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所帯 世帯 違い 使い分け 意味

 

「所帯」と「世帯」は、どちらも普段の文章やニュースなどで使われています。

所帯を持つ」「世帯主」

ただ、似たような言葉同士なので、使い分けが気になるという人も多いようです。

そこで今回は、「所帯」と「世帯」の意味の違いを詳しく解説しました。

所帯の意味と由来

 

まずは、「所帯」の意味からです。

所帯」には「一家を構えて独立した生計を営むこと」という意味があります。

例えば、以下のような使い方です。

所帯を持つ・所帯道具・所帯やつれ・女所帯・大所帯所帯じみる・新所帯・寄り合い所帯

元々、「所帯」という言葉は「身に着けているもの」というのが原義で、中世の初め頃は「官職・財産・領地」などを指していました。以下、実際の引用部分です。

せめてはかれの所帯なれば、播磨の国をも給はり、

出典:平治物語(下)

所帯、所職を帯するほどの人の~

出典:平家物語(三・御産)

また、『日葡辞書』(1603年)の「邦訳版」によると、「Xotai.ショタイ(所帯)」は「Chiguio(知行)」に同じとあり、「知行」の項を見ると「Riochi(領地)に同じ」と書かれています。

中世から近世になると、現在の「一家を構えて独立した生計を営むこと」という意味でも使われるようになりました。

所帯持っても色はなほ捨てぬぞ道理紺屋の妻。

出典:『重井筒』(近松門左衛門)

をかし、男、伊勢の国にて所帯してあらむと云ひければ

出典:仮名草子「仁勢物語」

その他、近世では「所帯嚊(がか)、所帯方、所帯染みる、所帯くづし、所帯持ち、所帯破り」などの語も確認されています。

世帯の意味と由来

 

次に、「世帯」の意味です。

世帯」には「住居や家計を共にしている独立した生活体」という意味があります。

世帯数・世帯主・世帯調査・被災世帯世帯道具・世帯を持つ」など。

「世帯」については、『日葡辞書(1603年)』に「Xetai セタイ(世帯)=人がそこに住んで生活するための家と道具」と書かれています。

また、狂言では「財産」「独立の生計」の意味でも用いられています。

世帯のことと申せば、夜を日に継いで油断無うかせぎまする

出典:『石神』

ぜひ(連歌ヲ)止めがたくは、世帯を営む隙々(すきずき)に、其方と両吟にするであろう。

出典:『箕かづき』

さらに、近世では「世帯仏法、世帯を破る、世帯薬、世帯持ち」などの用例も確認されています。

この頃には、「世帯」と「所帯」はほぼ似たような意味として使われていたことが分かっています。

なお、『和英語林集成(第三版)』では、「SETAI(世帯)」と「SHOTAI(所帯)」はほぼ同様の意味が付してあります。

その証拠に、有名な作家である森鴎外の「雁(がん)」では、両者は同じような意味として用いられています。

・末造は小使になった時三十を越してゐたから、貧乏世帯ながら、~

・併(しか)し隣の誓い貧乏所帯で、あの家では幾日立っても~

・大分と世帯じみた顔を、帳場へさらしてるだろう。

出典:雁(森鴎外)

いずれにせよ、この時代の頃から両者は似たような意味として使われていたということです。

所帯と世帯の違い

所帯 世帯 違いや使い分け

 

以上の事から考えますと、「所帯」と「世帯」は元々は異なる由来であったものの、時代とともに似たような意味の言葉になったということが分かるかと思います。

すでに説明したように、現在の傾向としては「所帯」は「一家を持って営む独立の生計」を指し、「世帯」は「住居や家計を共にしている独立した生活体」を指すことが多いです。

また、付け加えて言うと、「世帯」の方は公的な意味として用いるのが普通です。

「公的」とはすなわち、公文書や公用文など改まった文章の中で使うという意味です。

例えば、「世帯数」や「世帯主」といった言葉は、国が国民に対して公表する数値・データなどを伝える時に使われます。

このように、学問的、統計的な言葉として使う際は「世帯」の方を使うのです。

一方で、「所帯」の方は公的な場面というよりはもっと一般的な場面で使います。

例えば、「所帯を持つ」「所帯持ち」などの言葉は、改まった文章などでなく普段の会話や文章でも使うことができます。

公文書、公用文などで使われることはめったにありません。このように、「世帯」よりも、もっと一般的な場面で使えるようにした言葉が「所帯」なのです。

なお、「世帯」のことを「せたい」ではなく「しょたい」と読ませている例もありますが、常用漢字表では「世」に「しょ」という音は掲げられていません、

そのため、「世帯」を「しょたい」と読むこともありますが、一般的な読み方ではないと考えて下さい。多くは「世帯」⇒「せたい」「所帯」⇒「しょたい」と読みます。

所帯と世帯の使い方・例文

 

では、最後に「所帯」と「世帯」の使い方を実際の例文で紹介しておきます。

 

【所帯の使い方】

  1. わずか一年ほど前に所帯を持ったばかりです。
  2. 父が亡くなってから、私の家計は女所帯となった。
  3. 所帯を持つことで、彼は性格が柔らかくなった。
  4. 今回の政権は、寄り合い所帯の内閣と呼ばれている。
  5. サイトの会員が一万人を超える大所帯となった。

【世帯の使い方】

  1. 総務省により日本全国における世帯調査が行われた。
  2. 国勢調査により、今年の世帯数の推移が発表された。
  3. 世帯主とは、一つの住民票の中に記載されている世帯の代表者を表す。
  4. 世帯主が父である場合、記入者本人の続柄は「子」となる。
  5. 被災世帯に対する、国の公的支援制度が始まった。

 

私たちが普段から使う分には、「所帯を持つ」という表現が最もよく使われれます。

「所帯を持つ」とは簡単に言うと「結婚して家庭を持つ」という意味です。

また、例文5の「大所帯(おおじょたい)」とは「集団の構成員が多いこと」を表したものです。

「大所帯」には「一家の家族の人数が多いこと」という意味がありますが、ここでは「ある集団の中の人数が多いこと」という意味で使われています。

まとめ

 

以上、内容を簡単にまとめると下記のようになります。

所帯」=一家を構えて独立した生計を営むこと

世帯」=住居や家計を共にしている独立した生活体。

違い」⇒「所帯」は一般的な場で用い、「世帯」は公的な場で用いる。

普段の生活で使う際には、「所帯」を使えば問題ありません。役所など公的な文書の中で用いる場合は「世帯」の方を使うようにしましょう。では今回は以上となります。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

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