ビジネスシーンでよく使われる「迎えに行く」という表現があります。「お客様を迎えに行く」などのように用いるのが一般的です。
ただ、この使い方は敬語として問題ないのか?という疑問があります。そこで、本記事では「迎えに行く」の正しい使い方を解説しました。
迎えに行くの意味
「迎えに行く」とは「自分が出向いて、そこで相手を待つ」という意味です。つまり、「相手の方へ自分が行ってそこで待つ」ということです。
例えば、お客様が「電車」⇒「最寄り駅」⇒「会社」というルートで会社に来るとします。ところが、会社から最寄り駅までは結構な距離があったため、こちらから駅まで車で向かうことにしました。
このような場面で、相手が来るのを待って時間短縮を狙う行動を「迎えに行く」と表現するわけです。
問題は、この「迎えに行く」という言い方は「敬語として正しいのか?」ということです。
結論から言いますと、「迎えに行く」は敬語としては誤りです。実際にビジネスシーンでこの表現を使うことはできません。
では、どんな言い方をすればいいのか詳しくみていきましょう。
迎えに行くの正しい使い方
まず、「迎え」という言葉は、前に「お」をつけて「お迎え」とするのが一般的です。そして、「行く」という行為は自分が行うものです。
この場合の行為は「お客様」を相手にしているため、「謙譲語」にする必要があります。「謙譲語」とは、自分の行為を低くする表現のことです。
「行く」を謙譲語にすると、「参る」になります。したがって、「お迎えに参ります」が正しい表現となります。
具体的には、以下のような使い方です。
- 12時にお迎えに参ります。
- 最寄り駅まで、お迎えに参ります。
基本的には上記のような使い方で問題ありませんが、一つだけ注意点があります。それは、「迎えに行く人」が自分よりも目上の人の場合です。
例えば、自分の上司である課長や部長が迎えに行くようなケースです。この場合は、以下のような使い方をします。
- 「課長がいらっしゃるので~」
- 「部長がおいでになるので~」
先ほどの場合だと、迎えに行く行為は自分であったため、「謙譲語」を使うということでした。
しかし、この場合は上司が迎えに行く行為なため、「尊敬語」を使うことになります。「尊敬語」とは、相手の行為を高くする表現のことです。
もしも、「課長が迎えに参ります」だと、課長を自分よりも下げたことになってしまいます。これはお客様はもちろん、課長にも失礼な表現となってしまいます。
そのため、「いらっしゃる」のような「尊敬語」を使うということです。
なお、敬語表現でない場合は「迎えに行く」を使っても特に問題ありません。
【例】⇒「学校終わりの子供を迎えに行く。」
子供や家族を迎えに行く行為は、自分を下げるわけでも相手を上げるわけでもありません。いたって対等な行為です。そのため、普通に「迎えに行く」を使っても問題ないということです。
実際の例文
最後に、それぞれの使い方を具体的な例文で紹介しておきます。
【迎えに行くの敬語表現】
- 14時にはお迎えに参りますので、よろしくお願い致します。
- 本日は、〇〇ではなく私が駅までお迎えに参ります。
- 社長がいらっしゃる予定ですので、よろしくお願い致します。
- 部長がおいでになるので、その場でお待ちください。
【迎えに行くの一般表現】
- 物騒な世の中なので、塾帰りの息子を迎えに行く。
- 明日は息子が退院する予定なので、病院まで迎えに行く。
- 海外旅行から帰ってくる友人を、空港まで迎えに行く。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「迎えに行く」=自分が出向いて、そこで相手を待つ行為。
「敬語」としては誤りなので、「お迎えに参ります」のように使う。
仕事を行う上で、敬語を使い分けることはとても重要です。この記事をきっかけに、ぜひ正しい使い方を覚えていただければと思います。