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言語と記号 解説 200字要約 あらすじ 学習の手引き 簡単に

 

『言語と記号』は、高校国語・現代文で学ぶ評論です。丸山圭三郎という作者によって書かれたもので、教科書にもたびたび取り上げられています。

ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張などが難しいと感じる人も多いと思われます。そこで今回は、『言語と記号』のあらすじや要約、学習の手引きなどをなるべく簡単に解説しました。

『言語と記号』のあらすじ

 

あらすじ

私たちの日常生活は記号だらけである。数学の演算記号、交通信号、モールス信号、地図の標識といった典型的なものに限らず、人の表情やジェスチャー、衣服やアクセサリーなども記号と見なすことができる。記号とは「自分とは別の現象を告知したり指示したりするもの」であり、特定文化内の儀礼、音楽、絵画、建築なども広義の記号性を免れていない。また、「言語も記号の一つ」と考えられる。

言語記号も他の一般記号と同じく、言語以前の事物や概念の存在を前提とするとされてきた。しかし、同じ記号と呼ばれてはいても、言語記号とその他一切の記号類との間には、本質的な違いがありはしまいか。例えば、メルロ・ポンティの考えや古代神話の世界では、名は事物の本質であって事物そのものが名付けられることによって認識され、別々のものとして分けられ、存在を開始するとされる。したがって、言語記号の「名付ける」という行為は、一次的にはそれまで分節されなかった観念や事物に区切りを入れて、これを存在させていく根源的作用であり、二次的にはそのようにしてつくられた存在にラベルを貼る作用だと言える。

言語記号の根源的作用には、言語が可能にした思考によって道具がつくられ、その道具類やそれを用いた生産活動が、新たな世界をつくり出すというはたらきも含まれている。道具の使用は宇宙の秩序が人間の介入を許し、また、道具を変えることで、外界を変化させ、自分たちの世界像や世界観も変えていく。人間が道具によって作り出した、風や水、空間などの身近な違いが、そのまま世界観の違いや人間関係の把握の違いに通づるのも、世界と意識の相互差異化がもたらす結果と言えるだろう。

『言語と記号』の要約解説

 

要約私たちの日常生活は記号だらけであり、言語も記号の一つである。ただ、同じ記号といっても言語記号とその他一切の記号とは本質的な違いがある。言語記号は指向対象を生み出し、言語外現実を解釈して世界と主体との意識を差異化する。名というのは事物の本質であり、事物そのものが名とともに初めて分節され、存在を開始する。言語は道具類の使用を可能にすることで、外界を変化させ、自分たちの世界像を変えることもできるのだ。(199文字)
ポイント

本文で注目すべきは、「言語によって名付けられることで、事物が存在する」というものです。

私たちは通常、「ある事物がまず存在し、それに対して人間が名前を付ける」と考えがちです。しかし、筆者はそうではないのだと主張します。

筆者は、「事物」というのは、言葉によって名付けられることで初めて存在するのだと述べています。この事を本文中では、「名というのはむしろ事物の本質であって、事物そのものが名とともに初めて分節され、存在を開始する」と書かれています。

例えば、日本語では「犬」と「狸(たぬき)」は別の動物であるかのような意識がありますが、フランス語だと両者はどちらも「chien」と呼びます。

「犬」と「狸」という別の名前を付けられることにより、初めてその二つの動物は別の動物として存在を始めることができます。

つまり、名づけというのはこの世界に対する一つの解釈でありお互いを差異化するものであり、その事により人間の主体の意識の方も差異化されるということです。

初めからこの世界は分けられているのではなく、名づけ(言語)によってこの世界は分けられている、という筆者の主張を読み取るのがポイントとなります。

『言語と記号』のテスト問題対策

 

問題0

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①地図のヒョウシキ

②問題の本質をツイキュウする。

ゼンテイとなる条件。

カッショクの肌。

カイニュウを許さない。

⑥責任をまぬかれない。

⑦故国をしたう。

⑧我が子のようにいつくしむ。

⑨物をかくす。

⑩権利をうばう。

⑪口にふくむ。

解答①標識 ②追究 ③前提 ④褐色 ⑤介入 ⑥免 ⑦慕 ⑧慈 ⑨隠 ⑩奪 ⑪含
問題1①「同一の意味を送り返す」②「微妙な差異が生じてくる」のは、それぞれどういう記号か?
解答①言語記号以外の一才の記号類 ②言語記号
問題2そうしてみると、「存在が名称に先立つ。」という結論を軽々に下すわけにはいかないだろう。とあるが、なぜ「結論を軽々に下すわけにはいかない」のか?
解答例「犬」と「狸」が同じ一語のもとにくくられる言語もあるように、「犬」という名称があって初めて「犬」という存在が成り立つとも言えるから。
問題3これを存在せしめる根源的作用であり、とあるが、なぜ「根源的」と言えるのか?
解答例「言葉によって世界が分節され、事物が生まれる」という作用が、文化を生み出し、道具をつくるということのおおもととなっているため。
問題4「うちわが分節する」とは、どういう意味か?
解答例うちわという道具が、新しい風をつくり出すという意味。
問題5

次のそれぞれの例を通して、筆者はどのようなことを説明しているか?

①赤信号の例と「愛」の例

②ポチと犬の例

③犬と狼の例

解答例

①「赤信号」のような記号は常に同じ意味を送り返すのに対し、「愛」のような言語記号は、様々な状況によって微妙に意味内容が異なるということ。

②「犬」に「ポチ」と名付けるのは、できあがっている事物や観念の上に名前を貼り付けることになるということ。

③日本語では「犬」と「狸」を分けるが、両者を同じ語で表す言語もあるように、個々の言語によって意味内容のくくり方が違うということ。

問題6

次の部分はそれぞれどのようなことを述べているか?

①特定文化内の儀礼、音楽、絵画、彫刻、演劇、建築なども、広義の記号性を完全には免れていない。

②「名が対象と同じ力を持つ、もしくは対象を出現させる。」

③世界が差異化されると同時に、主体の意識のほうも同様に差異化される。

解答例

①ある特定の文化圏の中では当然価値観を同じくするため、例えば、ハトの彫刻から平和のメッセージを受け取ることができるように、そのものとは別の現象を告知したり指示したりする点で、広い意味では記号の役割を果たしているということ。

②「熊」なら「熊」という名を口にすると、本物の「熊」が現実に出現して害をなすので、「蜂蜜」「褐色のもの」などと言い換えたように、「熊」のような名というのは現実の「熊」と同じ力を持ち、現実に出現したのと同じになるということ。

③言葉によってそれまで分節されていなかった世界に区切りが入れられ、事物や観念がつくられると、同時に主体である人間にとっても、そのような事物や観念がすでに存在していたかのような意識が作られる、ということ。

問題7「言葉が可能にした思考によって道具一般が製作され、その道具類やこれを用いる生産活動が、世界を作り出す。」とはどのようなことか、具体的な例を挙げて説明しなさい。
解答例「人間の移動」を例にすると、人はもともと徒歩で移動していたため、持てる荷物や移動できる空間も限られていた。そこで多くの事物や観念を分節して認識・命名した言葉を組み合わせて使用することで、道具を考え出した。まず、既存の事物である馬と車輪の組み合わせで「馬車」を生み出した。そして、さらなる効率化を求めて、車輪や馬や人間の労力がいらない動力、例えば自動車や機関車などを考えるようになった。この事で、大量の物資をはるかに遠くへ運搬することもできるようになった。自動車や機関車という道具を用いた生産活動は、当然大きな生産空間に広がり、活発化することになった。生産空間の拡大や生産活動の活発化は、それまでとは異なった新しい世界を作り出すことが可能となったのである。

まとめ

 

以上、今回は『言語と記号』について解説しました。学校の授業だけでは分かりにくい箇所もあるかと思われます。ぜひこの記事を見直して復習して頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

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