『読み書きする身体』は、高校現代文の授業で学習する評論です。ただ、実際に本文を読むと筆者の主張が分かりにくい箇所などもあります。
そこで今回は、本作のあらすじや要約、テスト解説などを含め簡単に解説しました。
『読み書きする身体』のあらすじ
これまで私たちが親しんできた、モノとしての本の属性が失われようとしている。一般的には、形態がどうあれ、問題は中身だということになるかもしれない。しかし、本の物質性と読書との間には、身体性と知識の習得との深遠な関係がある。ヘブライ語のアルファベットを習う最初の日、教師は子どもたちにそれぞれの石盤に最初の文字を蜜で書かせ、それをなめさせたというエピソードがある。それは「文字」を単なる伝達媒体とする考えからは、絶対に出てこないような「教育」が、かつて存在していたということである。私たちはもともと文字を、常に触覚を通して学んできた。漢字文化圏の書道、アラブ語圏のカリグラフィーの伝統、そして細々とではあるが、ヨーロッパにもペンとインクの伝統は残っている。意識と物質との相互的作用の中から生まれ出るものが「文字」であり「言葉」なのだ。そこをおろそかにすると、「創造」という最も重要な出発点を、子どもの時代に逃してしまいかねない。
文字とは有限の記号によって、無限を創出する英知である。書物は読んでも読んでも、決して減ることがない。そこに収められている世界には、限りない豊かさが秘められている。こういう不思議を、読書経験を通じて、子どもたちは少しずつ見い出してゆくのだ。文字や言葉の魔術的な性質は、それを電子の媒体にも伝えていかなければならないからこそ、もう一度考えなければならない。
『読み書きする身体』の要約解説
『読み書きする身体』の語句・漢字ノート
【モノとしての本の属性】⇒「厚み」「感触」「重み」「匂い」などのこと。こうしたものは、電子化された本にはない。「属性」とは、ある事物が持っている性質や特徴のこと。
【パッケージ化(か)】⇒複数の要素をひとまとまりにまとめること。
【深遠(しんえん)】⇒内容が奥深くて容易にはかり知れないこと。
【読書における身体性(しんたいせい)】⇒読書をする時の体の動き。「本を開く」「ページをめくる」「本を閉じる」などの体が行う行為のこと。必ずしも「手」「指」に限らず、読んでいるときに感じる匂いやページをめくるときに聞こえる紙のこすれる音なども含まれる。
【差異(さい)】⇒他のものと異なる点。違い。差。※「差違」とも書く。
【触覚(しょっかく)】⇒物に触れたときに生じる感覚。
【建築的な含み】⇒建物に関係する意味もあるということ。「扉」は、本の一部の名称だが、それは建物の「扉」をも意味するというようなこと。
【宗教的な起源(きげん)】⇒「啓示」という言葉は、語源的には「神」などの人間を超える存在が真実や神秘を人間に示す、という意味を持っているということ。
【ここに及んで(およんで)】⇒ここまで来て。
【培う(つちかう)】⇒大切に養い育てる。
【潜在的(せんざいてき)】⇒表面には現れない状態で存在しているさま。
【感得(かんとく)】⇒真理などの奥深い意味を感じ悟ること。
【活写(かっしゃ)】⇒いきいきと写すこと。
【傑作(けっさく)】⇒作品が非常にすぐれたできばえであること。また、その作品。
【駐在(ちゅうざい)】⇒一定の場所に相当の期間とどまっていること。
【ジャーナリスト】⇒新聞・雑誌・放送などの編集者・記者・寄稿家などの総称。
【完備(かんび)】⇒必要なものが完全に備わっていること。
【意味の媒体(いみのばいたい)】⇒意味を伝達する道具。「媒体」とは「伝達の手段」という意味。
【産物(さんぶつ)】⇒時代や環境から生み出されるもの。ある物事の結果として得られるもの。
【この点】⇒文字が意味の媒体にすぎないのではなく、意識と物質との相互作用の中から生まれるものであるという点。
【おろそかにする】⇒いい加減に扱う。軽視する。
【有限(ゆうげん)】⇒かぎりがあること。⇔「無限」
【創出(そうしゅつ)】⇒物事を新しくつくり出すこと。
【英知(えいち)】⇒すぐれた知恵。
【見いだす(みいだす)】⇒見つけ出す。発見する。
【魔術的(まじゅつてき)】⇒人の心を惑わすような不思議なさま。
『読み書きする身体』のテスト問題対策
次の傍線部の漢字を答えなさい。
①シンエンな関係がある。
②ショッカクを刺激する。
③向上心をツチカう。
④ケッサクと呼ばれる映画。
⑤冷房がカンビされた部屋。
まとめ
以上、今回は『読み書きする身体』について解説しました。ぜひ学校の授業や定期テストなどの参考として頂ければと思います。
国語力アップ.com管理人
最新記事 by 国語力アップ.com管理人 (全て見る)
- 現代文『言語と記号』の要約&本文解説、テスト問題対策 - 2022年6月27日