視察 見学 違い 使い分け 意味

「視察」と「見学」は、学校や会社などで用いられている言葉です。

「現場を視察する」「工場を見学する」

ただ、この二つをどう使い分ければよいのかという疑問があります。そこで本記事では、「視察」と「見学」の違いをわかりやすく解説しました。

視察の意味

 

まずは、「視察」の意味からです。

【視察(しさつ)】

現地・現場に行き、その実際のようすを見極めること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

視察」とは「現場に行き、実際の様子を見極めること」を意味します。

「見極める」には「物事を深く知る・判定する」などの意味があります。つまり、物事を表面的に見るのではなく、実際に足を運んで深く知ったり判定したりする場合に「視察」を使うわけです。

例えば、会社の上層部が社員の仕事現場を「視察」するとしましょう。この場合は、社長や取締役など偉い立場の人が実際の仕事現場を見に行くという意味です。

そして実際の現場では、

  • 部下はちゃんと仕事をしているか?
  • 何か問題点などはないか?
  • 改善できる箇所はないか?

といったことを深く知ります。その結果、「良い・悪い」などの判定を下すということです。

見学の意味

 

続いて、「見学」の意味です。

【見学(けんがく)】

実際のありさまを見て知識を広めること。

体調などの都合で、体育実技などを実際に行わないで、見て学ぶこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

見学」とは「実際に見て学ぶ・知識を得る」という意味です。

「見学」は「ぶ」と書きます。つまり、見ることによって何らかの知識を得るような場合に「見学」を使うことになります。

例えば、以下のように使います。

  • 自動車工場を見学する。
  • 水泳の授業を見学する。

前者は、学生が授業の一環として実際の工場を生で見て学ぶという意味です。後者は、水泳の授業を休んだ人が他の生徒の水泳を見て学ぶという意味です。

どちらも共通しているのは、見るだけでなく「学ぶ」という点にあります。「見学」と聞くと、何となく単に見ているようなイメージですが、実際は学ぶことが目的なのです。

視察と見学の違い

視察 見学 違い 使い分け

ここまでの内容を整理すると、

視察」=現場に行き、実際の様子を見極める。

見学」=実際に見て学ぶ・知識を得る。

ということでした。

両者の違いは二つあります。

一つ目は、「目線の違い」です。

「視察」は、物事を上から見た言葉だと言えます。

視察は、見る側の人間が見極めて判定しなければいけません。そのため、「見る側」を「見られる側」よりも上に置いた言葉となるのです。

一方で、「見学」の方は物事を下から見た言葉だと言えます。

「見学」というのは学ぶ行為なため、教えられる側の立場が自然と下になります。したがって、「見る側」を「見られる側」よりも下に置いた言葉となるわけです。

二つ目は、「目的の違い」です。

「視察」は、実際の様子を見極めるために行います。一方で、「見学」は、学んだり知識をつけるために行います。

つまり、どちらも「みる」という意味は共通していますが、その目的が異なるということです。

以上、まとめますと、

視察」=「見る側」を「」に置く。(見極めるため)

見学」=「見る側」を「」に置く。(学ぶため)

となります。

なお、両者の違いは英語にも表れています。

視察」は英語で「inspection(インスペクション)」と言います。「inspection」には「視察」以外に「監察・検閲・精査・点検」などの意味があります。こちらは、公の機関が企業を判定したりする場合に使う言葉です。

一方で、「見学」は、「the tour」と言います。「tour」には、「旅行・遠征」などの意味があるので、こちらは同じ「見る」でももっとカジュアルな意味となります。

このように、英語でも比較しておくと両者の違いが分かりやすくなるでしょう。

使い方・例文

 

最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。

【視察の使い方】

  1. 視察に訪れた首相から、ねぎらいの言葉をもらった。
  2. 高校時代は、プロのスカウトがよく視察に来てた。
  3. 相手チームの敵情視察をして、情報を集める。
  4. 被災地の視察をして、現状を報告することにした。
  5. 〇〇大臣は、海外視察に出ており現在は不在です。

【見学の使い方】

  1. 工場見学をして、自動車の製造過程を学ぶ。
  2. 特別に施設を見学させてもらうことになった。
  3. 就職活動の一環として、会社を見学させてもらった。
  4. 現地を見学してきた内容をレポートにまとめる。
  5. 風邪をひいてしまったため、水泳を見学することにした。

 

「視察」の方は、会社であれば社長や部長、政治であれば首相や大統領など上の立場の人間が主語となります。また、「被災地の視察」や「海外の視察」などの使い方もよくします。

この場合は、「見られた側」に判定を下すのではなく、「見る側の関係者」に判定の結果を報告するといったニュアンスになります。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

視察」=現場に行き、実際の様子を見極める。

見学」=実際に見て学ぶ・知識を得る。

【違い】⇒「視察」は「見る側」を「」に置き、「見学」は「見る側」を「」に置いた言葉。

「視察」は見極めるために行うのに対し、「見学」は見て学ぶために行います。実際に視察や見学を行う際は、これらの違いを頭に入れておきましょう。