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真の自立とは 解説 意味調べ 学習の手引き 教科書 授業 語句

 

『真の自立とは』は、鷲田清一による評論文です。教科書・現代の国語にも収録されています。

ただ、本文を読むと筆者の考えや主張が分かりにくいと感じる部分も多いです。そこで今回は、『真の自立とは』のあらすじや要約、テスト問題などを含め解説しました。

『真の自立とは』のあらすじ

 

本文は、内容により3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①私たちの社会は、「できる」ことがプラスで、「できない」ことがマイナスだと単純に捉えられるようになった。その結果、今や十代の人たちも、社会を出ていく前の段階で「私はまだここにいていいの?」という問いを抱えるようになった。それは、今の社会のシステムは相当な知識や技術が求められる複雑なものになったからだ。

②人間は、自分が生きていく意味にこだわる生き物である。「自分探し」などはその分かりやすい例だ。だが、ある素質や才能が自分にしかないなどということはありえない。「自分にしかないもの」「自分にしかできないこと」を求め続けても、上には上がいるのだ。「自分しか」や「できる」「できない」ことから生きる意味を見いだそうとすること自体を変えていくべきである。

③「自立」という言葉は、「自分のことはできる限り自分でするが、助けが必要になった時に電話をかける相手がいる」ということである。つまり、いざというときに助け合う相互依存のネットワークをいつでも起動できる準備ができている状態である。書店に行くと「リーダーシップ」をテーマにした本がたくさんあるが、リーダー論など私は無意味だと思う。大事なのはリーダーではなくフォロワーであり、フォロワーシップである。自立した賢いフォロワーが常にリーダーを見て、全体を見ていることが重要なのである。私たちは賢いフォロワーシップを頭に入れて、生きることの作法として真の自立を身につけていかなければならない。

『真の自立とは』の要約&本文解説

 

200字要約現代社会はシステムが複雑になり、できることがプラス、できないことがマイナスのような単純に捉えられるものになった。だが、「自分しか」や「できる」「できない」ことから生きる意味を見いだそうとすること自体を変えていくべきだ。「自立」とは、いざというときに助け合う相互依存のネットワークをいつでも起動できる準備ができている状態である。私たちは、生きることの作法として真の自立を身につけていくことが大切である。(198文字)

私たちの社会は近代以前よりも複雑になり、「できる」ことがプラス、「できない」ことがマイナスだと捉えられるようになりました。

例えば、勉強ができる人は優秀だが勉強ができない人は劣っている、仕事ができる人は有能だが仕事ができない人は無能だ、といったことです。

そのため、今の子ども達はいつ自分が「できない」と決めつけられるか不安を抱えるようになったと筆者は述べています。

こうなると、人間は自分の得意なことを探す「自分探し」を始めるようになります。しかし、筆者は「自分探し」などは無理な話なのだと言います。

なぜなら、ある素質や才能が自分にしかないことなどはありえないし、「自分にしかないもの」を求め続けても上には上がいるからです。

そういった「自分しか」「できる」「できない」といったことを考える生き方自体を変えるべきだと筆者は主張しています。

ではどうすればいいのか?ということですが、それは最後の第三段落に述べられています。

筆者は、本当の「自立」とは、自分のことはできる限り自分で行い、助けが必要になった時に助けを求められる相手がいる状態だと定義しています。

そして、誰もがリーダーになりたがるような社会ではなく、全員が状況に応じてリーダーにもフォロワー(補佐する人)になれる社会が強いと述べています。

こういった、フォロワーが常に全体を見ながらリーダーのことをしっかりと観察し、場合によってはフォロワーがリーダーにもなる社会にしていくことで、私たちは真に自立的になり、生きていく意味を得ることができるということです。

『真の自立とは』の意味調べノート

 

【欠落(けつらく)】⇒あるべきものが抜けていること。

【象徴的(しょうちょうてき)】⇒ある物事を象徴するさま。「象徴」とは抽象的なものを具体的なもので置き換えること。

【成果(せいか)】⇒あることをして得られたよい結果。

【仲立ち(なかだち) 】⇒双方の間をとりもつこと。

【序列(じょれつ)】⇒一定の基準に従って並べた順序。

【プロセス】⇒過程。

【風潮(ふうちょう)】⇒時代の移り変りによって生じる世の中の傾向。

【負い目(おいめ)】⇒罪悪感による心の負担。

【明白(めいはく)】⇒明らかで疑う余地がないこと。

【システム】⇒制度。体系。

【成員(せいいん)】⇒団体などを構成する人員。メンバー。

【儀礼(ぎれい)】⇒社会的な慣習として、形式を整えて行う礼儀。

【肯定(こうてい)】⇒積極的に意義を認めること。

【承認(しょうにん)】⇒認め許すこと。

【烙印を押される(らくいんをおされる)】⇒消すことのできない汚名を受ける。周囲からそういうものとして決めつけられる。

【切実(せつじつ)】⇒わが身に直接さし迫っているさま。

【根拠(こんきょ)】⇒物事が存在するための理由。

【混同(こんどう)】⇒区別すべきものを、同一のものと間違えること。

【依存(いぞん)】⇒他に頼って存在または生活すること。

【開発(かいはつ)】⇒新しい製品や技術を実用化すること。

【相互依存(そうごいぞん)】⇒お互いに依存していること。

【起動(きどう)】⇒動きを起こすこと。

【縁の下の力持ち(えんのしたのちからもち)】⇒他人のために陰で努力や苦労をする人。

【務める(つとめる)】⇒役目を引き受けて、その仕事を行う。

【肝心(かんじん)】⇒最も重要なこと。

【鍵となる(かぎとなる)】⇒ポイントとなる。キーとなる。

【念頭(ねんとう)】⇒こころ。胸のうち。

『真の自立とは』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

リレキショの書き方。

ジョレツをつける。

③現代のコウレイ者。

ギシキを行う。

⑤意見をコウテイする。

エンの下の力持ち。

ワキヤクに徹する。

⑧リーダーをツトめる。

解答①履歴書 ②序列 ③高齢 ④儀式 ⑤肯定 ⑥縁 ⑦脇役 ⑧務
問題2『例えば、「老い」に対するネガティブな評価とも関係があるのです。』とあるが、「老い」に対するネガティブな評価とはどういうことか?本文中の語句を使い答えなさい。
解答例自分一人ではできないことが増えていく「衰え」のプロセスと捉えること。
問題3「かつて「大人」になることは、とてもシンプルでした。」とあるが、「大人になること」とはどういうことか?本文中の語句を使い答えなさい。
解答例社会の成員として迎えられること。
問題4「条件付き承認」とは、どういうことか。本文中の語句を使い説明しなさい。
解答例人の存在を「もしこれができたら」という条件付きでしか肯定しないということ。
問題5「生きていくことの意味を見いだせなければ苦しくなってしまうのです。」とあるが、「生きていくことの意味」とは具体的にどのような意味か?本文中の語句を使い答えなさい。
解答例「自分がいなければこの仕事が回らない」というような、自分がそこにいることに対しての何らかの意味。
問題6賢いフォロワーが常にリーダーを見ており、~と「思いやっている」とあるが、「思いやっている」を言い換えるとどうなるか?本文中から15字で抜き出しなさい。
解答例しなやかにいつも全体を見ている
問題7筆者が考える「真の自立」とは何か?「作法」「相互依存」という語を使い答えなさい。
解答例生きることの作法として、相互依存のネットワークをいつでも起動できるように人間関係を構築しておくこと。

まとめ

 

以上、今回は『真の自立とは』について解説しました。ぜひ定期テストなどの対策として頂ければと思います。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

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