脅迫 強迫 違い 使い分け

「きょうはく」を漢字で書く場合、「脅迫」と「強迫」の二つがあります。

「相手を脅迫する」「買主を強迫する」

この二つの使い分けは、一体どのように行えばよいのでしょうか?今回は「脅迫」と「強迫」の違いについて詳しく解説しました。

脅迫の意味

 

まずは、「脅迫」の意味からです。

【脅迫(きょうはく)】

相手にあることをさせようと、おどしつけること。

刑法上、他人に恐怖心を生じさせる目的で害を加えることを通告すること。民法上の強迫に対応。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

脅迫」とは「相手をおどして、実行をせまること」を意味します。

例えば、借金取りが、お金を払わない相手をおどしてお金を払わせようとしたします。この場合、「借金取りが脅迫をしてきた」などのように用いることができます。

つまり、何かをさせるために相手を怖がらせることを「脅迫」と言うわけです。

「脅迫」は「刑法」で使われる言葉となります。「刑法」とは犯罪を犯した人へ罰を与える法律のことです。この刑法の条文の中に書かれている言葉が、「脅迫」ということになります。

強迫の意味

 

続いて、「強迫」の意味です。

【強迫(きょうはく)】

あることをするよう無理に要求すること。むりじい。

民法上、他人に違法な害悪を示して恐怖心を生じさせ、その人の自由な意思決定を妨げること。強迫による意思表示は取り消すことができる。

無意味で不合理と思える考えや行為が、意志に反して支配的になる状態。自分でもばかげていると自覚しながら、打ち消そうとするとさらに強くなり、その考えや行為を繰り返さずにはいられなくなる。→強迫性障害

出典:デジタル大辞泉(小学館)

強迫」とは簡単に言うと「相手に強制させること」を表した言葉です。

例えば、不動産などの土地の取引において、売主が買主に対して無理やり安い値段で土地を売らせようとしたします。

この場合、相手に安い土地を買うことを強制しているので、「売主は買主相手に強迫してきた。」などのように用いることができます。

「強迫」は、一般に「民法」で使われる言葉となります。「民法」とは個人間の争いについて定めた法律のことです。

土地の取引におけるトラブルなどは、まさに個人間の争いに含まれます。違反しても何か具体的な罰があるわけではありません。そのため、このような個人間の争いに関しては「強迫」を使うわけです。

また、「強迫」には「自覚しながら、その考えや行為を繰り替えさずにはいられなくなる」という心理学としての意味もあります。

代表的なのは、「強迫観念(きょうはくかんねん)」という言葉です。「強迫観念」とは「ある考えが絶えず頭の中に浮かんでしまうこと」を表します。

例えば、家の戸締りをちゃんとしてから外出したはずなのに、なぜか後から気になってしまうようなことはあるでしょう。

「本当に消しただろうか?」「もしかして消し忘れてないだろうか?」などのように繰り返し頭に浮かぶことです。このような、一種の病的な考えのことを「強迫観念」と呼ぶのです。

脅迫と強迫の違い

脅迫 強迫 違い

ここまでの内容を整理しておくと、

脅迫」=相手をおどして、実行をせまること。

強迫」=相手に強制させること。

ということでした。

どちらも「相手に害を与える」という点は共通していますが、両者には明確な違いが二つあります。

一つ目は、法律上の違いです。

脅迫」は、刑法上使う言葉です。そのため、基本的には脅迫罪など犯罪がからむ場合に使われます。

一方で、「強迫」は民法上使う言葉です。したがって、こちらは個人のやり取りに対して使われます。

極端な話、「強迫」で逮捕されるようなことはありません。イメージとしては、「脅迫」の方が「強迫」よりもさらに悪い行為を指すと考えてよいでしょう。

そして二つ目は、「心理学として使うかどうか」です。

先ほども説明した通り、「強迫」は心理学の用語としても使います。この場合は、「強迫性障害」「強迫神経症」「強迫性パーソナリティ障害」など様々な言葉が存在します。一種の専門用語と同じような使い方です。

一方で、「脅迫」の方はこのような使い方はしません。「脅迫」は刑法上相手に危害を加えたような時に用います。

使い方・例文

 

最後に、それぞれ使い方を例文で確認しておきましょう。

【脅迫の使い方】

  1. 脅迫罪は、相手を畏怖させることにより成立する。
  2. 相手から脅迫の電話が来たので、警察に相談した。
  3. 借金を取り立てるために、ヤミ金から脅迫状がきた。
  4. 人質犯から、身代金を要求する脅迫文が届いた。
  5. 脅迫罪が成立すると、2年以下の懲役又は30万以下の罰金となる。

【強迫の使い方】

  1. 「玄関のカギを閉め忘れてないか?」という強迫観念に駆られる。
  2. 「自分の周りはすべて敵なのでは?」という強迫観念にとらわれた。
  3. 民法では、強迫を受けた者が行なった意思表示は、取り消すことができる。
  4. 強迫性障害は、几帳面で神経質な人がなりやすいと言われている。
  5. 強迫性障害をなおしたいので、専門家からアドバイスをもらった。

 

補足すると、新聞などの報道機関では「脅迫」の方で統一しているようです。つまり、心理学としての意味以外は基本、「強迫」は使わないということです。

読み書きの世界であるメディアは、漢字の混同を嫌う傾向にあります。そのため、「脅迫」で統一しているということです。

一般的にみても「強迫」は「強迫観念」という使い方が多く、普段のニュースでもあまり見る言葉ではありません。ただ、法律の世界では両者は完全に区別されているので、法律が絡む場面では両者はしっかりと使い分けるのが望ましいです。

まとめ

 

以上、本記事の簡単なまとめです。

脅迫」=相手をおどして、実行を迫ること。刑法

強迫」=相手に強制させること。民法

「強迫」の方は「自覚しながらその考えや行為を繰り替えさずにはいられなくなる」という心理学の意味もあります。この意味以外で使う際は、「脅迫」は刑法の用語として使い、「強迫」は民法の用語として使うようにしましょう。