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等 とう など どっち 公用文 公文書 使い分け

 

「等(とう)」「など」「ら」は、複数を表す接頭語・助詞として用いられています。

ただ、その使い分けとなるとどれを使えばよいのか?という疑問が生じます。特に、公用文に関しては「等」と「など」のどっちを使えばよいのかと考える人も多いようです。

そこで本記事では、これらの言葉の意味や違い、漢字の読み方などについて解説しました。

「ら」の意味・使い方

 

まず、「ら」ですが「ら」には次の4つの意味があります。

人名や職名などの下に付けて、他にも同類とみなせる人がいることを表す。

人を表す代名詞・親族名称などに付けて、おおざっぱに同類の者を表す。

一部の事物を表す代名詞に付けて、表している物事が複数であることを表す。

一部の場所を表す代名詞に付けて、おおよその場所や時などを表す。

 

一つずつ意味を見ていきたいと思います。まず①の「人名や職名の下に付けて、同類とみなす」に関しては次のような使い方をします。

「Aさん・B君・C氏・Eちゃん・F嬢・G・大臣(の一行)・課長・委員・先生

この「ら」は、報道などで客観的な事実を伝えるような場合は、その人の社会的地位、目上・目下、親疎などに関係なく使うことができます。

ただ、個人的に口頭などで相手へ伝えるような場合は、話し手と聞き手の身分、社会的地位、年齢、親疎などによって注意が必要となってきます。

なぜなら、「ら」は軽蔑や蔑視といった見下しの意が含まれることもあるためです。そのような場合には、「~をはじめ、多くの方々が」とか「その他の方々」のような表現の方が望ましいです。

また、全員の名すべてを挙げるような場合は「ら」は用いません。

「✕」⇒「山田さん、中村さん、鈴木さん三人は~

「ら」には「そのほか」の意味も含まれています。そのため、A、B、Cの三人を示すのに「Aさん、Bさん、Cさんら」というのは誤りとなります。

人名や職名を複数挙げる場合は、主立ったものを二人以上挙げ、他を省略するような使い方は問題ないです。

「〇」⇒「山田さん、中村さん、鈴木さん十人は~」

「〇」⇒「部長・課長の一行は~」

次に、②の「人を表す代名詞・親族名称などに付けて、おおざっぱに同類の者を表す」という意味の用例です。

「わた(く)し・ぼく・小生・こいつ・君・お前・彼・あいつ・そいつ・てめえ・兄貴・弟・姉さん・お父さん・おば・いとこ・娘・坊っちゃん・学生・子供

いずれも人を表す代名詞や親族への呼称、その他に付けて、大ざっぱに同類のものをひっくるめた表現であることが分かります。多くは謙譲や親愛の情をこめるか、あるいは目下の者に対して使われます。

そして、③の「一部の事物を表す代名詞に付けて、物事が複数であることを表す」という意味の用例です。

「これ・それ・あれ

最後は、④の「一部の場所を表す代名詞に付けて、おおよその場所や時などを表す」という意味の用例です。

「ここ(で休もう)・そこ(を探してごらん)・あそこ(にあるだろう)」

この場合は、複数の意味はほぼないと考えて問題ありません。

「など」の意味・使い方

 

続いて、「など」の意味です。

「など」は複数を表す助詞として様々な語に付けることができ、主に次の5つの意味があります。

同じようなものを並べて示す。「果物はりんごやみかんなどを指す。」

同じようなものの中から一つを例として示す。「資格は宅建などを持っている。」

軽く見る気持ちを表す。「彼など私の足元にも及ばない。」

そのものと断定せず、他も含まれることを暗に示す。「この柄など素敵だ。」

強意を表す。「ギャンブルなどやらない。」

 

「など」は具体的に挙げたものごとを代表、一例、数例としたり、人物や事物、事柄、動作などが多くあることを表します。

必ずしも具体的にはっきりしていなくてもよく、とにかく具体的に挙げたもの以外にも何かありそうだと考えられる程度の場合にも使うことがあります。

また、④のように、一例として挙げているものの、断定を避けてやわらげた表現とする意味もあります。

「お茶などいかがですか?」「これなどお似合いだと思いますよ。」

「等」の意味・使い方

 

「等(とう)」には次のような意味があります。

同種のものを並べて、その他にもまだあることを表す。など。「英・仏・独のEU諸国」

助数詞。階級や順位を数えるのに用いる。「一、二

 

「等」は「ら」「など」などの意味が含まれた語です。また、その他にもあることを示すような意味も持っています。

「本・雑誌を買う。」

「等」は普通に使う分には、①のように複数を表す接尾語として使われるため、「ら」や「など」とほぼ同じ意味だと考えれば問題ありません。

ただ、「等」には複数以外の意味、例えば「強意」や「示唆」などの意味は含まれていません。その点が、「ら」や「など」とわずかに異なると言えます。

また、「等」は法令や公用文などにしばしば使われており、一般の文章に使われる機会は「ら」や「など」と比べれば少ないという点も挙げられます。

なお、「等」は読み方を間違えないように注意すべき語です。

「等」は「とう」「ひと(しい)」「」「など」の四つの読み方がされています。この読み方はいずれも国語辞典には載せられているものです。

ただ、常用漢字表には「等」は「とう」および「ひとしい」としか記されていません。また、文部科学省では「公文書における漢字使用等について」に基づき、「文部科学省用字用語例」を定めています。

この「文部科学省用字用語例」によると、「等」は「トウ」と読み、「など」や「ら」とは読まない。という旨の内容が書かれています。したがって、公用文に関しては「等」は「とう」もしくは「ひと(しい)」としか読まないことになります。

「ら」「など」「等」の使い分け

 

以上の解説を踏まえますと、「ら」「など」「等」はお互い共通の意味も含んでいますし、含んでいない部分もあるということが分かります。

言い換えれば、相互に入替えできる場合もありますし、できない場合もあるということです。

例えば、次のような用例はいずれも相互に入替えをすることができます。

  • 「Aさんら⇔Aさんなど⇔Aさん等」
  • 「君ら⇔きみなど」
  • 「これら⇔これなど」
  • 「住所や電話番号など⇔住所や電話番号等」

 

一方で、「ここらで休もう」の「ら」を「など」や「等」にして、「ここなどで休もう」「ここ等で休もう」のようにすることはできません。

また、「嘘などつくものか」の「など」を「ら」や「等」にして、「嘘らでつくものか」「嘘等つくものか」のようにすることもできません。

さらに、「彼など相手にならない」の「など」を「ら」や「等」にして、「彼ら相手にならない」「彼等相手にならない」のようにすることもできません。

つまり、複数の意を離れたものに関しては入替えができないということです。

「ら」や「など」は複数の意味以外に、強意や示唆、見下しの意味なども持っています。このような意味として使う際は、当然「等」は使えないので、お互いの入れ替えもできないということになります。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

」=人名や職名の下に付けて、同類とみなす。②おおざっぱに同類の者を表す。③物事が複数であることを表す。④おおよその場所や時などを表す。

など」=①同じようなものを並べて示す。②同じようなものの中から一つを例として示す。③軽く見る気持ちを表す。④そのものと断定せず、他も含まれることを暗に示す。⑤強意を表す。

」=同種のものを並べて、その他にもまだあることを表す。公用文では「など」「ら」とは読まず、「とう」「ひと(しい)」としか読まない。

使い分け」=「ら」「など」は一般的な文章、「等」は法令文・公用文においてよく使われるが、基本どちらも入替えができる。ただ、複数の意を離れたものに関しては入替えができない。

「ら」「など」「等(とう)」は、いずれも複数の意味を持っており、相互に入れ替えることができます。しかし、それぞれ微妙に異なる意味も含んでいるため、複数の意味以外で使う場合は「ら」や「など」を使うようにして下さい。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

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