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村上春樹  鏡 本文解説 教科書 問題 授業 テスト

 

『鏡』は、村上春樹による有名な小説文です。そのため、高校教科書『現代の国語』にも採用されています。

ただ、本作の内容やテーマなどが分かりにくい部分もあります。そこで今回は、『鏡』のあらすじや語彙、テスト対策などを含め簡単に解説しました。

『鏡』のあらすじ

 

あらすじ

①僕はもう三十何年と生きているけれど、幽霊なんて一度も見たことがない。また、予知夢や虫の知らせなども経験したことがない。二人の友だちと一緒にエレベーターに乗っていて、女の幽霊が僕のわきに立っていたと言われた時も僕はまったく気づかなかった。でも、僕にも一度だけ、心の底から怖いと思ったことがある。主人(ホスト)としてみんなの体験談を聞いていた僕は、思い切って話してみることにした。

②六〇年代末の学園紛争の頃、僕は大学に進むことを拒否し、何年間か肉体労働をしながら日本中をさまよっていた。放浪の二年めの秋に、僕は二か月ばかり中学校の夜警をやった。新潟の小さな町のある中学校である。昼間は用務員室で寝て、夜中になってから全校舎を二回チェックする仕事である。夜中に学校で一人きりだったが、十八、十九の頃だったので、ちっとも怖くなんてなかった。

③それは十月の初めの風の強い夜だった。僕はいつも通り用務室で午前三時に起きた時、すごく変な気がした。校舎の見回りの途中で玄関を通り過ぎた時、鏡の中に映っている自分を見た。その姿は、「僕以外の僕」であり、心の底から僕を憎んでいることが理解できた。僕はしばらくのあいだ呆然として立ちすくんでいた。やがて、鏡の中の僕が僕を支配しようとしてきた。僕は木刀を思い切り投げつけて鏡を割り、部屋に駆け込み、ドアに鍵をかけて布団をかぶった。

④太陽が昇る頃には台風はもう去っていた。僕は玄関に行ってみたが、そこには鏡はなかった。もちろん鏡なんてはじめからなかったのだ。僕はあの夜味わった恐怖だけはいまだに忘れることができないでいる。人間にとって、自分自身以上に怖いものがこの世にあるだろうかといつも思う。ところで、この家に鏡が一枚もないことに気づいただろうか。

『鏡』の意味調べノート

 

【虫の知らせ(むしのしらせ)】⇒よくないことが起こりそうであると感じること。

【予知夢(よちむ)】⇒将来のことを予測するような夢。また、夢の中での出来事が現実に起こる現象のこと。

【かつぐ】⇒からかって人をだます。漢字だと「担ぐ」と書く。

【散文的(さんぶんてき)】⇒詩情に乏しいさま。無趣味でおもしろみのないさま。

【一連(いちれん)】⇒関係のあることのひとつながり。

【体制打破(たいせいだは)】⇒現状の政治や社会の仕組みを打ち破ること。

【若気の至り(わかげのいたり)】⇒若さの勢いやノリで、無分別な行いをしてしまうこと。

【放浪(ほうろう)】⇒あてもなくさまよい歩くこと。

【夜警(やけい)】⇒夜、見回って火災や犯罪などの警戒をすること。また、その役目の人。

【裁縫(さいほう)】⇒布地を裁(た)って、衣服などに縫いあげること。針仕事。

【講堂(こうどう)】⇒学校・官庁・会社などで、儀式を行ったり講演や講義などを行ったりする建物または広間。

【寝込み(ねこみ)】⇒眠っている最中。「寝込みを襲われる」で、「眠っている間に襲われる」という意味。

【懐中電灯(かいちゅうでんとう)】⇒携帯用の小型電灯。

【木刀(ぼくとう)】⇒木で作った刀。

【一目散(いちもくさん)】⇒わき目もふらず、一心に走る様子。

【意を決する(いをけっする)】⇒思いきって決心する。覚悟を決める。

【一服(いっぷく)】⇒茶やタバコを一回のむこと。

【呆然(ぼうぜん)】⇒気ぬけしてぼんやりとしたさま。あっけにとられるさま。

【立ちすくむ】⇒驚きや恐怖によって、立ったまま動けなくなる。

『鏡』の本文&テーマ解説

 

主人公である「僕」は、新潟の小さな町のある中学校で、夜警をしていたときの体験談を語ります。

僕は、深夜の校舎の見回りをした時に、「鏡」の中に映っている自分を発見します。ところが、その鏡に映っている「僕」は、自分とは別の存在で、心の底から僕を憎んでいる存在であることが分かります。

僕を憎んでいる理由は、現在の僕は以前とは正反対の立場になったからだと言えます。現在の僕は、以前のような時代や体制のあり方に疑問を持ち反発するのではなく、今の楽な生活に安住している人物だからです。

この作品は、自分が認識していない自分を突然見る恐怖を、一人称の語り形式で進めており、自己存在の背後に潜む感覚を描き出しています。

最後の段落の「人間にとって、自分自身以上に怖いものがこの世にあるだろうか」という箇所はまさに筆者の思いを象徴しています。

幽霊でもなく超常現象でもなく、誰の内面にも潜んでいる恐怖について読者に語りかけているのが本作の特徴だと言えます。

『鏡』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①人間の力をチョウエツした技術。

ヒガタに立って海を見る。

③政界と財界がユチャクする。

チカク変動の調査をする。

カイチュウ電灯を持っていく。

解答①超越 ②干潟 ③癒着 ④地殻 ⑤懐中
問題2「そういうのが正しい生き方だと思ってた。」とあるが、どのような生き方か?本文中の語句を用いて50文字以内で説明しなさい。
解答例体制に従うことなく、大学に進むことも拒否し、肉体労働をしながら日本中をさまよって暮らすような生き方。(50文字)
問題3「その夜はいつもより急ぎ足で廊下を歩いた」とあるが、僕がこのような行動をとったのはなぜか?100文字以内で答えなさい。
解答例三時に時計のベルが鳴った時、すごく変な気がして見回りたくないという感じがし、意を決して見回りにいったが、プールの仕切り戸の音が異様に感じられたので、早く用務員室に戻りたいという意識が強くなったから。(99文字)
問題4「昨日の夜」とは、具体的に何時のことを指すか?本文の流れを読み取った上で答えなさい。
解答昨日の午後九時。
補足「昨日の夜まではそんなところに鏡なんてなかった」という箇所から、「昨日の夜」に見回りをした時間(午後九時)であることが分かる。
問題5「でもその時ただひとつ僕に理解できたことは、相手が心の底から僕を憎んでいるってことだった。」とあるが、なぜ僕はこのように考えたのか?50文字以内で答えなさい。
解答例鏡の中の「僕」は、体制側の立場で実直に生きている現在の「僕」を許すことができないのだと考えたため。(49文字)
問題6「人間にとって、自分自身以上に怖いものがこの世にあるだろうか」と僕が主張するのはなぜか?体験談を語る前に、「僕という人間は幽霊だって見ないし、超能力もない。」と僕が述べたことを踏まえた上で、120字以内で説明しなさい。
解答例自分の中に普段は押し殺されて気づかない感情を持つことは、幽霊や超能力などに関係なく誰にでもあることだが、僕が鏡の中の「僕」と出会うことで、楽な生き方を選んだ今の自分に対する憎しみに気づかされた体験は、他の何よりも怖いものであったため。(117文字)

まとめ

 

以上、今回は『鏡』について解説しました。ぜひ定期テストなどの対策として頂ければと思います。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。