今回は、
「編制」と「編成」
の違いを解説していきます。
学校のクラスやテレビ番組を作る時に、
「へんせい」という言葉を使いますよね。
「学級編制」「番組編成」
上記の「へんせい」は、
一体どのように使い分ければいいのでしょうか?
さっそく、確認していきましょう。
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編制の意味
まずは「編制」の意味からです。
【編制(へんせい)】
⇒個々別々のものを集めて団体を組織すること。特に、軍隊を組織すること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「編制」とは、
「個々のものを集めて、組織的な団体にすること」を言います。
例えば、以下のような使い方です。
- 陸軍を編制する。
- 海軍を編制する。
- 空軍を編制する。
「編制」は、主に
陸軍や海軍などの軍隊に対して使う言葉だと思って下さい。
「軍隊」とは、簡単に言うと、
「外国と戦う集団」のことを表します。
現在の日本には、軍隊と呼べるものはありません。
しかし、1945年以前(戦前)は、
軍隊が正式に存在していました。
そのため、当時の用例としては
「平時編制」「戦時編制」のように軍隊に対して使われていたのです。
編成の意味
続いて、「編成」の意味です。
【編成(へんせい)】
⇒個々のものを集めて組織的なまとまりとすること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「編成」とは、
「個々のものを集めて、組織的なまとまりを作ること」を言います。
こちらも例文を紹介しておきましょう。
- 十両編成の電車。
- 予算を編成する。
- 番組を編成する。
「編成」の場合は、
団体に限らず、電車や予算など
幅広い物に使うのが特徴です。
他には、「カリキュラムを編成する」のような使い方もします。
「カリキュラム」とは、
「教育のスケジュール」という意味です。
いずれも共通しているのは、
「それぞれの項目を組み合わせて、一つのまとまりを作る」ということですね。
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編制と編成の違い
ここまでの内容を整理すると、
「編制」=個々のものを集めて、組織的な団体にすること。
「編成」=個々のものを集めて、組織的なまとまりを作ること。
ということでした。
比較しても分かる通り、
意味の違いはほとんどないようにも見えます。
しかし、実際には
両者の漢字を細かく見てみると、
明確に異なる言葉だと言えます。
まず、「編制」の「制」には、
「たちきって整える」という意味があります。
転じて、
「制」=「全体を分けてまとまった単位にする」
という意味になるのです。
一方で、「編成」の「成」には
「なる・なす」などの意味があります。
よって、こちらは
「個々を集めてまとまった単位にする」
という意味になるわけですね。
そして、両者に共通する「編」は、
「編(あ)む」=「組み合わせる」という意味があります。
よって、それぞれの意味を比較すると、
「編制」=大きな全体を分けて、まとまった単位に組み立てる。
「編成」=小さな個々を組み合わせて、大きな単位に仕上げる。
となります。
つまり、
「編制」の方は「分ける・分割する」
という意味が強調されるわけですね。
対して、「編成」の方は「分ける」のではなく、
「組み合わせること」に主眼が置かれた言葉なのです。
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編制と編成の使い分け
以上の事から考えると、
両者の使い分けは以下のようになります。
「編制」=軍隊・学級などに使う。
「編成」=電車・予算・番組などに使う。
すでに説明した通り、
「編制」は基本的に軍隊に対して使います。
しかし、「学級」の場合は例外です。
「学級」とは簡単に言うと「クラス」のことを表し、
全体の生徒を分割した結果できた一つのまとまりです。
この場合は「クラス」を作ることなので、
全体の生徒を分けていくつかのまとまった単位を作る作業を意味します。
よって、この場合は「編制」を使うわけです。
かつての軍隊における「平時編制」や「戦時編制」なども
このような分割の意味があるので、「編制」を使っていたということですね。
そして、「電車」ですが、
「十両編成の電車」などは一両一両がそれぞれ独立したものです。
すなわち、「電車」というのは、
一両一両を組み合わせて一つの大きな単位に仕上げた乗り物
と言うことができます。
なので、この場合は「編成」を使うわけです。
また、「予算」の場合も様々な予算があります。
- 防衛の予算。
- 社会保障の予算。
- 公共事業の予算。
「予算の編成」とは、
これら一つ一つの予算を組み合わせて、全体の予算として仕上げることです。
したがって、
この場合も「編成」を使うのです。
最後に「番組」ですが、「番組の編成」とは、
「0時~24時までどのような番組をどの順番で放送するか決めること」です。
イメージ的には、
新聞のラテ欄を想像すると分かりやすいかと思います。
各テレビ局が、ニュース番組やお笑い番組・音楽番組
などを組み合わせて放送していますよね。
この場合も、一つ一つの番組を組み合わせて、
一日の番組スケジュールという大きな単位に仕上げているので、
「編成」を使うわけです。
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使い方・例文
では最後に、それぞれの使い方を
例文で確認しておきましょう。
【編制の使い方】
- 彼の学校は、1クラス30人の学級編制を行っている。
- アメリカでは、年齢ではなく能力別で学級編制を行っている。
- 空軍を編制して、各国の現場へ向かう。
- 彼は陸海空全ての部隊の編制を任された。
- 軍隊とは、一定の規律にもとづいて編制された組織である。
【編成の使い方】
- 八両編成の電車の一番後ろに乗車する。
- 予算を編成するのは、国会議員の仕事の一つである。
- 文部科学省は、教育課程の編成を行っている。
- チームの補強選手を獲得する編成部門に就任した。
- テレビ局で番組編成の仕事を任される。
1点だけ補足しておくと、
「軍隊」に対してもごくまれに
「編成」を使うことがあります。
それは、部隊から一部を選抜して、
特別攻撃隊を「へんせい」するような場合です。
この場合は、
小さな個々を組み合わせてまとまった単位にするので、
「編成」を使うことになります。
ただし、基本的には
軍隊については「編制」を使うと考えて問題ありません。
まとめ
以上、今回の内容をまとめると、
「編制」=大きな全体を分けて、まとまった単位に組み立てる。
「編成」=小さな個々を組み合わせて、大きな単位に仕上げる。
「編制」=軍隊・学級などに使う。
「編成」=電車・予算・番組などに使う。
ということでした。
ポイントは、
「漢字の成り立ちを比較すること」と言えるでしょう。
ほとんどの辞書では、
両者は同じような内容で記述されています。
ただし、「編制」には「分ける」という
意味もあるので「学級編制」となるわけですね。
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国語力アップ.com管理人
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学級へんせいは、子どもを集めて一つの学級を作る、とイメージしていたので編成と考えてましたがこの考え方はおかしいのでしょうか?
>>ちゅんさんコメントありがとうございます。
結論から言うと、おかしいです。
学級とは集めるために作るものではありませんので。
もう一度記事をよく読み直してください。