「断つ」と「絶つ」
どちらも普段からよく使われている言葉ですね。
「連絡を絶つ」
「ヒモを断つ」
さらに似たような言葉で「裁つ」を使う場合もあります。
これらの言葉は、
一体どのように使い分ければいいのでしょうか?
さっそく確認していきましょう。
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断つの意味
まずは、「断つ」の意味からです。
【断つ(たつ)】
①つながっているものを切り離す。
②道などをさえぎって通れなくする。
③これまで続いていた物事を終わりにする。
「断つ」には主に3つの意味があります。
1つ目は、
「つながっているものを切り離す」という意味です。
【例】⇒「鎖を断つ。」「ひもを断つ。」
言いかえれば、
「(物理的に)切断する」ということですね。
そして2つ目は、
「道をさえぎって通れなくする」という意味です。
【例】⇒「退路を断つ。」「補給路を断つ。」
一言で「道をさえぎる」と覚えてもよいでしょう。
最後は、
「続いている事を終わりにする」という意味です。
【例】⇒「食を断つ。」「思いを断つ。」
この場合は、
「続けているものを(一時的に)切る」
というイメージで考えてください。
「断」という字は「中断」「遮断」などの言葉があるように
「途中で終了する」という意味があります。
したがって、「物事を一時的に終了する」
という意味で上記のような使い方をするわけです。
絶つの意味
次に、「絶つ」の意味です。
【絶つ(たつ)】
①(自ら)終わらせる・尽きさせる
②縁を切る。
「絶つ」には主に2つの意味があります。
1つ目は、
「終わらせる」という意味です。
【例】⇒「命を絶つ。」「望みを絶たれる。」
この場合は、
「一時的ではなく半永久的に終わらせる」
という点がポイントです。
そして、2つ目は
「縁を切る」という意味です。
【例】⇒「国交を絶つ。」「消息を絶つ。」
こちらも1つ目と同様に、
「それまでの関係を一生終わらせること」だと考えてください。
「絶つ」の語源を確認しておくと、
「絶」という漢字は「絶命」「絶縁」などがあるように
「それ以上は続かない」という意味があります。
つまり、「絶つ」の方は
「ここで終わりにする」という意味を強調した言葉なのです。
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断つと絶つの違い
ここまでの内容を整理すると、
「断つ」=①切り離す。②道をさえぎる。③(一時的に)終わりにする。
「絶つ」=①(半永久的に)終わらせる。②縁を切る。
ということでした。
両者の違いは、2つの点から
比較すると分かりやすいでしょう。
1つ目は、
「目に見えるものかどうか」です。
「断つ」は、「目に見えるもの」
に対して使うことがほとんどです。
具体的には、鎖やヒモなどの「物質」、
退路や補給路などの「道」、普段の「食事」といったものです。
逆に、「絶つ」の方は
「目に見えないもの」に対して使います。
例えば、「命」や「望み」「関係」
といった見えないものです。
したがって、基本的には
「断つ」=姿や形があるもの。
「絶つ」=姿や形がないもの。
と考えれば問題ありません。
2つ目は、「終わらせ方の違い」です。
どちらも「何かを終わらせる」
という意味は共通しています。
しかし、「断つ」の方は
一時的に終わらせる場合に使います。
言いかえれば、
「一時的なので修復することもある」ということです。
一方で、「絶つ」の方は
半永久的に終わらせる場合に使います。
つまり、こちらは
「修復不可能なほどに終わらせる」ということですね。
以上、まとめると、
「断つ」=主に目に見えるものを一時的に終わらせる。
「絶つ」=主に目に見えないものを半永久的に終わらせる。
となります。
ちなみに、冒頭で紹介した「裁つ」ですが、
「裁つ」とは「紙や布などをある寸法に切ること」を意味します。
使い方としては、
「布地を裁つ」のように使います。
「裁つ」の一番の特徴は、
「紙や布などに対して使う」という点です。
元々この言葉は、「裁縫(さいほう)」の「裁」を語源とします。
つまり、ミシンなどを使って
型に合わせて布地を切るようなイメージです。
したがって、
ひもや鎖などに使う「絶つ」や「形のないものに使う「断つ」とは
全く異なる言葉だということが分かるかと思います。
「裁つ」に関しては、あくまで
布や紙などの素材に対して使う言葉だと認識しておきましょう。
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使い方・例文
では最後に、それぞれの使い方を
例文で確認しておきます。
【断つの使い方】
- 退路を断たれたので、もう逃げ場がない。
- タバコを断つようにしてから、体調がよい。
- 糸を断ち、工作作業を進めていく。
- 悲しみを断ち、前を向くようにしよう。
- 快刀乱麻を断つようなすばらしい推理だった。
※「快刀乱麻を断つ」とは、
「もつれていた問題をあざやかに解決する」という意味の慣用句です。
「快刀」は「鋭利な刃物」
「乱麻」は「もつれた麻」のことを指します。
【絶つの使い方】
- 彼は消息を絶つように、姿を見せなくなった。
- 唯一の望みが絶たれたので、途方に暮れている。
- お金を返さなかったので、彼女とは交流を絶った。
- 彼は命を絶つ覚悟で、ボクシングをしている。
- あいつとの関係は、絶つようにしたほうがいい。
補足すると、「交わり」をたつ場合は
「断交」とも「絶交」とも言います。
「断交」とは、「一時的に交流をたつこと」
「絶交」とは「永久的に交流をたつこと」を意味します。
このように、両方とも使える言葉もある
ということを頭に入れておくとよいでしょう。
まとめ
以上、今回の内容をまとめると、
「断つ」=主に目に見えるものを、一時的に終わらせる。
「絶つ」=主に目に見えないものを、半永久的に終わらせる。
「裁つ」=紙や布などをある寸法に切ること。
ということでした。
原則として、
【「絶つ」の方は物理的なモノに使う】と考えてください。
ただし、場合によっては
「悲しみ」や「喜び」など感覚的なモノに対して使うこともあります。
もしも迷った場合は、
漢字本来の意味を思い出すようにしましょう。
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国語力アップ.com管理人
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