「もと」という言葉を漢字で書く場合、
いくつかの表記が存在します。
「元」「本」「基」「下」「素」
どれも普段からよく使われている印象ですね。
これらの言葉は、どう使い分ければいいのでしょうか?
今回は「もと」の違いについて詳しく解説しました。
さっそく、確認していきましょう。
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元の意味
「元」には、「物事の始め・以前の状態」という意味があります。
【例】⇒「元に戻る・元通り・製造元」
これは「元祖」「元日」などの熟語があることからも分かるでしょう。
さらにそこから派生して、「何かを生み出すもの」
という意味として使うこともあります。
【例】⇒「口は災いの元。失敗は成功の元。」
また、「あるモノの近くにある場所」「近辺・付近」などの
意味で使われる場合もあります。
【例】⇒「火の元。親の元。」
いずれにせよ、何かをスタートさせるときの始めの状態が
「元」という漢字のイメージだと考えて問題ありません。
本の意味
「本」には、「物事の根本・根幹」などの意味があります。
【例】⇒「生活の本を正す。臭いの本を絶つ。」
これは「根本」「本質」などの熟語があることからも分かるかと思います。
要するに、その物事の根本や本質を表すような時に
「本」を使うわけです。
似たような言葉だと、「核」と言い換えても構いません。
基の意味
「基」には「物事の基礎や土台」という意味があります。
【例】⇒「経験に基づいた意見。発展の基となる。」
「基」という字は、「基本」「基礎」などの熟語があるように、
物事の土台の部分を担っているベースのような意味があります。
建物で例えるならば、柱を支えている下の土台の部分です。
このように、物事の土台となる意味を表す時に「基」を使うということです。
「基」に関しては、建物に限定しているわけではありませんが、
「基礎」や「土台」といった言葉に置き換えられるのが特徴だと言えます。
下の意味
「下」には「ある物の下の位置」という意味があります。
【例】⇒「屋根の下。車の下。旗の下。」
この意味の場合は、文字通り「物理的に下にある」ということです。
「下」は「した」と読めることからも分かりやすいでしょう。
さらにそこから派生して、
「ある物事の影響や制約を受ける範囲」という意味で使うこともあります。
【例】⇒「法の下の平等。監視の下に置かれる。」
これは「傘下」「部下」「配下」などの熟語があることからも分かるかと思います。
素の意味
「素」には、「原料・材料・素材」などの意味があります。
【例】⇒「大豆の素。魚介スープの素。」
この場合は主に、料理に対して使われることが多いです。
「素」という漢字は「素材」「素質」「素地」「要素」など様々な熟語に使われています。
共通しているのは、
物事が作られる最初の段階である「もと」を指しているということです。
したがって、料理のもととなる原料、材料などを指す時に
「素」を使うことになります。
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元・本・基・下・素の違い
以上の事から考えると、「もと」の違いは次のように定義できます。
「元」=物事の始め・以前の状態。何かを生み出すもの。近辺。
「本」=物事の根本・根幹。
「基」=物事の基礎や土台。
「下」=ある物の下の位置。影響や制約を受ける範囲。
「素」=原料・材料・素材。
この中でも特に、「本」と「基」は
意味が似ていて間違えやすいので注意が必要です。
まず、「本」の方は「根本」「根幹」という意味でした。
これは大きな木で例えるなら「根っこ」の部分です。
すなわち、一番下の部分を支えている大事な箇所だと言えます。
一方で、「基」の方は「基礎」「基本」なので、
木で例えるなら「胴体」の部分です。
つまり、「本」の方が「基」よりも大事な箇所なのです。
これを仕事や勉強に当てはめるならば、
「基本ができてないのは、根本的に間違っているからだ」などのように言います。
「根本」があって、初めて「基礎」や「基本」があるのです。
なお、文化庁が作成した公用文の書き表し方基準では、次のようにも記載されています。
「もと」の使い方
「下」・・・法の下に平等。一撃の下に倒した。
「元」・・・火の元。出版元。元が掛かる。
「本」・・・本を正す。本と末。
「基」・・・資料を基にする。基づく。
出典:「文化庁新訂公用文の書き表し方の基準(資料集)]
公文書に関しましても、私文書と同様に漢字本来の意味に則って使い分けがされています。
「本と末」という用例については補足を入れておきましょう。
これは「本末転倒」という四字熟語からも分かるように、
「本」=「大切なこと」、「末」=「大切でないこと」という意味です。
すなわち、「大切でないこと」と「そうでないこと」という意味で使われています。
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使い方・例文
では、最後に「もと」の使い方を実際の例文で確認しておきます。
【元の使い方】
- イベント会場を、元通りきれいに清掃する。
- 元手がかかりすぎるビジネスは敬遠される。
- 元プロ野球選手として知られるタレント。
- 宝くじや競馬は、胴元に収益が入る。
- 最後の最後に失敗しては元も子もない。
【本の使い方】
- 本は正せば、彼が悪いと言えるだろう。
- まずは生活の本を正すようにしてください。
- 彼女の発言は何を本に言っているのだろうか。
- 「農は国の本なり」とはよく言ったたものだ。
- 事件の本は、そこにあるわけでない。
【基の使い方】
- 実話を基にしたドラマを作成する。
- 発展の基となったのは、彼らの活躍である。
- 既存のシステムを基に、新たなシステムを作る。
- 基の知識がないと、応用した問題は解きにくい。
- 昔から「失敗は成功の基」とは言ったものです。
【下の使い方】
- 子供の頃は、あそこの橋の下でよく遊びました。
- 約10年ぶりに恩師の下を訪ねることにした。
- すべての国民は、法の下で平等であると言える。
- 同じ条件の下で戦っているので平等な戦いである。
- 「灯台下暗し」と言うが、近くにあるものは意外と分からない。
【素の使い方】
- 納豆や豆腐は、大豆を素に作られる。
- 洋風ダシの素を入れ、よく混ぜたら完成です。
- 魚介の素が入っているスープなので人気である。
まとめ
以上、内容を簡単にまとめると、
「元」=物事の始め・以前の状態。何かを生み出すもの。近辺。
「本」=物事の根本・根幹。
「基」=物事の基礎や土台。
「下」=ある物の下の位置。影響や制約を受ける範囲。
「素」=原料・材料・素材。
ということでした。
「もと」という言葉は普段からよく使われていますが、
その違いを判別するのは最初は難しいです。
しかし、本来の漢字の意味を考えれば、
簡単に使い分けができると分かって頂けたのではないでしょうか。
では今回は以上となります。
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国語力アップ.com管理人
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