「鳴かず飛ばず」ということわざをご存知ですか?
このことわざの由来を調べてみると、
面白い事実があることに気づくかと思います。
元々は中国の故事から来た言葉ですが、
実は誤用が多いことでも知られているのです。
この記事では、
「鳴かず飛ばず」の意味や語源・類語・対義語
などを詳しく解説しました。
さっそく、確認していきましょう。
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鳴かず飛ばずの意味
まずは、基本的な意味からです。
【鳴かず飛ばず(なかずとばず)】
⇒将来の活躍に備えて行いを控え、機会を待っているさま。また、何の活躍もしないでいるさま。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「鳴かず飛ばず」には、2つ意味があります。
1つは、「①将来の活躍に備えて、機会を待っている様子」という意味です。
【例】 今は鳴かず飛ばずの日々を過ごして、将来への成功に備えています。
この場合は、
前向きでポジティブな意味として使うと考えて下さい。
そしてもう一つは、
「②何の活躍もしないでいる様子」という意味です。
【例】入社して3年。期待された彼だけど、残念ながら鳴かず飛ばずだね。
こちらは、相手にがっかりしたり失望したりなど
ネガティブな場面で使うのが特徴と言えます。
以上、2つの用例を紹介しました。
基本的にはどちらの意味でも使えますが、
多くの場合後者のネガティブな意味として使います。
というより、
「①の意味はあまり使われていない」
という言い方の方が正しいでしょう。
実際に、①の意味を載せていない辞書もあるくらいです。
ただし、
本来の語源としては①の意味が元となっていますので、
その辺りの理由を詳しく説明していきたいと思います。
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鳴かず飛ばずの語源・由来
「鳴かず飛ばず」ということわざは、
「中国春秋時代、楚の国の君主である荘王(そうおう)の故事」が元となっています。
以下に、簡単なあらすじを載せました。
楚の君主である「荘王」は、即位してから三年、
全く政治を見ることなく日夜遊び怠けていました。
あげくの果てに、自分に歯向かう部下は処刑するとまで言い出しました。
しかし、そんな王様の横暴にも恐れひるまず、
「伍挙(ごきょ)」という勇敢な家臣が現れます。
「伍挙」は、「荘王」にこう問いかけます。
「丘の上に三年間鳴くことも飛ぶことしない鳥がいる。王様、この鳥は一体どんな鳥だと思われますか?」
すると、王はこう答えました。
「三年も飛ばない鳥は、いったん飛べばそれは高く高く飛ぶだろう。また、三年も鳴かない鳥はいったん鳴いたら人の心を動かすくらい感動させるだろう。」
「伍挙」が望んでいた答えとは違いました。
なぜなら、「伍挙」の狙いは、
王様と鳥の姿を重ね合わせることにより、自堕落な生活に気づいて欲しかったからです。
それから数ヶ月後、王の自堕落な生活ははますますひどくなります。
見かねた姿に、
今度は家臣の「蘇従(そしょう)」が意を決して諫(いさ)めに来ました。
すると荘王は手に刀を取り、
「余に歯向かう者は処刑だと言っただろう?」と責め出します。
しかし、「蘇従」は
「王様が私の進言を受け入れてくださるなら、本望です。」と答えました。
結果的に、「荘王」は、「伍挙」と「蘇従」を重要な政務につかせ、
これまでの自堕落な生活を改めることになったのです。
この話のポイントとしては、
「王様がわざと自堕落な生活を送り、部下を試していた」ということです。
つまり、本当は何もしていなかったのではなく、
良い部下と悪い部下を見極めるために愚か者のふりをしていたのです。
このことからも分かるように、
王様のセリフに出てくる「三年鳴かず飛ばずの鳥」が、
現在の「鳴かず飛ばず」の正式な由来です。
セリフを読み返してみても、
非常に良い意味として使われていることが分かるかと思います。
したがって、本来は
「将来に備えて力を蓄え、活躍する機会を待っている様子」
という意味が正しいわけです。
ただ、先ほども説明しましたが、
現在ではこの意味として使うことはほとんどありません。
ことわざは元々の意味から違う意味(誤用)に変わっていき、
最終的にそれが正解になってしまうことがあります。
「鳴かず飛ばず」も、その典型だと言えるでしょう。
ちなみに、ネガティブな意味に変わってしまった理由は、
「~ず・~ず」のように否定する言い回しだったからだと思われます。
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鳴かず飛ばずの類語・対義語
続いて、「鳴かず飛ばず」の
「類義語」と「対義語」を紹介します。
まずは、「類語」からです。
【芽が出ない】
⇒物事がうまく行かない様子。停滞している様子。
【表舞台に出ない】
⇒表で活躍する機会がない様子。
【甲斐性(かいしょう)なし】
⇒頼りにならないこと。また、頼りにならない人。
「甲斐性」とは、「お金を稼ぐ能力のこと」を言います。
【陽(ひ)の目を見ない】
⇒周りから注目される機会がない様子。
以上、4つの類語を紹介しました。
基本的には、
「社会的な評価が低く、注目もされない様子」
を表した言葉が類語となります。
簡単な言葉だと、
「売れない・伸び悩んでいる」などが分かりやすいですね。
逆に、「対義語」としては
「立身出世(りっしんしゅっせ)」が挙げられます。
「立身出世」とは、
「社会的に高い地位を受けて、出世する」という意味の四字熟語です。
こちらは反対語なので、
周りからは注目を浴びるような良い場面で使います。
鳴かず飛ばずの英語訳
続いて、英語訳です。
「鳴かず飛ばず」は英語だと次のような言い方があります。
①「lie low(じっとしている・機会をうかがう)」
②「living unnoticed(気づかれずに生活する)」
③「remain inactive(不活発でいる)」
①の「lie」は「横たわる」という意味の動詞です。
これに「低い」を表す「low」をつけることで、
「低く横たわる」=「じっと機会をうかがう」と訳せます。
また、②の「unnoticed」は「気づかれていない」
「living」は「生活している」という意味なので、
「気づかれずに生活する」という意味になります、
最後の「remain」は「~のままでいる」、
「inactive」は「不活発な・無活動の」という意味です。
合わせることで、「不活発でいる」と訳すことができます。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
He lay low for three years.(彼は3年間鳴かず飛ばずだった。)
She is living an unnoticed life.(彼女は鳴かず飛ばずの生活だ。)
He has remained inactive in his school days.(彼は学生時代、鳴かず飛ばずだった。)
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鳴かず飛ばずの使い方・例文
では、最後に「鳴かず飛ばず」の使い方を
例文で確認しておきましょう。
- その芸能人は、鳴かず飛ばずの売れない過去があった。
- 鳴かずの飛ばずの人生を変えるために、まずは行動しよう。
- 鳴り物入りで作られたその会社も、今や鳴かず飛ばずとなってしまった。
- 鳴かず飛ばずも芸のうちと言うが、5年も何をやっていたんだい?
- ずっと鳴かず飛ばずなんだから、そろそろ君も背水の陣で頑張らないと。
- しばらく鳴かず飛ばずの状態だったが、やっと彼も陽の目を見られそうだ。
すでに説明したように、「鳴かず飛ばず」の本来の意味は、
「実力を発揮するために、じっと機会を待つ」という意味でした。
しかし、現在では上記のように
「長い間活躍をしていない人・結果を出していない人」
を対象とすること多いです。
なので、本来の意味は本来の意味として覚えておき、
実際にはこちらの意味で使うほうが現実的かと思います。
ちなみに、「泣かず飛ばず」という書き方は誤用です。
これだと、「鳥が泣く」という
意味になってしまいますので注意してください。
関連:>>無い袖は振れないの意味は?語源や使い方・類語を解説
まとめ
以上、内容を簡単にまとめると、
「鳴かず飛ばず」=①「将来の活躍に備えて、機会を待っている様子」②「何の活躍もしないでいる様子」
「語源・由来」=楚の国の君主である「荘王」のセリフから。
「類語」=「芽が出ない・三下・甲斐性なし・ろくでなし」など。
「英語」=「lie low」「living unnoticed「remain inactive」
ということでした。
「鳴かず飛ばず」は、諺の中でも意外とよく使われています。
正しい由来を理解した上で、ぜひ今後の人生で使ってみてください。
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国語力アップ.com管理人
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