「助詞」と「助動詞」は、中学や高校の文法の授業で習う言葉です。受験においても必須の内容となっています。
ただ、この二つの違いが分かりにくいと感じる人は多いと思われます。そこで今回は、「助詞」と「助動詞」の覚え方や見分け方などをなるべくわかりやすく解説しました。
助詞・助動詞とは
まずは全体像を理解するために、以下の図をご覧ください。
「単語」というのは、全部で10種類あります。この内、「助詞」と「助動詞」はともに「付属語」です。
「付属語」とは「それだけでは意味が分からない語」のことを指します。逆に、「それだけで意味が分かる語」のことを「自立語」と言います。
そして、「助詞」と「助動詞」の違いを簡単に言うと「活用があるかないか」だと言えます。
「助詞」は「活用がない」語ですが、「助動詞」は「活用がある」語です。「活用」とは「単語の後ろが変化すること」だと考えて下さい。
例えば、「私はからあげを食べたい」という文があったとします。
この文を「文節」に分けると、次のようになります。
「私は/からあげを/食べたい」
さらに「自立語」と「付属語」に分けると次のようになります。
「私/は/からあげ/を/食べ/たい」
すると、単語の種類は以下のようになります。
- 「私・からあげ」⇒「名詞」
- 「は・を」⇒「助詞」
- 「食べ」⇒「動詞」
- 「たい」⇒「助動詞」
なぜ、「たい」が「助動詞」かと言うと後ろの形が変化する場合があるからです。
例えば、後ろに「ない」をつけると「食べたくない」となり、語尾が「たい」→「たくない」と変化します。
このように、変化することのできる付属語を「助動詞」と言うわけです。
逆に、「は」や「を」は語尾が変わるということはないため、これらの語は「助詞」と判断できるわけです。
基本的には、「助詞」と「助動詞」の違いは「活用のあるなし」で判断していきます。
ただし、実際にはこれほど簡単な問題は出題されません。なぜかと言いますと、どちらも細かい分類がされているからです。
したがって、それぞれの種類をどれだけ覚えられるかが両者を見分けるポイントとなってきます。
ではさっそく、それぞれの種類を見ていきましょう。
助詞の種類
まずは、「助詞」についてです。「助詞」は、次のように全部で4種類あります。
①格助詞(かくじょし)
②接続助詞(せつぞくじょし)
③副助詞(ふくじょし)
④終助詞(しゅうじょし)
①「格助詞」の特徴
- 全部で10語ある。
- 主に名詞の後ろにつく。
- 文節の関係を示す。
- 並立・対象・手段・相手・主語などを示す。
「格助詞」は全部で10語だけなので、次のように丸暗記してしまうのがよいでしょう。
「を・に・が・と・より・で・から・の・へ・や」
覚え方としては、「鬼が戸より出、空の部屋」の語呂合わせが有名です。
【例文】
- 友達と海へ行く。(「と」は「相手」、「へ」は「対象」を示す)
- ナイフで肉を切る。(「で」は「手段」、「を」は「対象」を示す)
- ペンと紙を買う。「と」は「並立」、「を」は「対象を示す」
②「接続助詞」の特徴
- 前後の文や文節をつなぐ。
- 順接・逆接・並立などがある。
【と・が・て・のに・けれども】など。
【例文】
- 気がつくと、夜だった。(順接)
- 早く起きたが、遅刻した。(逆接)
- 強くて、やさしい。(並立)
「接続助詞」は文の中間に来て、後ろに「、」がつくことがほとんどです。言い換えれば、途中で文が途切れるような形になるということです。
③「副助詞」の特徴
- 強調・限定・程度などを示す。
- 例示・添加・題目などを示す。
【は・も・こそ・さえ・のみ・くらい】など。
【例文】
- 今日こそ勝とう。(強調)
- あなたのみ許す。(限定)
- 半分くらい終わる。(程度)
- 本でも読もう。(例示)
- デザートまで食べた。(添加)
- 私は行きました。(題目)
「添加(てんか)」とは「何かを加える」という意味です。最後の「題目」は、話題を添えるような時に使います。
主語を示す「は」は、格助詞ではなく「副助詞」になるのがポイントです。
④終助詞の特徴
- 文や文節の最後にくる。
- 疑問・感動・禁止などを表す。
【か・なあ・わ・よ・な】など。
【例文】
- 本当にこれでよいのか。(疑問)
- とてもすばらしいわ。(感動)
- 午後は外に出るな。(禁止)
「終助詞」は、文字通り「文の終わり」に来る語なので一番分かりやすいです。他の助詞と間違えるようなことも少ないです。
以上が、すべての「助詞」となります。「助詞」の特徴としては、次のようなものが挙げられます。
- 自立語の後に来る。
- 活用しない。
- 文や文節の関係を示す。
- 語句に意味を添える。
助動詞の種類
続いて、「助動詞」です。「助動詞」は全部で18語あり、10種類に分かれます。
①受け身・自発・可能・尊敬⇒「れる・られる」
【例文】
- 友人に笑われる。(受け身)
- 昔が思い出される。(自発)
- 野菜を食べられる。(可能)
- 社長が来られる。(尊敬)
②使役⇒「せる・させる」
「使役(しえき)とは「人に何かをさせる」という意味です。
【例文】
- 買い物に行かせる。
- 友達を集めさせる。
③希望⇒「たい・たがる」
【例文】
- 早く帰りたい。
- 肉を食べたがる。
④否定⇒「ない・ぬ(ん)」
【例文】
- テレビを見ない。
- 私は戦わぬ。
⑤推量・意思・勧誘⇒「う・よう」
【意味】
- 「推量」⇒「~だろう」
- 「意思」⇒「~するつもりだ」
- 「勧誘」⇒「~しようよ」。
【例文】
- 彼は強いだろう。(推量)
- お金を稼ごう。(意思)
- 一緒に遊ぼう。(勧誘)
⑥過去・完了・存続・想起⇒「た(だ)」
【意味】
- 「過去」⇒「すでに~した」
- 「完了」⇒「ちょうど~した」「ついに~した」
- 「存続」⇒「ずっと~している」
- 「想起」⇒「(確か)~だった」
【例文】
- 昨日は10時に寝た。(過去)
- ご飯を食べ終わった。(完了)
- 赤く塗った壁。(存続)
- そうだ。今日は僕の誕生日だった。(想起)
「存続(そんぞく)」とは「動作はすでに終わったけども、その状態が今も続いている」という意味です。また、「想起(そうき)」とは「確認すること」という意味です。
⑦丁寧⇒「ます」
【例文】
- 本を読みます。
この場合、普通の言い方だと「本を読む」ですが、そうではなく、もっと丁寧な言い方をするような場合に「動詞」の後ろにつけて使います。
⑧断定⇒「だ・です」
「断定(だんてい)」とは「はっきりと言いきる」という意味です。
【例文】
- 彼は高校生だ。
- ここは家です。
「断定」の助動詞は、「形容動詞の語尾」と間違えやすいので注意が必要です。
【例】⇒とても静かだ。(形容動詞)
直前に様子を表す言葉がきたら、「形容動詞」を疑いましょう。「助動詞」の場合は直前に「名詞」や「動詞」が来るのが特徴です。
⑨推定・伝聞・様態・比喩⇒「らしい・ようだ・そうだ」
【意味】
- 「推定」⇒「どうやら~のようだ」
- 「伝聞」⇒「~と聞いている」
- 「様態」⇒「~という様子だ」
- 「比喩」⇒「まるで~のようだ」
【例文】
- もう出発するらしい。(推定)
- 彼は合格したようだ。(伝聞)
- いよいよ始めそうだ。(様態)
- 雪のように白い肌だ。(比喩)
⑩否定の推量・意思⇒「まい」
【意味】
- 「否定の推量」⇒「~しないだろう」
- 「否定の意思」⇒「~しないつもりだ・~しないぞ」
【例文】
- たぶん雨は降るまい。(否定の推量)
- 二度と遅れまいと決心する。(否定の意思)
以上の18語が、すべての「助動詞」となります。「助動詞」の特徴としては次のようなものが挙げられます。
- 自立語の後に来る。
- 活用する。
- 受け身や使役・否定などを表す。
- 話し手や書き手の判断を添える。
「助動詞」は数が多くて大変ですが、どれも覚えるべき大事な内容と言えます。
練習問題
では、今までの内容を理解できたか確認しておきましょう。以下に、練習問題を用意しました。
①「助詞」は、【(ア)自立語(イ)付属語 】で、【(ア)活用する(イ)活用しない】
②「助動詞」は、【(ア)自立語(イ)付属語 】で、【(ア)活用する(イ)活用しない】
③「助詞」は、全部で【(ア)3(イ)4(ウ)5(エ)6 】種類に分けられる。
①⇒(イ)・(イ)②⇒(イ)・(ア)③⇒(イ)
次の下線部の「助詞」の種類を(ア)~(エ)の4つの中から選びなさい。
(ア)格助詞(イ)接続助詞(ウ)副助詞(エ)終助詞
①彼はおだやかだ。
②金と銀を持つ。
③疲れたので、寝る。
④明日はどこへ行きますか。
⑤自分のスマホが欲しいです。
①⇒(ウ)②⇒(ア)③⇒(イ)④⇒(エ)⑤⇒(ア)
主語を示す「は」は「副助詞」でした。
「格助詞」は「鬼が戸より出、空の部屋」の中から探しましょう。
次の下線部の「助動詞」の意味を答えなさい。
①犬がワンと吠えた。
②海にいこうよ。
③明日は早く来ようと思う。
④彼はやめるそうだ。
⑤社長があいさつをされる。
⑥間もなく車が来ます。
⑦真相は誰にも分かるまい。
①⇒「過去」②⇒「勧誘」③⇒「意思」④⇒「伝聞」⑤⇒「尊敬」⑥⇒「丁寧」⑦⇒「否定の推量」
次の下線部の「助詞の種類」と「助動詞の意味」を答えなさい。
①旅行に行く予定だ。
②肉を食べます。
③探したが、見つからない。
④夏休みに富士山に登りたい。
⑤今年の梅雨は、長引くらしい。
①「に」⇒「格助詞」「だ」⇒「断定の助動詞」
②「を」⇒「格助詞」「ます」⇒「丁寧の助動詞」
③「が」⇒「接続助詞」「ない」⇒「否定の助動詞」
④「に・に」⇒「格助詞」「たい」⇒「希望の助動詞」
⑤「の」⇒「格助詞」「は」⇒「副助詞」「らしい」⇒「推定の助動詞」
次の文中から「助詞」か「助動詞」を抜き出し、意味と種類も答えなさい。
①友人に笑われる。
②私は社会人だ。
③国語の試験があった。
④道路で遊ぶな。
⑤楽しい本を読ませる。
⑥高いので、無理だろう。
⑦雨が降りそうだ。
①「に」⇒「格助詞」「れる」⇒「受け身の助動詞」
②「は」⇒「副助詞」「だ」⇒「断定の助動詞」
③「の・が」⇒「格助詞」「た」⇒「過去の助動詞」
④「で」⇒「格助詞」「な」⇒「終助詞」
⑤「を」⇒「格助詞」「せる」⇒「使役の助動詞」
⑥「ので」⇒「接続助詞」「う」⇒「推量の助動詞」
⑦「が」⇒「格助詞」「そうだ」⇒「様態の助動詞」
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「助詞」=活用のない付属語。①格助詞②接続助詞③副助詞④終助詞の4種類。
「助動詞」=活用のある付属語。①受け身・自発・可能・尊敬②使役③希望④否定⑤推量・意思・勧誘⑥過去・完了・存続・想起⑦丁寧⑧断定⑨推定・伝聞・様態・比喩⑩否定の推量・意思の10種類。全部で18語ある。
「見分け方」=基本は活用のあるなしで判断し、後はできるだけ種類を覚えておく。
見分けるポイントは「いかに多くの種類を覚えておくか」ということでした。文法は極論を言えば「暗記」です。分からない場合は、教科書の付録にある「活用表」などを見て常に確認するようにします。そうすれば、次第に頭に入り両者を区別できるようになるでしょう。