『無彩の色』は、高校教科書・現代の国語における評論文です。そのため、定期テストなどにも出題されています。
ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張が分かりにくい箇所も多いです。そこで今回は、『無彩の色』のあらすじや語句の意味、学習の手引きなどを含め簡単に解説しました。
『無彩の色』のあらすじ
本文は大きく分けて、三つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①ネズミ色と聞くと、誰もが同じような色を想像する。ほとんど無彩色で彩りのない灰色の世界である。色の好みは人それぞれだが、色の感じ方には共通するものがある。暖色や寒色という言葉があるように、色に温度を結びつけたり、ある感情を与える作用を認めたりする。ネズミ色はあまりいい意味を持たされていないし、灰色と言い換えても否定的な意味と結びつき、地味でおもしろみのない世界を想像するのが普通だろう。
②だが、わたしたちが生きる世界には意外に灰色が多い。特別な意味を持たず、特別な感情にも結び付く必要がない場所では、グレーのほうがよい。感覚と感情の安定を支えているのは、実は目立たない灰色のほうなのだ。つまり、灰色は消極的だから役立っているのだ。さらに、わたしたちはさまざまな段階の灰色で表現された白黒写真を美しいと感じ、灰色の無限の段階の中に光と影の戯れを見て楽しむことができる。こうした感覚は、昔から存在していたものだろう。
③日本は灰色の美しさに目覚め、それを大切に育ててきた文化を持っている。伝統色と呼ばれる色名の体系を調べると、近代以前の日本には、灰色系に驚くほどの色名があったことが分かる。その一つの利休鼠というネズミ色は、茶の芸術が完成された時代の名残とも、灰色の美学を表しているとも思える。日本の文化はそんな世界に、どんなカラフルな色にもまさる、最高の美を認めることもできるのである。
『無彩の色』の要約解説
筆者はまず第一段落で、「ネズミ色(灰色)」に対する否定的なイメージについて触れています。多くの人は、ネズミ色は地味で面白みのない世界を想像するのが普通だろう、という部分です。
次に第二段落では、一方でわたしたちの身の回りには意外と灰色が多いのだと言います。具体的には、道路や建物、配管、電柱、電線といったものです。こういったものは、「目立たない」「消極的」だからこそ役立っているのだと主張します。
そして第三段落では、「日本文化の中での灰色」について述べています。日本では、伝統的に灰色を大事にしてきた歴史があり、そういった文化があるからこそ、灰色の世界に最高の美を認めることができるのだという箇所です。
全体を通して筆者が筆者が伝えたい事は、最後の第三段落に集約されていると言えます。
『無彩の色』の意味調べノート
【無彩色(むさいしょく)】⇒色の三属性である色相・明度・彩度のうち明度だけをもつ黒・灰・白をいう。
【暖色(だんしょく)】⇒赤・橙(だいだい)、黄など暖かい感じを与える色。
【寒色(かんしょく)】⇒青やその系統の色など寒い感じを与える色。
【沈静(ちんせい)】⇒落ち着いていて静かなこと。気勢がしずまること。
【害獣(がいじゅう)】⇒人や家畜を襲ったり農作物を荒らしたりして、害を加えるけもの。
【グレーゾーン】⇒中間の領域。どっちつかずの範囲。
【曖昧(あいまい)】⇒物事がはっきりしないこと。また、そのさま。
【麻痺(まひ)】⇒運動・知覚機能が停止すること。しびれて感覚が失われること。
【モノクローム】⇒単一の色彩で描かれた絵画。白黒の写真や映画。
【途端(とたん)】⇒あることが行われた、その瞬間。そのすぐあと。多く副詞的に用い、「に」を伴うこともある。
【織(お)りなす】⇒いろいろな要素を組み合わせて構成する。
【趣(おもむき)】⇒そのものが感じさせる風情。しみじみとした味わい。
【灰色の無限の段階】⇒灰色に感じる色には、色や濃淡に限りない段階があるということ。
【戯れ(たわむれ)】⇒ふざけること。遊び興じること。
【屋根瓦(やねがわら)】⇒ここでは、粘土瓦を指す。
【近代(きんだい)】⇒日本史では明治維新から太平洋戦争の終結まで、西洋史では市民革命・産業革命からロシア革命までの時代のこと。
【煤(すす)】⇒ 有機物の不完全燃焼によって生じる炭素の黒い微粒子。
【愛でる(めでる)】⇒ここでは、美しさを味わう、という意味。
【洗練(せんれん)】⇒趣味や人柄などを磨き上げて優雅で高尚なものにすること。
【名残(なごり)】⇒ある事柄が過ぎ去ったあとになお残る、その気配や影響。
【美学(びがく)】⇒美しさに関する独特の考え方や趣味。
『無彩の色』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を、送り仮名も含め漢字に直しなさい。
①明るい色がフクマレル。
②イロドリを添える。
③赤はケイカイを表す色だ。
④ホソウされた道路。
⑤アザヤカナ色をつける。
⑥画面にインエイを施す。
⑦光と影のタワムレを見て楽しむ。
⑧色の名前をタイケイ的に調べる。
第一段落→ネズミ色は、ほとんど無彩色で彩りのない灰色の世界を想像させ、これを灰色と言い換えても、否定的な意味に結びつき、地味でおもしろみのない世界を想像するのが普通だろう。
第二段落→わたしたちが生きる世界には意外に灰色が多く、特別な意味を持たず、特別な感情にも結びつく必要がない消極的な色として役立っており、さらに、わたしたちはさまざまな段階の灰色を美しいと感じ、楽しむことができるが、こうした感覚は実は昔から存在していたものだろう。
第三段落→日本は灰色の美しさに目覚め、それを大切に育ててきた文化を持ち、伝統色にも多くの灰色系の色名があり、利休鼠というネズミ色もその一つであるが、日本の文化はこうした色の世界に、どんなカラフルな色にもまさる、最高の美を認めることもできるのである。
第一段落
「彼はネズミ色の服を来ていた」⇒ネズミ色からは、地味でおもしろみのない世界が想像されるということ。
第二段落
「舗装された道路、~グレーが使われる」⇒わたしたちの身の回りには、意外と灰色が多く、特別な意味や感情と結びつく必要がない場所では、目立たない灰色がよいということ。
「白黒写真」⇒人間は彩りのないさまざまな明るさの灰色だけで表現された風景を見て、美しいと感じることができるということ。
「屋根瓦」⇒さまざまな段階の灰色を美しいと感じ、楽しむ感覚が、昔から存在していたものであるということ。
まとめ
以上、今回は『無彩の色』について解説しました。ぜひノート代わり、定期テストの対策などにして頂ければと思います。
国語力アップ.com管理人
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