部長や課長などの目上の人についていくことを「随行」あるいは「同行」と言います。さらに、場合によっては「帯同」などと言うこともあります。
これらの言葉は、一体どう使い分ければよいのでしょうか?本記事では「随行」と「同行」の違い、さらに「帯同」についても解説しました。
随行の意味
まずは、「随行」の意味からです。
【随行(ずいこう)】
⇒地位の高い人や目上の人につき従って行くこと。また、その人。おとも。随伴。
出典:三省堂 大辞林
「随行」とは「地位の高い人や目上の人に付き従って行くこと」を意味します。例えば、以下のように使います。
- 社長に随行する。
- 首相に随行する。
前者は企業のトップ、後者は国のトップを指します。このように、地位や身分の高い人に従って、一緒に付いて行くような行為を「随行」と言うわけです。
「随行」の「随」という字は、「随意」「付随」などの熟語があるように「したがう」という意味を持っています。すなわち、「自分よりも偉い人の命令を聞く」という意味です。
ここから、「目上の人に付いて行き、行動を共にする」という意味になるわけです。
同行の意味
続いて、「同行」の意味です。
【同行(どうこう)】
⇒一緒に連れ立って行くこと。また、その人。
出典:三省堂 大辞林
「同行」とは「一緒に連れ立って行くこと」もしくは「連れて行く人」を意味します。例えば、以下のように使います。
- 彼の旅行先に同行する。
- 部下の営業に同行する。
「同行」は、「身分が同じ」もしくは「下の相手」に対して使われる言葉です。上記の例文だと、「(彼女が)彼についていく」「(上司が)部下についていく」といった意味になります。
「同行」の語源も確認しておくと、「同」は文字通り「同じ」、「行」は「ついて行く」という意味です。つまり、本来の意味としては「同じ相手と一緒に行くこと」となります。
したがって、「同行」する相手というのは、お互いの主従関係が意識されていない者になるわけです。
随行と同行の違い
ここまでの内容を整理すると、
「随行」=地位の高い人や目上の人に付き従って行くこと。
「同行」=一緒に連れ立って、付いて行くこと。
ということでした。
両者の違いは、二つの点から比較すると分かりやすいでしょう。
一つ目は、「目上の人に付いて行くかどうか」です。
すでに説明した通り、「随行」は「自分より身分の高い人に付いて行く」という意味でした。したがって、「随行」の場合は社長や大統領、首相など目上の人かつ地位の高い人が対象となります。
一方で、「同行」は「単に一緒に付いていく」という意味でした。したがって、こちらは目上の人に付いていくようなことはありません。単に自分の友人であったりあるいは自分の部下であったり、目下の人に付いていくことを表します。
二つ目は、「意味の範囲」です。
「随行」は、ビジネスや政治など改まった場面でしか使いません。言いかえれば、「狭い用途の限定的な言葉」ということです。
一方で、「同行」の方はビジネスや政治はもちろんのこと日常生活でもよく使います。つまりこちらは「広い用途を持った言葉」ということです。「同行」は、広く一般に行動を共にするような場合に使うのです。
以上まとめますと、
「随行」=目上の人が対象。(狭い用途)「同行」=上下関係はなし。(広い用途)
となります。
なお、場合によっては身分の高い人に対しても「同行」を使うことがあります。例えば、以下のような使い方です。
「社長に同行して取引先に向かう。」
この場合は、同行者が社長にとって重要な役割を担うような場面で使われます。具体的には、副社長が企画説明をしたり、部長が商品のプレゼンをしたりといったケースです。
このように、同行者の任務が非常に重要で、なおかつ両者の上下関係があまり意識されないような場合は「同行」を使うこともあります。ただし、基本的には「付いていく相手の身分が高いか低いか?」で使い分けて問題ありません。
帯同の意味
似たような言葉で、「帯同」があります。
【帯同(たいどう)】
⇒一緒に連れて行くこと。
出典:三省堂 大辞林
「帯同」とは「(誰かを)一緒に連れて行くこと」を意味します。例えば、以下のように使います。
- 部下を帯同して現地に向かう。
- リーダーとして社員を帯同させる。
「帯同」は「付いていく」のではなく、「連れていく」という点がポイントです。つまり、あくまでメインは自分でサブとして誰かを連れていくということです。
この時点で、自分がサブであった「随行」や「同行」とは異なる言葉である事が分かるでしょう。
また、「帯同」は目下の者を連れていく際に使うことがほとんどです。「連れて行く」という意味の通り、自分より同格もしくは目下の者に対して使います。
とは言え、「帯同」はそこまで上下関係は意識する必要はありません。あくまで、「自分中心に移動する時に使う言葉」ということになります。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【随行の使い方】
- 部長の営業に私も随行するようにと言われました。
- 社長に随行することが決まったので、すぐに準備します。
- 明日からの大統領の外遊に、随行することになった。
- 〇〇外務大臣は、首相の訪米に随行する予定です。
- 取引先との接待があり、会長に随行することになった。
【同行の使い方】
- 子供たちの遠征先に、先生も同行するみたいです。
- 選手に同行していたスタッフも全員集まりました。
- 妻の北海道旅行に私も同行しようと思っています。
- 職務質問後に、警察から任意で同行を求められた。
- しばらくは、部下の仕事に同行するつもりでいます。
【帯同の使い方】
- 修理担当の者を帯同し、顧客の自宅へと向かいます。
- シーズンを通して一軍に帯同し、結果を残した。
- 地方営業に、部下たちも帯同させることになった。
ビジネスでは、「随行」という言葉が主に使われます。逆に、一般的な用例としては「同行」を使うことの方が多いです。
「随行」は、限られた地位の人に対して使う傾向が強いです。そのため、日常生活ではほぼ使わない言葉と考えて問題ありません。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「随行」=地位や身分の高い人に、付き従って行くこと。
「同行」=身分が同じか下の相手に、付いて行くこと。
「違い」⇒「随行」は目上の人を対象とし、限られた用途で使う。「同行」は上下関係の対象はなく、広く一般的な用途で使う。
「帯同」=(自分がメインで誰かを)一緒に連れて行くこと。
「随行」は目上の者に付き従うのに対し、「同行」は目下もしくは同格の人に付いていきます。「帯同」に関しては、自分と共に誰かを連れて行くことだと覚えておきましょう。