この記事の読了目安: 946

「本当の自分」幻想 問題 要旨 解説 筆者の主張 漢字 語句

 

「本当の自分」幻想は、「現代の国語」における教科書で学ぶ評論です。ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張が分かりにくい箇所もあります。

そこで今回は、「本当の自分」幻想のあらすじや要約、学習の手引きなどを含め簡単に解説しました。

「本当の自分」幻想のあらすじ

 

本文は大きく分けて、5つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとの要旨を簡単に紹介していきます。

あらすじ

①インターネットが普及するにつれて、私は現実の人の姿とネットの中の姿が必ずしも合致しないということに気づいた。人にはいろいろな顔があるが、それが可視化されたインパクトは決して小さくなかった。

②前提となるのは、「本当の自分/ウソの自分」というモデルである。だが、どっちが「本当」の姿なのかと決めようとしていること自体が、不毛に思えてきた。結局、どっちも「本当」なのではないか。「個人」が持っているいろいろな顔があからさまになったとき、それをネガティブに詮索する傾向は、現在でも必ずしもなくなったとは言えない。

③コミュニケーションは、他者との共同作業である。会話の内容や口調、気分など、すべては相互作用の中で決定されてゆく。その中のどれかの自分を、恣意的に「本当の姿」だと決められてしまうことに、私たちは抵抗を感じる。私たちは、他人から本質を規定されて自分を矮小化されることが不安なのである。

④人間は相手次第で様々な自分になるため、決して唯一無二の分割不可能な「個人」ではない。複数の分割可能な「分人」であると考えられる。「本当の自分」は一つだけで、あとは表面的に使い分けられたキャラや仮面等にすぎないという考え方は間違っている。理由としては三つあり、一つ目はすべての人間関係がキャラや仮面どうしの化かし合いなら、それは他者も自分も不当におとしめる錯覚であり、誰とも「本当の自分」でコミュニケーションを図ることができなくなるからだ。そして二つ目は、分人は相手との相互作用の中で生じ、変化するが、それをいちいち、仮面をつけ替えたとか、仮面が変容したとか説明するのは無理がある点である。三つ目は、分人には実体があるが「本当の自分」には実体がなく、対人関係の中だけで自分のすべての可能性を発揮することはできない点である。

⑤分人はすべて、「本当の自分」である。人間は対人関係ごとのいくつかの分人によって構成されている。分人の構成比率によって決定される個性も唯一不変のものではなく、他者の存在なしには生じないものである。

「本当の自分」幻想の要約解説

 

要約インターネットの普及により、人のいろいろな顔が可視化され、私たちの社会はどれが本当の姿なのか詮索するようになった。だが、人間は他者との相互作用の中で生じるいくつかの分人によって構成されており、その分人はすべて「本当の自分」である。本当の自分は一つだけで、あとはキャラや仮面にすぎないという考え方は間違っている。人間の個性は分人の構成比率によって変わるので、他者の存在なしには決して生じないものである。(200文字)

本文は、内容により次の五つの段落に分けられます。

①p19・1~p20・2⇒ふだんの姿とネットの中の姿の不一致

②p20・3~p21・5⇒人の「本当」の姿とは何か

③p21・6~p22・12⇒本質を規定されることへの抵抗

④p22・13~p24・15⇒人間は複数の「分人」で構成される

⑤p24・16~p25・6⇒分人はすべて「本当の自分」である

全体を通して筆者が主張したいことは、第四段落と第五段落に集約されていると言えます。つまり、分人はすべて「本当の自分」であり、人間は対人関係ごとのいくつかの分人によって構成されており、分人の構成比率により決定される個性も不変のものではないという部分です。

「本当の自分」幻想の意味調べノート

 

【饒舌(じょうぜつ)】⇒口数が多いこと。

【辛辣(しんらつ)】⇒表現や態度などが、非常に手厳しい様子。

【端々(はしばし)】⇒あちこちの部分。ちょっとした部分。

【語り口(かたりくち)】⇒語る時の調子や態度。ここでは、ブログでの言葉の使い方や表現の仕方を指す。

【普及(ふきゅう)】⇒広く行き渡ること。

【合致(がっち)】⇒ぴったり合うこと。一致すること。

【可視化(かしか)】⇒目に見えるようにすること。分かりやすくすること。

【インパクト】⇒衝撃。影響。

【推察(すいさつ)】⇒人の心の中や物事の事情などを、想像して考えること。

【ノリ】⇒場に合わせて調子づくこと、合わせること。ここでは、ネット上での雰囲気や流れを指す。

【不毛(ふもう)】⇒何の進歩も成果も得られないこと。

【真情(しんじょう)】⇒うそ偽りのない気持ち。

【真贋(しんがん)】⇒本物と偽物のこと。ここでは、どちらが本物でどちらが偽物であるかということ。

【あからさま】⇒ありのままで、包み隠さないさま。

【二重人格(にじゅうじんかく)】⇒一人の人間の中に二つの全く異なる人格が交代して現れること。ここでは、ある人物が、場合によって意図的に別人のように振る舞うことを表している。

【ネガティブ】⇒否定的、消極的なさま。

【詮索(せんさく)】⇒細部にわたって詳しく調べること。

【違和感(いわかん)】⇒しっくりこないという感覚。

【極マレに(ごくまれに)】⇒きわめて珍しいさま。「極」とは、程度が並外れたものであることを強調する副詞、「マレ(まれ・稀)」とは、めったになくて珍しいさまを表す。

【談義(だんぎ)】⇒ここでは、意見を言い合い話し合うこと、という意。

【本質(ほんしつ)】⇒そのもののあり方を決定づける本来の性質や要素。

【規定(きてい)】⇒物事のあいまいな内容を、ある一定の形に定めること。

【相互作用(そうごさよう)】⇒互いに働きかけ、影響を及ぼすこと。

【恣意的(しいてき)】⇒思うままに自分勝手に考える、あるいは振る舞うさま。

【矮小化(わいしょうか)】⇒小さくすること。小さいものと捉えること。

【肯定(こうてい)】⇒同意すること。正しく適切であると認めること。

【後(うし)ろめたい】⇒自分の行為に罪悪感があって、気がとがめる様子。

【唯一無二(ゆいいつむに)】⇒ただそれ一つだけしかなく、二つとないもの。

【接頭辞(せっとうじ)】⇒語の上について意味を添えたり、調子を整えたりする語。

【首尾一貫(しゅびいっかん)】⇒始めから終わりまで、一つの方針や態度を貫き通すこと。

【矛盾(むじゅん)】⇒二つの物事のつじつまが合わなくなること。

【序列(じょれつ)】⇒一定の基準によって配列された順序のこと。

【化かし合い(ばかしあい)】⇒悪賢いものどうしが互いにだまし合うこと。

【不当(ふとう)】⇒正当・適当でないこと。道理に合わないこと。

【おとしめる】⇒劣ったものとして扱う。成り下がらせる。

【錯覚(さっかく)】⇒事物を実際の姿とは違ったように知覚すること。ここでは、思い違い、の意。

【主体的(しゅたいてき)】⇒自分の意志と決断によって行動するさま。

【硬直的(こうちょくてき)】⇒状況や方針が変化したにもかかわらず、考え方や態度が変わらないさま。

【喜怒哀楽(きどあいらく)】⇒喜びと怒りと悲しみと楽しみ。広くもろもろの人間的感情を指す。

【変容(へんよう)】⇒姿や形が変わること。

【幻想(げんそう)】⇒現実にはないことをあるかのように思い描いたもの。空想。

【級友(きゅうゆう)】⇒同じ学級の友達。

【囚われる(とらわれる)】⇒ある考え方や価値観などに拘束される。

【プレッシャー】⇒心理的・精神的な圧迫感。

【四六時中(しろくじちゅう)】⇒一日中。いつも。

【そそのかされる】⇒その気になるように促される。

「本当の自分」幻想のテスト対策問題

 

問題0

次の傍線部の語を、送り仮名を含め漢字に直しなさい。

①彼はオダヤカな性格だ。

②相手の気持ちをスイサツする。

③部屋に入るとイワカンを覚えた。

④彼女は動物にクワシイ

⑤社長の訓話は下手の長ダンギとして有名だ。

⑥彼はいつも表情がカタイ

解答①穏やか ②推察 ③違和感 ④詳しい ⑤談義 ⑥硬い
問題1「どちらも一理ある気がした」のはなぜか?
解答例ネットの中の友人の姿を「本当」と捉える理由にも、自分たちがふだん接しているときの友人の姿が「本当」だとする理由にも、それぞれ一応は納得できる理屈があると感じられたため。
問題2「ちょっと抵抗があった。」とあるが、どういうことに対して抵抗を感じたのか?
解答例筆者は、音楽はジャズやクラシックなども好きなのに、雑談でヘビーメタルの話をしたライターに、ブログの中で「本当はメタルマニア」だと自分の本質を他人から規定されるように書かれたこと。
問題3ここでの「コミュニケーション」とは、どの事例を受けたものか?
解答例筆者が小説のインタビューに来ていたライターと、共通の話題であるハードロックやヘビーメタルの話で盛り上がったという事例や、ショパンの好きな人とはショパンの話をし、マイルスが好きな人とはマイルスの話をしたりして楽しんだという事例。
問題4「人間を『分けられる』存在と見なす」とは、どういうことか?
解答例人間を常に首尾一貫した分けられない存在ではなく、対人関係ごとに異なるさまざまな自分に分けられる存在だとすること。
問題5ここで「実体がない」と述べる「本当の自分」とは、どういうものか?
解答例対人関係の中には現れなかった、発揮されるべき自分のすべての可能性を含む自分。
問題6ここで述べる「本当の自分」とは、どういうものか?
解答例対人関係ごとに変わる様々な自分や小説の作品世界などとの相互作用の中で生じる自分など、それぞれ別の顔ではあるが自分自身だと言える存在。
問題7本文は、ある事実を前提にして、そこから導かれる仮説を提示するという展開がなされている。事実に相当する二つの段落と、仮説に相当する段落とを本文中から指摘し、それぞれの要旨をまとめなさい。
解答例

事実1・・・第一形式段落(19・1~9)⇒ふだんは穏やかで口数の少ない友人が、ブログでは饒舌で辛辣な批評をしていて、私の知っている彼とは全く別人のようであった。

事実2・・・第七形式段落(21・6~10)⇒筆者と雑談したライターが、自身のブログの中では筆者の一面だけを取り上げて「本当」の姿だと決めつけて書いていたことに違和感を覚えた。

仮説・・・第十三形式段落(22・14~16)⇒人間にはいくつもの顔があり、相手次第で自然とさまざまな自分になる。

問題81の仮説を強固にするため、一般的な考え方に対する反論がなされている。反論に相当する段落を本文中から指摘し、要旨をまとめなさい。
解答例

第十七形式段落(23・12~15)⇒私たちは誰とも「本当の自分」でコミュニケーションを図ることができなくなり、すべての人間関係が化かし合いになる。それは、他者と自分の両方を不当におとしめる錯覚であり、実感からも遠い。

第十八形式段落(23・16~24・6)⇒分人は相手との相互作用の中で生じるものであり、長い時間をかけたコミュニケーションの中で、さまざまな反応を交換した結果である。その変化を仮面のつけ替えや仮面の変容と説明するのは無理がある。

第十九形式段落(24・7~15)⇒他者と接しているさまざまな分人には実体があるが、「本当の自分」には実体がなく、それは幻想にすぎない。私たちは、どんな相手であろうと、自分のすべての可能性を発揮することはできず、対人関係の中には現れなかった他の可能性としての自分も、もう一つの別の分人にすぎない。

補足「一般的な考え方」とは、人間を「常に首尾一貫した、分けられない存在」だとし、「自我(=「本当の自分)」は一つだけであり、あとは表面的に使い分けられたキャラや仮面、ペルソナ等にすぎない」とする考え方のことを意味する。この事を筆者は「間違っている」とし、三つの理由を挙げて反論している。
問題9最終段落をふまえて、筆者の主張を簡潔にまとめなさい。
解答例分人はすべて「本当の自分」であり、私という人間は対人関係ごとのいくつかの分人によって構成されている。その複数の分人の構成比率によって決定される個性も唯一不変のものではなく、他者の存在なしには生じないものである。
問題10

本文中の説明で用いられている次の表現は、どういうことを述べているか?説明しなさい。

①他人から本質を規定されて、自分を矮小化される

②その人らしさ(個性)というものは、その複数の分人の構成比率によって決定される

解答例

①自分を「本当の姿」だと他人から恣意的に決められて、自分が思っているよりも小さなものとして捉えられること。

②人間は対人関係ごとに表れたいくつかの分人の集まりと考えることができるため、その人の個性はそれぞれの分人の占める割合によって決まるということ。

まとめ

 

以上、今回は「本当の自分」幻想について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。

The following two tabs change content below.

国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。