支度 仕度 違い 使い分け 意味

「したく」を漢字で書く場合、二つの書き方があります。

「出張の支度をする」「夕食の仕度をする」

両方ともビジネスシーンでよく見ますが、どちらを使えばよいのかという疑問があります。そこで本記事では、「支度」と「仕度」の違いについて詳しく解説しました。

支度・仕度の意味

 

まず、「したく」の意味を調べると次のように書かれています。

【支度/仕度(したく)】

予定されている物事を実行するのに必要なものをそろえること。準備。用意。

外出するために身なりを整えること。身じたく。

食事をすること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

上記のように、「支度」と「仕度」は一つの項目として載せられています。つまり、辞書としての意味はほぼ変わらないことになります。

主な意味としては、二つ挙げられます。一つ目は、「準備や用意をすること」という意味です。

【例】

  • 出張のしたくをする。
  • 食事のしたくをする。

この場合は、事前に必要なものをそろえて準備するような際に使われます。

そして二つ目は、「身なりを整えること」という意味です。

【例】

  • じたくをする
  • じたくをする。

この場合は、外出前の準備をするような時に使います。特に「服装や持ち物などをそろえる」という意味で使います。

「支度」と「仕度」は、どちらもこの二つの意味で使われることがほとんどです。では、大まかな意味が分かった所で両者の違いを詳しくみていきたいと思います。

支度と仕度の違い

 

すでに説明した通り、両者の意味自体に違いはありません。では何が違うのかと言いますと、「漢字の種類」が異なります。

まず、「支度」は漢語です。漢語とは「中国で生まれた漢字本来の言葉」を表します。

一方で、「仕度」の方は当て字です。当て字とは「漢字本来の意味を無視して作った字が、一般的に広まったもの」を表します。

もっと簡単に言えば、「当て字」=「日本で生まれた独自の言葉」と言い換えても構いません。つまり、漢字本来の歴史から言えば「支度」の方が正式な漢字ということです。

元々、「支度」という字は「支」も「度」も「計る・見積もる」という意味を持っていました。転じて、「予定を立てる・準備をする・身じたく」などの意味になったわけです。

対して、「仕度」の方は「仕事」や「仕舞」などの「仕」と同じ漢字です。ここから、仕事の準備や用意を簡略化するために「支度」が使われるようになったと言われています。

身近な言葉でもこのような例は多くあります。例えば、スポーツをする際の「しあい」は元々「仕合」と書いていましたが、現在では「試合」と書きます。

「しあい」は、本来は「〇〇しあう」から来た言葉で「試」という字は当て字の一種です。意外かもしれませんが、「試合」ではなく「仕合」が正式な漢字なのです。

支度と仕度の使い分け

支度 仕度 違い 使い分けは

以上の事から考えますと、両者の使い分けは「原則として支度の方を使う」ということになります。

まず、新聞やテレビなどのメディアは「支度」を使うことで統一しています。逆の言い方をするなら、「仕度の方は使わない」ということです。

これは、すでに説明した通り、「支度」の方が正式な漢字だからと言えるでしょう。

メディアというのは、漢字の混同を嫌います。そのため、まぎらわしい漢字がある場合は一つに統一するのです。

一般的には、他の業界もメディアに合わせて「支度」を使う傾向にあります。例を挙げますと、役所などが使う公文書でも「支度」で統一しているようです。

また、ビジネスシーンでも「支度」を使うことが多いです。特にメールや書類などでは礼儀やマナーが求められます。

もしも相手に送る言葉がコロコロ変わっていては企業の信頼にも関わります。そのため、相手に混乱や誤解を与えないためにも「支度」で統一して使っているわけです。

ただ、「仕度」の方を100%否定・排除する必要はありません。あくまで、内閣や国語辞典などが「支度」を推奨しているという話です。普段の文章や手紙すなわち私文書に関しましては、どちらを使っても問題ないことになります。

一般に辞書の暗黙のルールとして「先頭(左側)の漢字を優先的に用いる」というものがあります。この原則に従うならば、「仕度」ではなく「支度」を用いることになります。

現在の辞書だと「支度→仕度」の順で書かれているものがほとんどです。「仕度→支度」の順で掲げられたものは見当たりません。その理由は、「仕度」の方は当て字だからだと言えます。

使い方・例文

 

最後に、「したく」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. 14時には取引先に向かうので、それまでに支度をしておきます。
  2. 旅支度は面倒ですが、できれば本日中に終わらせておいてください。
  3. 持っていく書類や荷物をそろえて、早く支度をしておきましょう。
  4. 出張の支度に追われているので、朝からとても忙しい状況です。
  5. 支度がよろしければ、そろそろ御案内をいたしましょう。
  6. もうすぐ出かけるので、早く身支度をしておくようにお願いします。
  7. 5時なので夕食の支度をして、洗濯物も取り込まないといけない。

 

「支度」は、主にビジネスシーンにおいて使われます。ただ、「前もって備える」ということは、すべての行動をとるための基本です。そのため、ビジネスシーン以外でも使える言葉だと言えます。

なお、「したく」は「準備」や「用意」などの言葉で言い換えることもできます。全くの同義語ではないですが、近い意味を持った言葉です。したがって、もしもどちらを使うか迷った場合はこれらの言葉で代用しても構いません。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

支度・仕度」=①準備や用意をすること。身なりを整えること。

【違い】⇒「支度」は漢語だが、「仕度」は当て字。

【使い分け】⇒メディアが「支度」を推奨しているため、原則として「支度」を用いる。

日常生活ではどちらも使うことができます。「仕度」の方を使っても誤りというわけではありません。ただ、ビジネスや公文書などでは「支度」を使うようにしましょう。