「滅失」と「毀損」
どちらも
「土地や建物などの不動産に使う」
というイメージではないでしょうか?
売買契約書の文言などはまさにそうですね。
さらにこの2つは、
保険証などに使うこともあるようです。
漢字も難しくてややこしそうな言葉。
今回はこの2つの違いを
詳しく解説していきたいと思います。
スポンサーリンク
滅失の意味
まずは、
「滅失」の意味です。
【滅失(めっしつ)】
①ほろんでなくなること。
②法律で、災害によるか人の行為によるかを問わず、物がその物としての物理的存在を失うこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「滅失」には2つ意味があります。
ただし、一般的には
②の法律用語として使われることが多いですね。
この場合の意味は、簡単に言うと
「建物などがなくなること」だと思ってください。
例えば、地震や火事・台風などによって
建物がなくなってしまうことはありますよね?
もしもその災害がひどければ、
建物は跡形もなく消え去ってしまうでしょう。
このように、
「建物が消滅して、モノ本来の機能を失うこと」を
「滅失」と言うわけです。
毀損の意味
続いて、
「毀損」の意味です。
【毀損(きそん)】
①物をこわすこと。物がこわれること。
②利益・体面などをそこなうこと。
[補説]「棄損」とも書く。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
まず、読み方ですが
「毀損」は「きそん」と読みます。
意味としては、
①「壊すこと・壊れること」
②「名誉や信用を損なうこと」の2つだと思ってください。
どちらも法律用語として使いますね。
①は「目に見える具体的なモノ」に対して使います。
【例】
- 建物の毀損。
- 器物を毀損する。
一方で、②は
「目に見えない抽象的なモノ」に対して使います。
【例】
- 名誉毀損をする。
- 売上が毀損される。
ちなみに、補足にもあるように、
「毀損」は「棄損」と書くこともあります。
なぜ2つ存在するかと言うと、
戦後に当用漢字の変更があったからです。
戦後の当用漢字の中には、
「毀」という字は入りませんでした。
見て分かるように、
難しくて読みにくい漢字ですからね。
そのため、同音の「棄」を使った
「棄損」という書替え語が生まれたのです。
しかし、現在では「毀」が復活したため
本来使っていた「毀損」を使うことが多いようです。
なので、あまり両者の使い分けに
神経質になる必要はないですね。
どちらを使っても意味自体は全く同じ
と思っていただいて構いません。
スポンサーリンク
滅失と毀損の違い
では、ここまでの内容を整理しておきましょう。
「滅失」=建物などがなくなること。
「毀損」=壊すこと・壊れること。名誉や信用を損なうこと。
気をつけるべきなのは、
「どちらも建物に対して使える」という点ですね。
ここはまぎらわしいので、
しっかりと区別する必要があります。
まず、「滅失」の方は
「存在自体がなくなること」でした。
一言で、「消滅」と言ってもいいでしょう。
つまり、
全く人が住めないような状態になる時に
「滅失」を使うのです。
一方で、「毀損」の方は
壊れはしますが存在自体は消えません。
家で例えるなら、
- 「屋根に大きな傷がつく」
- 「窓に大きな穴が空く」
- 「外壁の塗装がはがれる」
といった感じですね。
以上のことから、
「滅失」は「使用不可能なほど消え去った状態」
「毀損」は「修繕すれば使用可能なほど残った状態」
と定義できることが分かるかと思います。
ちなみに、
「保険証」や「免許証」などに対しては
以下のような使い分けをします。
「滅失」⇒モノ自体がなくなってしまった時。
「毀損」⇒モノを汚したり破損してしまった時。
「滅失」の場合は、
モノ自体がないのでまず警察に届け出をします。
一方で、「毀損」の場合は
モノ自体はあるのでそれを持参して
再交付の手続きを受けることになりますね。
紛失の意味
似たような言葉で
「紛失」があります。
「紛失」の意味も確認しておきましょう。
【紛失(ふんしつ)】
①物がまぎれてなくなること。また、なくすこと。
②抜け出して逃げること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「紛失」とは、
「物がなくなること・物をなくすこと」
などを言います。
「紛失」は、法律用語ではなく一般用語です。
この時点で、
「滅失」や「毀損」とは異なる
ということが分かるでしょう。
さらに言うと、「紛失」の場合は
同じ「なくなる」でもモノの存在自体は消えません。
つまり、
「なくしたけども、どこかに必ず存在する」
ということですね。
一方で、
「滅失」の場合は存在自体が消え去ります。
保険証で言うならば、
火事などで燃えて、跡形もなくなるような状態ですね。
ただし、「証明書自体が消え去る」
というのはそうそうありません。
多くは、どこかに落としてしまったり
というケースがほとんですよね?
したがって、保険証などの場合は
「滅失」よりも「紛失」を使うことの方が多い
と考えてください。
スポンサーリンク
使い方・例文
では、最後にそれぞれの使い方を
例文で確認しておきましょう。
【滅失の使い方】
- 建物の滅失登記手続きを行う。
- 既存の建物を解体して、滅失させる。
- 大規模な火災により、住宅が滅失された。
- 建物滅失の場合は、売主負担となります。
【毀損の使い方】
- 器物を毀損した容疑で逮捕される。
- 週刊誌を名誉毀損で訴えることにした。
- 保険証を毀損したので、再交付を受ける。
- 無料商品を増やしすぎると、売上毀損のリスクが上がる。
【紛失の使い方】
- デパートで財布を紛失してしまった。
- 保険証をなくしたので、紛失届を出す。
- 書類を紛失しないように気をつけてください。
補足すると、「建物の滅失登記」とは、
「建物を解体してから1か月以内にする手続きのこと」です。
建物の所在を管轄する法務局に提出する義務があります。
もしも、
建物の滅失登記を怠ると10万円以下の
過料に処される場合があります。
不動産の世界は契約社会なので
トラブルが付き物です。
なので、建物がなくなったことの証明を
国に申告しておく必要があるわけですね。
まとめ
では、この記事のまとめです。
「滅失」=建物などがなくなること。
「毀損」=壊すこと・壊れること。名誉や信用を損なうこと。
「紛失」=物がなくなること・物をなくすこと。(一般用語)
「滅失」は、使用不可能なほど消え去った状態。
「毀損」は、修繕すれば使用可能なほど残った状態。
「紛失」は、なくしたけどもどこかに必ず存在する状態。
まぎらわしいですが、それぞれの違いを押さえておけば
今後のビジネスでも役立つはずです。
不動産の売買契約書などを読む時は
ぜひ参考にしてみてください。
それでは、今回は以上です。
スポンサーリンク