非合理 不合理 違い 例文 類義語

 

不合理」と「非合理」は、どちらも似たような意味として使われている言葉です。

ただ、両者の使い分けを意識して行っているという人は非常に少ないかと思われます。

そこで今回は、「不合理」と「非合理」の意味の違いについて簡単に分かりやすく解説しました。

この記事を読み終わる頃には、両者の使い分けを正しく理解していることでしょう。

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不合理の意味

 

まず、「不合理」の意味を辞書で引くと次のように書かれています。

【不合理(ふごうり)】

道理・理屈に合っていないこと。筋の通らないこと。また、そのさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

不合理」とは「道理や理屈に合っていないこと・筋の通らないこと」という意味です。

道理」とは「物事の正しい筋道」、「理屈」とは「ちゃんとした理由」のことを表します。

すなわち、正しい筋道でなかったり、ちゃんとした理由でないことを「不合理」と言うのです。

例えば、AさんとBさんが同じ職場で働いていたとしましょう。

Aさんは残業も含めて一日9時間以上働いていましたが、Bさんは残業なしで一日8時間しか働いていませんでした。

ところが、AさんとBさんの月の給与額は全く一緒だったとします。

このような場合、AさんとBさんの待遇は道理に合っていないので、「不合理な労働条件」などと言うのです。

もう一つ例を挙げましょう。Aさん、Bさんは大事な試験を控えていました。

  • Aさん:「明日は試験があるので勉強しよう。」
  • Bさん:「明日は試験があるけど、テレビを見よう。」

Aさんは「明日試験がある」という理由に対して、「勉強する」という行動が合っています。

一方で、Bさんは「試験がある」にも関わらず、「テレビを見る」という行動をとっています。

このような場合も、Bさんの行動はちゃんとした理由に則ったものではないので、「不合理な行動」と言えるわけです。

非合理の意味

 

次に、「非合理」の意味も辞書で引いてみます。

【非合理(ひごうり)】

論理や道理に合わないこと。また、そのさま。

理性や論理ではとらえきれないこと。また、そのさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

非合理」には2つの意味があります。

1つ目は、「論理や道理に合わないこと」です。

この意味の場合は、「不合理」とほぼ同じ意味だと考えて問題ありません。

そして2つ目は「理性や論理でとらえきれないこと」という意味です。

理性」とは「正しい筋道で物事を判断したり、善悪・真偽などを正しく判断する能力」のことを表します。

「理性」は、元々日本由来の言葉ではなく、哲学者であるカント(ドイツ出身)が作った言葉と言われています。

したがって、この意味の場合は哲学的な意味として使われるのが特徴です。

例えば、神社やお寺などのパワースポットに通ったりする行為は、理性や論理ではとらえきれない神秘的なものです。

あるいは、占い師や予言者などに相談して、人生のアドバイスを求める行為も理性ではとらえきれないものです。

このように、理性ではとらえきれない神秘的・哲学的な世界のことを「非合理」と言うのです。

2つ目の意味として使う場合は、「道理に合わない」ということではありません。あくまで理性ではとらえきれないということです。

占いや予言などは、信じる人もいれば信じない人もいます。しかし、人の理性の範囲を超えていること、あるいは人の知性ではとらえられないことであるのは事実です。

このような人間の感情や信仰など、理屈では説明しきれないことに対して「非合理」を使うことになります。

不合理と非合理の違い

非合理 不合理 違い・使い分け

 

ここまでの内容を整理すると、

不合理」=道理や理屈に合っていないこと・筋の通らないこと。

非合理」=論理や道理に合わないこと・理性や論理でとらえきれないこと。

ということでした。

つまり両者の違いを簡単に言うと、「哲学的な意味としても使うかどうか?」ということになります。

「不合理」の方は、哲学としての意味はありません。

そのため、占いやパワースポットなど哲学的なものに対して、「不合理」を使うのは誤りということになります。

一方で、「非合理」の方は哲学的な要素を含んだ言葉です。

したがって、こちらは「道理に合わない」という意味以外に「理性や論理でとらえきれない」という意味でも使うことができます。

実際には、「不合理」の方が「非合理」よりも日常的な場面で使うという特徴があります。

これは「不」と「非」の本来の使い方の違いから来るものです。

まず「不」の方は「~でない」「~がない・~に欠けた」「~しない・~していない」など複数の意味を持った言葉です。

~でない」⇒「不健康・不自然・不確か・不適当」など。

~がない・~に欠けた」⇒「不見識・不義理・不道徳・不品行」など。

~しない・~していない」⇒「不安定・不干渉・不合格・不賛成」など。

対して、「非」の方は「それに該当しない・それ以外である」など限定的な用例が中心です。

該当しない・以外である」⇒「非公開・非公式・非合法・非常識・非売品」など。

語によっては、「不」しか付かないもの、「非」しか付かないもの、両方付くものなどがありますが、一般には頭に「不」を付けるものの方が大半です。

そのため、現状では哲学以外の日常的な場面に関しては「非合理」よりも「不合理」の方を使うケースが多いということです。

使い方・例文

 

最後に、「不合理」と「非合理」の使い方を実際の例文で確認しておきましょう。

 

【不合理の使い方】

  1. 社会の不合理を改善していく仕事が政治である。
  2. 不合理な制度なので、世間では廃止するように求められた。
  3. 仕事の役割を勤続年数だけで分担するのは、不合理である。
  4. 今回改正された税制は、非常に不合理な制度と言えるだろう。
  5. 条件を満たしたのに、保険金がもらえないのは不合理だ。

【非合理の使い方】

  1. 直観や感性のみを信じるのは、非合理的な考え方と言える。
  2. 神様や仏様など、世の中には非合理的な存在が信じられている。
  3. 人間の意思決定の半分以上は、非合理的なものと言われている。
  4. 非合理的な議論はやめて、もっと建設的な話し合いをしよう。
  5. 占星術は非合理性の中にも、一種の法則性のようなものがある。

 

文法的な補足をすると、「非合理」の方は後ろに「的」が付いて「非合理的」と言うことが多いです。

「非合理的」とは「道理に合わないさま・理性ではとられられないさま」という意味です。後ろに「的」が付くと、このように形容詞としての意味になります。

対して、「不合理」の方は「不合理的」とは言わず、そのまま「不合理」として使うことが多いです。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

不合理」=道理や理屈に合っていないこと・筋の通らないこと。

非合理」=①論理や道理に合わないこと。理性や論理でとらえきれないこと。

違い」=「非合理」は哲学の意味として使うが、「不合理」は使わない。また「不合理」の方が「非合理」よりも日常的な場面で使うことが多い。

どちらもよく使われていますが、頭に付く漢字によって意味が異なってきます。ぜひ正しい意味を理解した上で使い分けて頂ければと思います。