「虎視眈々」という四字熟語をご存知でしょうか?
漢字だけを見ると、「虎」が入っているのでどう猛なイメージだと思われます。実はこの四字熟語は、人気ボカロ曲の歌詞にも使われているほど有名なものです。
本記事では、そんな「虎視眈々」の意味や使い方、由来・類語などを解説しました。
虎視眈々の意味・読み方
まずは、基本的な意味と読み方です。
【虎視眈々(こしたんたん)】
⇒敵や相手のすきをねらって、じっくりと機会をうかがうこと。
出典:学研 四字辞典熟語
「虎視眈々」は「こしたんたん」と読みます。意味は、「相手のすきを狙って、じっくりと機会をうかがうこと」です。
例えば、会社の中で常に出世の機会を狙っているような人物がいたとします。自分の次のポストが課長であれば、課長への昇進を狙い、日々機会を狙っているようなイメージです。
このような人物は、相手のすきを狙いじっくりと機会をうかがっています。よって、「虎視眈々である」と言えるのです。
つまり、「虎視眈々」とはチャンスを逃さまいと常に機会を狙っている様子を表す四字熟語ということです。
なお、「虎視眈々」の「眈々」を「耽々」と書くのは誤りなので注意してください。
「耽」だと「物思いに耽(ふけ)る」という意味の漢字になってしまいます。正しくは左側の部首が「目」である「眈(にら)む」という字を使います。
「虎視眈々」⇒「〇」 「虎視耽々」⇒「✕」
虎視眈々の語源・由来
「虎視眈々」の「虎視」は「虎が視(み)る」と書くので「虎が獲物に狙いを定める様子」を意味します。そして、「眈々」の「眈」は「眈(にら)む」と書くので、「眼光鋭く見下ろす様子」を意味します。
以上の事から、「虎視眈々」は「虎が眼光鋭く獲物に狙いを定める様子」を表す言葉であることが分かります。
転じて、「スキがあれば、相手に付け入ろうとする様子」という意味になるわけです。
考えてみれば、虎は非常に怖い目つきをした動物です。そして、周囲の獲物を常に観察しています。「虎視眈々」は、そのような野生の本能をむき出しにした肉食動物を表した四字熟語ということです。
ところで、この四字熟語はどこから来たものなのでしょうか?
実は「虎視眈々」は、古代中国の書物である「易経(えききょう)」を由来とします。「易経」の中の一節に、次のような一文があります。
「虎視眈眈、その欲(よく)遂遂(ちくちく)たれば咎(とが)なし。」
簡単に訳すと、「虎が獲物を狙うように欲望を持てば問題ない」という意味です。
当時の中国では、「国王は優秀な部下に政治を任せればいい」という考えでした。しかし、この考えの悪い点は「国王が部下から甘く見られ、政権を乗っ取られる恐れがある」ということです。
そうならないためにも、国王は部下に対して「にらみ」を利かせなければいけません。「にらむ」は「睨む」と書きます。そのため、「(部下を)にらむ」という意味で「眈々」を使っていたのです。
よって、元々の出典から言えば「目上の者が目下の者ににらみをきかせる」という使い方が正しいことになります。ただし、現在ではどちらかと言うと「目下の者が目上の者の地位を狙う」という用例で使うことが多いです。
この辺りの厳密な使い分けは、あまり神経質になる必要はありません。なぜなら、元々の意味から派生していくのは四字熟語の世界ではよくある話だからです。
虎視眈々の類義語
「虎視眈々」の「類義語」は次の通りです。
「虎視眈々」と似た四字熟語はいくつかありますが、全く同じ意味の言葉というのはありません。
「野心満々」は「その人の身分に合っていないものを手に入れる」という「虎視眈々」にはない意味が含まれています。また、「竜驤虎視」は、すでに権力を得ている人に対して使われる言葉です。「垂涎三尺」には、「じっと機会を狙う」という意味までは含まれていません。
一般的な語で言い換えるなら、「機会を狙う・チャンスを待つ」などが分かりやすいのではないでしょうか。
その他、少し難しい言葉だと、「持満(じまん)」があります。「持満」とは「用意を十分にして、機会を待つこと」です。「満(まん)を持(じ)して」を略した言葉と考えれば分かりやすいでしょう。
虎視眈々の対義語
逆に、「対義語」としては次の2つが挙げられます。
どちらも「物事に動じず、落ち着いた様子」を表した四字熟語です。反対語の場合は「野心などがなく、落ち着いてあわてない様子」を表したものとなります。
虎視眈々の英語訳
「虎視眈々」は、英語だと次のように言います。
「watch vigilantly for an opportunity」
「vigilantly」は「用心深く・油断なく」、「opportunity」は「機会・チャンス」という意味です。ここから、「用心深く機会を探る」という訳になります。
例文だと、次のような言い方です。
He is watching vigilantly for an opportunity to attack you.(彼は虎視眈々と攻撃の機会をうかがっている。)
また、簡易的な表現だと次のような言い方もできます。
「aim to~」(~を狙う)「be eager to~」(~を熱望する)
He aims to be the next leader.(彼は次のリーダーを狙っている。)
He is eager to be the next leader.(彼は次のリーダを熱望している。)
虎視眈々の使い方・例文
最後に、「虎視眈々」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 某球団が、大物選手の獲得を虎視眈々と狙っているらしい。
- 芸能界には、虎視眈々と天下を狙う野心家が多いと言われる。
- 副社長である彼は、次期社長の座を虎視眈々と狙っているようだ。
- 準備は終わり、今は虎視眈々と時期を見計らっている段階です。
- やられっぱなしではなく、虎視眈々と反撃の機会を狙うつもりです。
- あそこの土地は、地上げ屋が虎視眈々と狙っているみたいだ。
例文を見ても分かる通り、「虎視眈々」は様々な場面で使える言葉です。その中でも、社会的地位や次期ポストを狙うような時に使われることが多いです。
世の中には、自分のポジションを確保するために常にチャンスを狙っている人がいます。
「あそこのポジションが空いたら今度は俺が入ってやろう」「あいつが辞めたら、今度は俺が昇格してやろう」
特にビジネスの世界ではそうです。「虎視眈々」は、そのような重要なポジションを狙い定めるような時に使う四字熟語ということです。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「虎視眈々」=相手のすきを狙って、じっくりと機会をうかがうこと。
「語源・由来」=虎が眼光鋭く獲物に狙いを定める様子。(易経)
「類義語」=「野心満々・竜驤虎視・垂涎三尺・持満」
「対義語」=「冷静沈着・泰然自若」
「英語訳」=「watch vigilantly for an opportunity」
「虎視眈々」は、一見するとあまりなじみのない四字熟語かもしれません。しかし、実際は日常的に使われているものです。意味を覚えたからにはぜひ普段の生活で使って頂ければと思います。