今回は
「望む」と「臨む」
の違いを解説していきます。
「富士山を望む」
「試験に臨む」
どちらも似たようなイメージで使われていますが、
この2つは一体どう使い分ければいいのでしょうか?
さっそく、確認していきましょう。
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望むの意味
まずは、「望む」の意味からです。
【望む(のぞむ)】
①はるかに隔てて見る。遠くを眺めやる。
②㋐物事がこうであればいい、自分としてはこうしたい、こうなりたい、また、なんとか得られないものかなどと、心に思う。
㋑特定の相手に対して、こうあってほしい、こうしてもらいたいと思う。注文する。
③自分の所に来てくれるように働きかける。欲しがる。
④したう。仰ぐ。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
上記のように「望む」の意味は複数ありますが、
大まかに言うと2つの意味に分かれます。
1つ目は、
「遠くを見る」という意味です。
【例】
- 富士山を望む。
- アルプスを望む。
- スカイツリーを望む。
この場合は、対象物を
「非常に遠くから見る」という点がポイントとなります。
そして2つ目は、
「願う・欲する」という意味です。
【例】
- 大学合格を望む。
- 彼の復活を望む。
- 学生諸君に望む。
この場合は、自分が願う場合と
他人に願う場合の2通りがあります。
前者は「自分がこうでありたい」と願う場合に、
そして後者は「他人にこうなってほしい」と願う場合に使います。
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臨むの意味
続いて、「臨む」の意味です。
【臨む(のぞむ)】
①風景・場所などを目の前にする。向かい対する。面する。
②ある事態が起こるようなところに身を置く。そういう時に当たる。出あう。直面する。
③その場所へ出かけていく。特に、公の、または晴れの場所などに、出席または参加する。
④支配者が被支配者に対する。また、予想できる事態に対応した態度で人に対する。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「臨む」の意味は全部で4つあります。
1つ目は、
「風景や場所に面する」という意味です。
【例】
- 海に臨む部屋。
- 湖に臨む旅館。
この場合は、対象物が
比較的近くて下方にあることが多いです。
上記の例文だと、
「海や湖などの風景が目の前にある」ということですね。
2つ目は、
「事態に直面する」という意味です。
【例】
- 危機に臨む。
- 別れに臨む。
- 友人の死に臨む。
この場合は、人の死や別れ・危機など
「事態」に対して使います。
「事態」とは、
「物事の様子や成行きのこと」だと考えてください。
主によくない様子・好ましくない様子を指すことが多いです。
3つ目は、
「行く・参加する」という意味です。
【例】
- 試合に臨む。
- 試験に臨む。
- 開会式に臨む。
主に、改まった大切な事をする場面や
心が緊張するような場面で使います。
4つ目は、
「人に対する」という意味です。
【例】
- 厳しい態度で部下に臨む。
- 厳正な気持ちで息子に臨む。
この場合は、
目上の人が目下の人に対して接する場合に使います。
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望むと臨むの違い
ここまでの内容を整理しておきましょう。
「望む」=遠くを見る。願う・欲する
「臨む」=風景や場所に面する。事態に直面する。行く・参加する。人に対する。
ということでした。
改めて比較すると、
「全く異なる言葉」ということに気づくでしょう。
ただし、黄色の部分は
似ているので間違えやすいです。
そのため、ここにスポットを当てて
違いを解説していきたいと思います。
まず、両者共に
風景に対して使えるということでした。
【例】
- 富士山を望む。
- 海に臨む部屋。
この場合、
「望む」の方は他動詞です。
したがって、「~を望む」のように
必ず前に目的語をとるのが特徴だと言えます。
一方で、
「臨む」の方は自動詞です。
したがって、「~を臨む」のように
目的語をとることはありません。
「臨む」の方は、
「~に臨む」という形で使われるのです。
また、両者の対象物も微妙に異なります。
「望む」の方は、
対象物との距離が非常に遠くても成立します。
例えば、何千キロも離れた
富士山を見るような場合でも使うことができるのです。
一方で、
「臨む」の方は比較的距離が近い場合に使います。
具体的には、
旅館の部屋から海を見るような場合です。
なので、もしも両者の使い分けに迷ったら、
対象物の距離が遠いか近いかで判断するようにしてください。
以上、まとめると、
「望む」=他動詞。遠い風景に使う。
「臨む」=自動詞。近い風景に使う。
となります。
ちなみに、
「望む」の方は「望み」という
「名詞」としても使えます。
この場合は、「お望み次第」「望み通り」
のように「連語」として使うのが特徴です。
「連語」とは、
「2つ以上の単語が連結して、1つの単語と同じ働きをする語」のことを言います。
逆に、「臨む」の方は「動詞」だけなので、
「臨み」のような「名詞」としては使えません。
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使い方・例文
では最後に、両者の使い方を
例文で確認しておきましょう。
【望むの使い方】
- 高台からはるか遠くの富士山を望む。
- 日本アルプスを望む展望台へ向かった。
- 母は私が公立の学校へ進学することを望んでいる。
- 労働時間がもっと短くなることを切に望む。
- 彼が成功することをここの全員が望んでいる。
【臨むの使い方】
- 海に臨むホテルで、のんびりと体を休めよう。
- 家族の別れに臨む気持ちは誰でもつらいと言える。
- 彼女は危機に臨んでも冷静で落ち着いていた。
- しっかりと寝て万全な体調で試験に臨むようにする。
- 父は常に厳しい態度で息子に臨む人であった。
まとめ
以上、今回の内容をまとめると、
「望む」=遠くを見る。願う・欲する。
「臨む」=(近くの)風景や場所に面する。事態に直面する。行く・参加する。人に対する。
ということでした。
風景に対して使う場合は、「望む」は他動詞なので「~を望む」、
「臨む」は自動詞なので「~に臨む」と覚えておきましょう。
では今回は以上です。
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国語力アップ.com管理人
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