「復旧」と「復興」
どちらも新聞やニュースなどでよく使われる言葉だと思います。
「電気の復旧作業」
「被災地の復興」
この2つの言葉の定義には、明確な違いがあるのでしょうか?
また、どのように使い分ければいいのでしょうか?
さっそく、確認していきましょう。
スポンサーリンク
復旧の意味
まずは、「復旧」の意味からです。
【復旧(ふっきゅう)】
⇒壊れたり、傷んだりしたものを、もとの状態にすること。また、もとの状態にもどること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「復旧」とは、
「壊れたものを元に戻すこと」を意味します。
例えば、以下のように使います。
- 電気を復旧する。
- ガスを復旧する。
- 水道を復旧する。
- 道路を復旧する。
「復旧」は、
「ライフライン」に対して使うのが特徴です。
「ライフライン(lifeline)」とは、
「電気やガス・水道・鉄道・道路など」のことだと考えてください。
簡単に言うと、
「生活に必要不可欠なもの」ですね。
これらの生活に大事なものが、
災害などによって壊れてしまった場合に
「復旧」を使うのです。
復興の意味
続いて、「復興」の意味です。
【復興(ふっこう)】
⇒いったん衰えたものが、再びもとの盛んな状態に返ること。また、盛んにすること。再興。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「復興」とは、
「衰えたものを再び盛んにすること」を意味します。
使い方としては、以下の通りです。
- 街を復興させる。
- 文化を復興させる。
- 経済を復興させる。
「復興」は、以前の衰えた状態から
活気や元気を取り戻すような場合に使います。
上記の例だと、
- 「街」⇒「にぎわい」を取り戻す
- 「文化」⇒「振興」を取り戻す
- 「経済」⇒「好景気」を取り戻す
といったイメージです。
つまり、以前のような「勢い」を取り戻す場合に
「復興」を使うわけですね。
スポンサーリンク
復旧と復興の違い
ここまでの内容を整理すると、
「復旧」=壊れたものを元に戻すこと。
「復興」=衰えたものを再び盛んにすること。
ということでした。
両者の違いを簡単に言うと、
「戻し方の違い」だと言えるでしょう。
「復旧」は、物理的に元に戻す時に使います。
一方で、「復興」は、
物理的にも精神的にも元に戻す時に使うのです。
例えば、台風がどこかに直撃して、
街がガタガタになってしまったとしましょう。
この場合、道路や建物であれば、
以前のような元の形に戻すのが「復旧」です。
一方で、道路や建物を元に戻した後、
人々がにぎわいのある状態まで取り戻すのが「復興」なのです。
まとめると、
「復旧」=物理的に元の形に戻す。
「復興」=物理的にも精神的にも元の状態に戻す。
となります。
ちなみに、
なぜこのような違いになるかというと
漢字の語源が異なるからです。
「復旧」の「旧」は「旧型」「旧式」などの言葉があるように、
「元の」という意味があります。
一方で、「復興」の「興」は
「興行」「振興」などのように、
「勢いづく」「盛んにする」という意味があります。
そして、両者に共通する「復」は
「戻す」という意味です。
ここから両者を比較してみると、
「復旧」=元に戻す。
「復興」=勢いがある状態まで戻す。
となります。
つまり、「復旧」は「単に元に戻す」という言葉なのに対し、
「復興」は「勢い」という人の状態が含まれた言葉なのです。
このように、漢字の語源まで覚えておくと、
両者の違いを忘れにくいでしょう。
スポンサーリンク
使い方・例文
では、最後にそれぞれの使い方を
例文で確認しておきます。
【復旧の使い方】
- 道路のいたるところで、復旧工事が行われている。
- トンネルを復旧するのに、1か月はかかりそうだ。
- 電気や水道などの復旧作業を優先的に行ってください。
- パソコンのデータの復旧方法を念入りに調べる。
- 災害時はまず電気を復旧することが重要である。
【復興の使い方】
- 日本は戦後からの復興を経て、経済的に豊かになった。
- 被災地の復興を目指して募金活動を行う予定です。
- 文芸復興とは、14世紀のイタリアで起こった運動のことだ。
- 経済を復興させるには、人・モノ・金の充実が必要である。
- 復興特別所得税は、東日本大震災からの復興のための税金だ。
上記のように「復旧」と「復興」は、
どちらも災害時に使うことが多いです。
特に「復興」の方は、
災害から何年か経った後も使うという印象が強いです。
その理由は、一旦災害が起こると、物理的には元に戻っても、
精神的には元に戻っていないケースが多いからだと思われます。
「復興」の場合は、「人の勢い」という精神面も戻さないと、
真の意味での「復興」とは言えないわけですね。
なお、似たような言葉で「復活(ふっかつ)」がありますが、
「復活」は災害時に使われることはほぼありません。
「復活」は、「死人が復活する」「旧制度が復活する」のように
「人」や「何かの制度」に対して使われることが多い言葉です。
現代では、死人が復活するような非現実的な現象はありませんから、
実際には「制度」に使われることが大半だと考えていいでしょう。
まとめ
以上、今回の内容をまとめると、
「復旧」=壊れたものを元に戻すこと。(物理的)
「復興」=衰えたものを再び盛んにすること。(物理的+精神的)
ということでした。
「復興」の方は、
「にぎわいや活気のある状態まで戻す」と覚えておきましょう。
では今回は以上です。
スポンサーリンク
国語力アップ.com管理人
最新記事 by 国語力アップ.com管理人 (全て見る)
- 間違いと間違えの違いとは?意味や使い分けを解説 - 2021年1月23日