克己復礼  意味 使い方 例文 類義語 由来

「論語」の言葉で「克己復礼」という四字熟語があります。

主に「克己復礼の精神で頑張ります」「克己復礼をもって仁となす」などのように用います。一見すると難しそうなイメージですが、ビジネスや学業などではよく使われている言葉です。

本記事では、そんな「克己復礼」の意味や読み方、使い方・類語などをわかりやすく解説しました。

克己復礼の意味・読み方

 

最初に、基本的な意味と読み方を紹介します。

【克己復礼(こっきふくれい)】

私情や私欲に打ち勝って、社会の規範や礼儀にかなった行いをすること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

克己復礼」は、「こっきふくれい」と読みます。

意味は「私情や私欲に打ち勝ち、礼儀にかなった行いをすること」です。

一つずつ説明すると、「私情」とは「自分中心の感情」、そして「私欲」とは「自分の利益だけを考えること」を表します。

すなわち、「自分中心の考えを捨てて、礼儀正しくすること」を「克己復礼」と言うわけです。

例えば、会社などの組織においては社員が礼儀を守ることが重視されます。礼儀を守り節度ある勤務をすることが、その会社の社風になっているような場合もあります。

このような会社は、「社員の克己復礼を徹底している」などと言うことができます。

他には、礼儀や規則などの校則に厳しい私立の学校、マナー教育を徹底している団体なども「克己復礼を重んじている」と言えます。

つまり、「克己復礼」とは社会の規範を守り、礼儀正しい振る舞いをする様子を表す四字熟語ということです。

克己復礼の語源・由来

 

「克己復礼」は、『論語』に出てくる「孔子(こうし)」の教えを由来とします。「論語」とは、紀元前5世紀に記された中国の書物を指し、孔子の教えを弟子たちが書き留めたものです。

「孔子」は、弟子の「顔淵(がんえん)」から次のような質問をされました。

仁とは一体どういうものか?

すると、「孔子」は「(おのれ)に(か)ちて、(れい)に(ふく)すことだ。」と答えました。これを直訳すると、「自分の弱さを克服し、礼儀に復帰することだ」となります。

つまり、「自分の感情を抑制し、礼儀を守ること」が「仁(道徳の基本)として大事」と主張したわけです。

当時の中国では、礼儀を重んじて社会のルールに従うことが重視されていました。そして、実際に「克己復礼」が徹底されていたからこそ、上手く社会が回っていたとも言えます。

そのため、現在でも「社会の規律や規範にかなった行動」という意味でこの四字熟語は広く使われているのです。

克己復礼の類義語

克己復礼 類義語 言い換え 対義語

続いて、「克己復礼」の「類義語」をご紹介します。

隠忍自重(いんにんじちょう)】⇒じっと我慢して、軽々しい振る舞いをしないこと。「隠忍」は「じっと耐え忍ぶこと」、「自重」は「自分の行動を抑えること」を表す。
無私無欲(むしむよく)】⇒私情も私欲もないこと。「無私」とは「我を捨てること」、「無欲」とは「欲がないこと」を表す。
温良恭倹(おんりょうきょうけん)】⇒穏やかで、礼儀正しく控えめなこと。「温良」は「穏やかで素直な様子」、「恭倹」は「礼儀正しく控えめな様子」を表す。
勝つは己に克つより大なるはなし(かつはおのれにかつよりだいなるはなし)】⇒勝つ事で最も大変なのは、己の気持ちに勝つことである。

以上、4つの類義語を紹介しました。

基本的には、「道徳やマナー、倫理などを守る」といったイメージの言葉が類語となります。この中では、「無私無欲」が一番近い意味です。

また、一般用語としては次の三つも類義語と言えるでしょう。

  • 克己心(こっきしん)」⇒己の欲望を抑える心。
  • 自制心(じせいしん)」⇒自分の感情や欲望を抑える心。
  • 理性的(りせいてき)」⇒欲望や感情に左右されないこと。

いずれも共通しているのは、「欲望を抑える・欲望に打ち勝つ」といったことです。

「克己」は「己を克服する」と書きます。したがって、「自分の気持ちに打ち勝つ」という意味ならば、基本的に類語と言えるのです。

なお、間違えやすい言葉で「克己奮励」があります。これは、「奮励努力」とごっちゃになってしまった言葉だと思われます。

このような四字熟語はありませんので誤用に注意してください。

克己復礼の英語訳

 

「克己復礼」は、英語だと次のように言います。

exercising self-restraint and conforming to the rules of etiquette and formality

少し長いですが、一つずつ単語を訳せば簡単です。

  • 「exercise」⇒「訓練する・きたえる」
  • 「self-restraint」⇒「克己・自制」
  • 「conform」⇒「従う」
  • 「rule」⇒「ルール・法則」
  • 「etiquette」⇒「礼儀・エチケット」
  • 「formality」⇒「形式」

すべての単語を合わせると、「克己心をきたえ、礼儀や形式のルールに従う」という意味になります。このように解釈すれば、分かりやすいかと思います。

また、簡単な言い方だと「overcome inner enemies」などもあります。直訳すると、「内なる敵に打ち勝つ」という意味です。

克己復礼の使い方・例文

 

最後に、「克己復礼」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. 克己復礼を重んじて、御社のために尽くすつもりです。
  2. ハロウィンで大暴れする人は、克己復礼の精神が欠けている。
  3. 克己復礼を意識して、マナーや礼儀を大事にしてください。
  4. 自分のことしか考えていないので、克己復礼を心がけよう。
  5. 学校では克己復礼を守り、自己の欲望を抑えることが大事だ。
  6. 克己復礼を重んじる人物は、会社などの組織では重宝される。
  7. 転職先の会社は、会社全体で克己復礼を重んじる社風であった。

 

「克己復礼」は「自分の欲望を抑え、礼儀正しく行動する」という意味でした。そのため、用例としては、ルールを守るべき場所で使われます。

具体的には、会社などの「組織」、学校などの「集団」といった場所です。これらの場所では、自分のことだけを考えて行動すると周りに迷惑がかかってしまいます。

したがって、「ルールをしっかり守る」という意味で「克己復礼」が使われやすいのです。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

克己復礼」=私情や私欲に打ち勝ち、礼儀にかなった行いをすること。

語源・由来」=「己に克ちて、礼に復す」。『論語』の「孔子」の教えから。

類義語」=「隠忍自重・無私無欲・温良恭倹・克己心・自制心」など。

英語訳」=「exercising self-restraint and conforming to the rules of etiquette and formality」

社会で生きていくには、ルールや礼儀を守ることからは避けて通れません。もちろん、自分の感情を優先することも時には必要です。しかし、「克己復礼」が言いたいのは「己の感情をコントールし、大人になりなさい」ということです。