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『書物の近代』 要約 主張 問題 ノート テスト問題 意味調べ

 

『書物の近代』は、高校現代文の教科書で学ぶ評論です。ただ、本文中には難解な言葉なども登場し、筆者の主張も分かりにくいです。

そこで今回は、『書物の近代』のあらすじや要約、語句、漢字の意味などを含め解説しました。

『書物の近代』のあらすじ

 

あらすじ

書物には快楽とおびえの記憶がない合わさっている。書物の記憶は、内容ばかりではない。必ずそこにはその時読んだ書物のかたちの記憶が貼り付いている。子どもの頃の自分にとっては、書物はお話以前のモノとしての魅力に満ち、触覚的で、可塑的なオブジェでもあったのだ。

文字表記のレベルのみならず、文字の配列や紙面全体のレイアウト、口絵や挿絵、写真、装幀といったさまざまな構成要素が「読む」ことを支えるモノの諸条件を形作っている。書物はその起源から、読むための道具・機械だった。道具・機械を作り出すことによって、人はその都度、自らの生きる空間と時間とを少しずつ変えていった。そうした人と機械の歴史的な相互作用は書物という装置においても例外ではない。

現在は、情報化の波が私たちの社会を覆い尽くし、読み書きする技術、ツールもまた大きな変化を遂げている。ツールの変化が私たちの感覚や思考や認識の形態に少しずつ組み換えをもたらすことは避けられない。その変化の速度によって起きるさまざまなレベルの現象に対して、立ち止まって眺めわたす認識上のゆとりを持つことがますます大事になった。

紙に書かれた物がいいか、デジタル時代の電子テキストがいいかなどという問題設定自体、無意味である。紙と電子テキストが軋轢を起こしながらも共存できる状況が作られなければならない。

『書物の近代』の要約解説

 

要約書物の記憶は、内容ばかりではなく、モノとしての書物のさまざまな構成要素によって形作られている。人は道具・機械を作り出すことにより自らの生きる空間と時間を変えていったが、そうした相互作用は書物と人間の間にもある。現在、読み書きする技術やツールは大きく変化しているが、その変化がもたらす現象に対してゆとりを持ち、書物と電子テキストが軋轢を起こしながらも共存できる状況が作られなければならない。(195文字)
本文解説

本文は、行空きによって四つの段落から構成されています。まず第一段落では「書物の記憶」について、そして第二段落では「道具としての書物と人間」について語られています。いずれも、結論を述べるための具体例として有名な小説や巻物、洋書などが挙げられています。

第三段落では「ツールと思考の変化」、第四段落では「読むことと書くことの変容」について述べられています。第三段落の最初に、「ところで、~」とあるように、話題転換がされており、ここから筆者の主張が始まっているのが特徴です。

全体を通した筆者の主張としては、第四段落の「書物と電子テキストは軋轢を起こしながらも、共存できる状況を作らなければならない」という一文に集約されています。つまり、どちらがいい、どちらが悪いなどの白黒をはっきりさせることではなく、両者が互いに存在していく状況を作るべきである、というものです。

『書物の近代』の語句調べノート

 

【ない合(あ)わさる】⇒ここでは比喩的に「複雑に絡み合って一つになっている」という意味。本来は、「複数の糸や紐が、より合わされて一つになる」という意味。

【湖面(こめん)】⇒湖の表面。

【疾走(しっそう)】⇒非常に速く走ること。

【貧相(ひんそう)】⇒貧弱でみすぼらしく見えること。

【モノとしての書物】⇒中に書かれていることを中心に考えずに、物質的な要素を中心にして捉えた書物。「物質」という意味をはっきり示すために、片仮名の「モノ」という表記を使っている。

【繰る(くる)】⇒書物などのページを順にめくっていく。

【感嘆(かんたん)】⇒感心してほめたたえること。

【立体的(りったいてき)】⇒平面の広がりだけでなく、高さ・厚み・奥行などがあるさま。

【目を凝らす(めをこらす)】⇒じっと見つめる。

【可塑的(かそてき)】⇒自由に物の形を作れるさま。

【オブジェ】⇒前衛芸術で、作品中に用いられる石・木片・金属などさまざまな素材。また、その素材でできた作品。「書物が可塑的なオブジェである」とは、この前に述べられているように子どもが手に取る本は、その形を自由に変えることができる(開いたり、閉じたり、折ったりすることができる)一種の芸術作品のようなものだ、という意味。

【収斂(しゅうれん)】⇒一つにまとまること。

【拡散的(かくさんてき)】⇒広がり、散らばるさま。「収斂することのない拡散的なまなざし」で、「子どもが固定観念にとらわれずに、書物に対していろいろな見方や扱い方をする態度のこと」を表す。

【モノとして受け止める】⇒想像上の世界で、物質的な感覚をもって味わうこと。例えば、小説で食べ物を食べている場面の表現があれば、まるで自分がその食べ物を実際に食べているかのように感じ取ること。

【戦慄的(せんりつてき)】⇒恐ろしくてからだが震えるさま。

【魅惑(みわく)】⇒人の心をひきつけ、理性を失わせること。

【変身譚(へんしんたん)】⇒あるものが、姿を別のものに変えることがテーマあるいは筋となっている話。「譚」とは「話・物語」などの意味。カフカの小説の『変身』などが有名。

【顧みる(かえりみる)】⇒過ぎ去った事を思い起こす。回顧する。

【普及(ふきゅう)】⇒広く行き渡ること。

【テクノロジー】⇒科学技術。

【相互作用(そうごさよう)】⇒互いに働きかけ、影響を及ぼすこと。

【収集(しゅうしゅう)】⇒趣味・研究などのために集めること。

【蒸し返す(むしかえす)】⇒同じことを再び繰り返す。いったん結着のついたことを再び持ち出す。

【形而上学(けいじじょうがく)】⇒事物の本質、存在の根本原理を思惟や直観によって探究する学問。ここでは、「抽象的な議論」というほどの意味。

【軋轢(あつれき)】⇒葛藤が生じること。仲が悪くなること。

【共存(きょうぞん)】⇒同時に二つ以上のものがともに存在すること。

【葛藤(かっとう)】⇒心の中に、それぞれ違った方向あるいは相反する方向の欲求や考えがあり、その選択に迷う状態。

『書物の近代』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の漢字を答えなさい。

カンタンの声をあげる。

ミワク的な笑顔。

③半生をカエリみる。

④SNSがフキュウする。

キョウゾン共栄の精神を持つ。

解答①感嘆 ②魅惑 ③顧 ④普及 ⑤共存
問題2筆者が幼い頃に夢中になった「モノとしての書物」を例えた表現を、文中から13字で抜き出しなさい。
解答触覚的で、可塑的なオブジェ
問題3筆者は今後の情報化社会において、どのような状況が作られなければならないと述べているか?文中から抜き出しなさい。
解答紙と電子テキストとが軋轢を起こしながらも共存できる状況が作られなければならない。

まとめ

 

以上、今回は『書物の近代』について解説しました。書物と情報社会の関係性について論じた文章は、入試でも出題されやすいです。ぜひ正しい読解ができるようになって頂ければと思います。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

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