあたって強力な推進力を私たちに与えてきたことは間違いない。それは人間に効率的な手段と道具を与えたというだけではなく、生態系の維持と保護に相反する発想が含まれていたと考えられる。

②近代科学の自然観には、中世までの自然観と比較して、いくつかの重要な特徴がある。第一に機械論的自然観、第二に原子論的な還元主義、ここから第三に物心二元論が生じる。二元論によれば、物理学が記述する自然の客観的な真の世界と私たちの主観的な知覚の世界は全く異質のものと見なされる。

③二元論的な認識論では、感性によって捉えられる自然の意味や価値は主体によって与えられるとされる。これによって自然は場所と歴史としての特殊性を奪われ、分解して利用されるだけの存在となる。そして、本当に大切なのは、人間の主観、心だけとなる。こうした態度の積み重ねが現在の環境問題を生んだ。

④近代の人間観は原子論的であり、近代的な自然観と同型である。近代社会は、個人を自由な主体として約束し、人権の概念を準備したが、同時に誰とも区別のつかない個性のない個人を出現させた。そのようなものとして人間を扱うことは、標準的な人間像を規定し、標準的でない人々のニーズを排除している。近代科学が自然環境にもたらす問題と、これらの原子論的な個人概念から生じる政治的・社会的問題とは同型であり、並行している。

⑤近代科学は自然を分解的に捉えたが、分解的に捉えられた自然は、生物の住める自然ではない。生態系は全体論的存在である。一つの生態系は独特の時間性と個性を形成する。自然に対して常に分解的・分析的な態度をとれば、生態系の個性、歴史性、場所性は見逃されてしまう。これが環境問題の根底にある近代の二元論的自然観の弊害であり、自然破壊はその悲劇的帰結である。

『環境問題と孤立した個人』の要約&本文解説

 

200字要約環境問題の改善には近代科学の自然観を見直す必要がある。近代科学の自然観は、機械論的自然観と原子論的還元主義から生じる物心二元論を特徴とし、自然は分解して利用されるだけの存在となる。近代の人間観もこれと同じで、自由な主体を可能にする一方で、標準的でない人々のニーズを排除している。全体論的存在である生態系に対して分解的・分析的な態度を取れば、生態系の個性、歴史性、場所性は見逃されてしまうのである。(198文字)

筆者はまず、現代の環境問題というのは「近代科学の自然観」が関わっているのだと述べています。近代科学の自然観には、主に次のような特徴があるのだと続けます。

それが、①「機械論的自然観」②「原子論的な還元主義」③「物心二元論」の3つです。

①は自然を動くだけの機械とみなす考え方、②は自然は原子と法則だけが真の姿だとする考え方、③は精神と身体は別の物であるする考え方のことです。

この中でも「物心二元論」のことを筆者は問題視しています。

物心二元論では、肉体は心の入れ物に過ぎないと考えるため、「身体よりも精神(心)の方が優れている」とする考え方が根本にあります。

この事を本文中では、「感性によって捉えられる自然の意味や価値は主体によって与えられる」「本当に大切なのは、ただ人間の主観、心だけだからだ。こうした態度の積み重ねが現在の環境問題を生んだ」などと書かれています。

簡単に言えば、「人間の心さえ大切であればよい」という考え方です。こういった考え方が、現代の環境問題の根本にあるのだと筆者は述べているのです。

そして筆者は、近代の人間観は原子論的であり、近代の自然観と同じなのだと続けます。近代以前の中世では、伝統的な共同体(村など)でその地域や歴史を重視するような社会でしたが、近代に入ると個人は自由な存在へと変わることになりました。

ただ、こういった自由で解放された個人というのは、他の誰とも区別がつかない、個性を失った存在にもなってしまったのだと筆者は述べています。

そして最後の段落では、再び自然の話に戻っています。自然に対して常に分解的な態度をとれば、生態系の個性、歴史性、場所性といったものは見逃されてしまいます。こういった近代の二元論的な自然観でいると、自然破壊によって人間も動物も住めなくなってしまう、という主張で締めくくられています。

全体としては、「物心二元論」「原子論的な還元主義」などの考え方が現在の環境問題の根っこにある、という筆者の主張を読み取ることがポイントとなります。

『環境問題と孤立した個人』のテスト対策

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

ヒンコンの家庭に育つ。

オセンされた川。

③意見がショウトツする。

④利益をツイキュウする。

⑤資格をソウシツする。

⑥問題をケイシしてはいけない。

⑦当然の結論にキケツする。

解答①貧困 ②汚染 ③衝突 ④追求 ⑤喪失 ⑥軽視 ⑦帰結
問題2「こうした態度の積み重ねが現在の環境問題を生んだ。」とあるが、「こうした態度」とは、どのような態度か?本文中の語句を用いて説明しなさい。
解答例自然は機械にすぎず、その意味や価値は全て人間が与えるものにすぎないと考え、自然を徹底的に利用することを躊躇しないような態度。
問題3「自然賛美の叙情詩を作る詩人は、今や人間の精神のすばらしさをたたえる自己賛美を口にしなければならなくなったのである」とあるが、これはなぜか?
解答例二元論的な認識論では、自然自体は意味や価値のないものでしかなく、仮に自然を賛美しようとするなら、その自然をすばらしいと感じる自分自身を賛美するしかないため。
補足「二元論的な認識論」においては、人間を抜きにした美しい自然というものは存在しないと考えている。例えば、きれいな海を見て、「この海はきれいだ」と純粋にたたえることはできず、「この海を美しいと感じる自分はなんとすばらしいのだろう。」などと考えるしかないということ。
問題4「没価値の存在」と「非存在の価値」とは、それぞれどのようなことか?本文中の例を用いて説明しなさい。
解答例

【没価値の存在】「自然」や「野生」のように、人間が興味を示したり利用したりしない限りは何の価値もないものだが、物理的に存在しているということ。

【非存在の価値】「心」や「主観」などのように、実際に手を触れてその存在を確かめることはできないが、人間にとって意味や価値のあるもののこと。

問題5「生態系は、そうした自然観によっては捉えられない全体論的存在である」とあるが、「全体論的存在」とはどのようなものか?本文中の語句を用いて説明しなさい。
解答例生態系の内部にある無機・有機の構成体が、循環的に相互作用しながら、長い時間をかけて個性ある姿として形成されるもの。
補足「全体論的」とは「分解せずに全体としてとらえられたさま」という意味。また、「生態系」とは「その中の構成体(有機体・無機体)がお互いに影響を与え合って形成されてきたもの」という意味。

まとめ

 

以上、今回は『環境問題と孤立した個人』について解説しました。ぜひ今回の内容を正しく理解して頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。