森で染める人 現代の国語 解説 問題 意味調べノート 漢字

『森で染める人』は、教科書・現代の国語で学ぶ作品です。ただ、本文を読むとその内容が分かりにくい箇所もあります。

そこで今回は、『森で染める人』のあらすじや要約、語句の意味などを含め簡単に解説しました。

『森で染める人』のあらすじ

 

本文は、行空きにより5つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①山で採ってきた植物を水に入れて火にかけると、中の色素が解け出していく。水と合わさって染液となり、さらに不要な物を取り除いていく。これに布を浸すと、淡い色が浸透していく。

②東京から山に囲まれた岡山県に引っ越し、草木染めをする日々が始まった。山で暮らすと、様々な植物があり、自然は人の都合とは無関係だと思い知らされる。手間と時間をかけて染め重ねた色は強く美しく、化学染料や植物染料でもない微妙な領域が存在する。

③山に入って染料になるヤシャブシの木を探す。季節によって染まる色や鮮やかさが微妙に違うようだ。ここで拾い集めたヤシャブシの実は、染料店のものとは決定的に違う。私はただ、邂逅を求めて山に頻繁に通うのである。

④少量・短時間で鮮やかな色を出せる化学染料は、便利で合理的である。だが、化学染料は答えの分かり切った色であり、環境問題や身体への影響などもある。一方で、植物染料は手間と時間はかかるが、染め重ねて深みを増す色であり、色の奥行きや可能性を感じさせてくれる。だから私は、手間や時間がかかっても、その土地の環境を持続できる技術を残してきたいと思った。

⑤物があふれかえる時代で、私は自然からも人からも搾取せず、持続していけるような選択をしたい。現代では、知らないうちに自然の循環から放り出されてしまう。そのため、すべては自分の選択にかかっている。私は今後も、美しい世界を次の世代へ手渡すために、何度でも邂逅を求めて山を歩くだろう。

『森で染める人』の要約&本文解説

 

200字要約少量・短時間で鮮やかな色を出せる化学染料は、確かに便利で合理的であるが、答えの分かり切った色であり、環境や身体への影響などもある。一方で、手間と時間をかけて染め重ねて作る植物染料は非合理的だが、自然や人から搾取しないため、その土地の環境を持続できる技術を残していくことができる。自然の循環する輪から放り出されてしまう現代において、私は美しい世界を次の世代へ手渡すという自分の選択をしていきたい。(197文字)

筆者は、東京での暮らしに違和感を覚え、岡山県の山に囲まれた村へ引っ越すことにしました。そこでは、布を染めるための染料の材料である植物が豊富に存在していました。その場所で、筆者は草木染めをする日々をおくることになります。

自然の中で作る植物染料は、強くて美しく、都会の化学染料で作る色とは全く異なっていました。筆者はこの村で植物染料の素晴らしさに気付き、一つの答えにたどり着きます。

それは、どんなに手間や時間がかかっても、その土地の環境を持続できる技術を残していきたい、というものです。これはつまり、自然の中で生きていく上での技術と環境を受け継いでいきたい、ということです。

例えば、現代では化学染料を作る際にすべて機械で行い、人間の手を使う技術などはどんどんなくなっていっています。また、植物染料を作る自然環境も森林伐採などでその原料が減りつつあります。

このような、時代と共に減りつつある技術や環境を筆者は受け継いでいきたいということです。

最終的に筆者は、自分の選択はこの美しい世界を次の世代へ手渡すことだと述べています。これはつまり、今の環境をずっと続けられるような美しい世界を未来に残してきたい、ということです。

『森で染める人』の意味調べノート

 

【こす】⇒かすや不純物を取り除くために、布・網などをくぐらせる。

【淡い(あわい)】⇒色や味などが薄い。

【浸透(しんとう)】⇒しみとおること。しみこむこと。

【居を移す(きょをうつす)】⇒住居を移す。

【まつわる】⇒関連する。

【工房(こうぼう)】⇒仕事場。アトリエ。

【染料(せんりょう)】⇒繊維などを染めるのに用いる色素となる物質。

【散策(さんさく)】⇒ぶらぶらと歩くこと。散歩。

【植林(しょくりん)】⇒山などに苗木を植えて林に育てること。

【朽ちる(くちる)】⇒腐って形を失う。

【擬人化(ぎじんか)】⇒人でないものを人に見立てて表現すること。

【漠然(ばくぜん)】⇒ぼんやりして、はっきりとしないさま。

【羅列(られつ)】⇒連なり並ぶこと。

【享受(きょうじゅ)】⇒受け入れて自分のものとすること。

【邂逅(かいこう)】⇒思いがけなく出会うこと。めぐりあうこと。

【足しげく】⇒たびたび行くさま。

【染織(せんしょく)】⇒布を染めることと織ること。染め物と織り物。

【違和感(いわかん)】⇒しっくりしない感じ。

【合理的(ごうりてき)】⇒物事の進め方に無駄がなく、能率的であるさま。⇔「非合理的」

【故郷(こきょう)】⇒生まれ育った土地。

【全壊(ぜんかい)】⇒すべて壊れること。

【葛藤(かっとう)】⇒心の中に相反する考えが起こり、どれを選ぶか迷うこと。

【順応(じゅんのう)】⇒環境の変化に従って、それに合うように変わること。

【淘汰(とうた)】⇒不用なもの、不適当なものなどを除き去ること。

【循環(じゅんかん)】⇒ひとめぐりして、元へ戻ることを繰り返すこと。

【可視化(かしか)】⇒目に見えるようにすること。

【搾取(さくしゅ)】⇒乏しいものを無理にとること。力で利得すること。

『森で染める人』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①髪をめる。

②山をサンサクする。

ショクリンされた地域。

④米をシュウカクする。

⑤言葉のラレツ

⑥季節がジュンカンする。

⑦労働者からサクシュする。

解答例①染 ②散策 ③植林 ④収穫 ⑤羅列 ⑥循環 ⑦搾取
問題2「自分が物を作ることの意味を曖昧にしたくない。」とあるが、「自分が物を作ることの意味」とはどのようなことか?本文中から一文でそのまま抜き出しなさい。
解答例自然と関わり、自然にかえっていく物作りの中で、どんなに手間や時間がかかっても、その土地の環境を持続できる技術を残していきたいということ。
問題3

筆者が植物染料に惹かれるようになったのはなぜか?次の選択肢の中から選びなさい。

(ア)山に囲まれた岡山県の村で暮らしたことで、様々な植物と出会い、植物が作り出す色の鮮やかさに感銘を受けたため。

(イ)自然の都合を無視して合理的に作るのではなく、手間と時間をかけてのんびりと色を作り出すことの面白さに気付いたため。

(ウ)邂逅を求めて山に足しげく通うことでしか得ることのできない、植物由来の染料の珍しさに価値を感じたため。

(エ)仕様通りに作って答えの分かり切った色を染めることよりも、染め重ねて深みを増していく奥行きや可能性のある色に希望を感じたため。

解答(エ)(ア)は「色の鮮やかさに感銘」が誤り。(イ)は「のんびりと色を作り出すことの面白さ」が誤り。(ウ)は「珍しさに価値を感じる」が誤り。

まとめ

 

以上、今回は『森で染める人』について解説しました。ぜひ定期テスト用に見直して頂ければと思います。