「措置」と「処置」は、
どちらも同じような意味として使われている印象だと思います。
「措置を講じる」 「処置を行う」
さらに、両者は法律の条文にも使われているようです。
この2つの使い分けは一体どのように行えばいいのでしょうか?
今回は、多くの人が疑問に感じている
「措置」と「処置」の違いを分かりやすく解説しました。
さっそく、確認していきましょう。
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措置の意味・読み方
まずは、「措置」の意味と読み方からです。
【措置(そち)】
⇒事態に応じて必要な手続きをとること。取り計らって始末をつけること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「措置(そち)」とは、
「必要な手続きにより、物事を始末すること」を意味します。
「始末」は「始めから末(すえ)」と書くので、
「始めから最後まで」という意味があります。
つまり、「始めから最後まで手続きを行うこと」を
「措置」と言うわけです。
主な使い方としては、以下の通りです。
名誉棄損をされたので、法的な措置を取る。
この場合は、
「法律によって相手を訴え、最終的に裁判まで行う」
という一連の手続きのことだと考えてください。
また、「措置」は「事前に対処する」
という意味で使う場合もあります。
犯罪を防ぐために、防犯対策の措置をとる。
犯罪というのは、実際に起こってからでは遅いです。
なので、
「犯罪が起きないように事前に対策を行う」という意味です。
このように、前もって物事を行うことも
一連の物事への対応に含まれるということですね。
ちなみに、「措置」の「類義語」としては、
「対策・方策・打つ手」などが挙げられます。
一般的には「措置を取る」という言い方が多いので、
「対策を取る」などで言い換えると分かりやすいかと思います。
処置の意味・読み方
続いて、「処置」の意味と読み方です。
【処置(しょち)】
①状況などを勘案して扱いを決めること。また、その扱い。
②けがや病気の治療・手当てをすること。
出典:三省堂 大辞林
「処置(しょち)」には、2つ意味があります。
1つ目は、
「その場の状況を考えて扱いを決めること」という意味です。
この場合は、以下のように使います。
お客の急なキャンセルに対し、早急に処置した。
つまり、急なキャンセルという状況に対して、
何らかの対策をしたということです。
そして2つ目は、
「けがや病気の治療・手当てをすること」という意味です。
ケガ人に対して、応急処置をとる。
この意味の場合は、
看護などの医療の分野で使うことが多いと考えて下さい。
なお、「処置」の「類義語」は
「処理・処分」などの言葉となります。
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措置と処置の違い
ここまでの内容を整理すると、
「措置」=必要な手続きにより、物事を始末すること。
「処置」=その場の状況を考えて扱いを決めること。けがや病気の手当て・治療をすること。
ということでした。
両者の違いを2つの点から比較したいと思います。
1つ目は、
「物事を完結させるかどうか」です。
「措置」は、全体の経過を重視する言葉です。
したがって、基本的には、
物事を最後まで完結させるのです。
一方で、「処置」は個々の結果を重視する言葉なので、
必ずしも完結を必要とはしません。
例えば、
「熱中症で倒れた人への対処法」で比較してみましょう。
「処置」は、水を飲ませたり日影で休ませたりと、
その場の状況の中でできることをします。
この時に、「倒れた人」への完全回復(完結)を
必ず行うというわけではありません。
しかし、「措置」の場合は、
「病院に連れて行って点滴を打った後、ベッドにつかす」
のようにその人をちゃんと回復させるまで行うのです。
そして2つ目は、
「事前に対処するかどうか」です。
「措置」は、事前に対処するという意味でも使います。
これはなぜかと言うと、先ほども述べた通り
「措置」は事前も事後も含め、全体の経過を重視する言葉だからです。
一方で、「処置」は、
事前ではなく事後に対処する場合に使います。
例えば、「事前措置」という言葉がありますが、
これは「前もって何かに対処する」という意味でよく使われています。
しかし、逆に「事前処置」という言葉は存在しません。
理由は簡単で、「処置」には
前もって何かをするという意味は含まれていないからです。
「処置」は事前に対処するというよりも、
起こってしまったことへの対応という意味が強いのです。
まとめると、
「措置」⇒対処して完結させる。事前に対処する。
「処置」⇒対処するが、必ずしも完結を必要としない。事前ではなく事後。
となります。
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法律上の使い分け
「措置」と「処置」は、法律用語としても使われています。
法律の場合の意味も押さえておきましょう。
まずは、「措置」が含まれる条文です。
職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して(中略)適当な行政上の措置が行われることを要求することができる。(国家公務員法第86条)
この場合は簡単に言うと、
「手続き」という意味ですね。
続いて、「処置」が含まれる条文です。
陪席裁判官は裁判長に告けて前項に規定する処置を為すことを得る。(民事訴訟法第127条2項)
「前項」とは、
「当事者に対して問いかけて、立証を促す行為のこと」です。
この場合の「処置」は、
「法令を適用する一連の行為」として用いられています。
そして、両方が含まれている条文もあります。
公安委員会は他の公の機関に対し、その後の処置について必要と認める協力を求めるため適当な措置をとらなければならない。(警察官職務執行法第4条二項)
この場合は、
「処置を行うために事前に措置が必要」
という意味だと考えてください。
別の言い方だと、
「措置によって処置を行うことができる」と言ってもよいでしょう。
このように比較すると、「処置」は個々の扱いについて使い、
「措置」はそれを可能にする全体の手続きに使う。という結論が出せます。
補足すると、
法令名は「処置」よりも「措置」を使うことが多いです。
例えば、
「〇〇措置法」「〇〇特措法」のような名称です。
これは、
「措置」が「処置」を含めた全体の手続きだからと言えるでしょう。
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措置と処置の使い方・例文
では、最後にそれぞれの使い方を
例文で確認しておきます。
【措置の使い方】
- 借金を返してくれなかったので、法的措置をとった。
- 税金の優遇措置を受けて、節税する方法を選んだ。
- 防犯対策のための措置を講じるようにしてください。
- 事故が起きないように事前に措置をとる。
- 措置入院の期間や費用を病院へ確認する。
【処置の使い方】
- 怪我で骨折をした生徒に対し、応急処置を施す。
- 診療室で熱中症で倒れた人への処置を行う。
- 事故現場に向かい、けが人の適切な処置を行った。
- 処置室では血圧測定や注射、採血などが行われる。
- 是正処置により、仕事の改善をはかった。
※「是正処置(ぜせいしょち)」とは
「ミスした原因を取り除いて再発を防止すること」を言います。
上記のように、どちらも
「医療・法律・福祉・介護・ビジネス」など
様々な場面で使われていることが分かるかと思います。
一般的には、「措置」は法律文に対して、
「処置」は医療分野に対して使うことが多いですね。
ただし、最近では
「措置」の方も医療の分野で使われる機会が増えてきています。
代表的なのが「措置入院」という言葉です。(例文5.)
「措置入院」とは、
「精神保健福祉法で定められた、精神科病院への入院形態の一つ」です。
入院しなければ自傷・他害の恐れがある場合に、
都道府県知事の権限で強制的に入院させることを意味します。
これも同じく、
「入院から検査、判定、退院までの一連の手続きを行う」
という意味で「措置」が使われていると考えてください。
まとめ
以上、内容を簡単にまとめると、
「措置」=必要な手続きにより、物事を始末すること。
「処置」=その場の状況を考えて扱いを決めること。けがや病気の手当て・治療をすること。
両者の違い・使い分けは、
「措置」=完結させる。事前に対処する。
「処置」=必ずしも完結しない。事前ではなく事後。
「処置」は個々の扱いについて使い、
「措置」はそれを可能にする全体の手続きに使う。
ということでした。
ポイントは、
「物事を完結させるかどうか」「事前に対処するかどうか」
この2点を押さえることだと言えるでしょう。
では、今回は以上となります。
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国語力アップ.com管理人
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