「運否天賦」という四字熟語をご存知でしょうか?一般的には「運否天賦の勝負」「運否天賦に任せる」などと言います。
初めて聞く人もいるかもしれませんが、漫画カイジの名言にもなっているほど有名な言葉です。本記事では、この「運否天賦」の意味や使い方、語源、類義語などを詳しく解説しました。
運否天賦の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【運否天賦(うんぷてんぷ)】
⇒運のよしあしは天が決めるということ。運を天に任せること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「運否天賦」は「うんぷてんぷ」と読みます。よくある読み間違えとして「うんぴてんぷ」「うんひてんぷ」などがありますので注意して下さい。正しくは、「うんぷ」と読みます。
「運否天賦」とは「人の運を天に任せること」を表します。
例えば、スポーツの試合などでは勝敗を天に任せるようなことがよくあります。このような場面では、「勝敗は運否天賦だと考えて思い切り行こう」などと言う場合があります。
つまり、「勝つか負けるかは天次第なので、思い切り行こう」という意味です。
「天次第」というのは別の言い方をすると、人間の力が及ぶ範囲ではない事とも言えます。「運否天賦」はこのように人の運・不運を自分ではなく天の力に任せるような時に使うわけです。
私たちの人生は、努力や才能だけでは説明がつかないことが多くあります。
- 「勝てると思ったのに、なぜか逆転負けをした。」
- 「負けると思ったが、不思議と勝ってしまった。」
このような不可解な現象を、人は「運命・宿命」などと呼びます。
運命や宿命は天からの定めなので、人間からすると吉と出るか凶と出るかは分かりません。しかし、不運を恐れていては何も動けないです。
そこで、「どうなるか分からないけど、運任せで行動してみよう」という意味で「運否天賦」を使うのです。
運否天賦の語源・由来
「運否天賦」の語源はどこから来ているのでしょうか?
まず「運否」は「運があるか否(いな)か」と書きます。すなわち、「運のあるなし」ということです。
「否」という字は「否定・拒否」などがあるように「何かを打ち消す」という意味があります。そのため、「運否」は「幸運」と「悲運」を指すわけです。
そして、「天賦」は「天が腑(ふ)する」と書きます。「腑」という字は「賦与」「賦課」などがあるように「何かを与える」という意味です。つまり、「天賦」とは「天が与えること」を意味します。
以上の事から、「運否天賦」の本来の意味は「幸運か不運かを天が与えること」となります。転じて、現在の「運を天に任せること」という意味になるわけです。
なお、この四字熟語は何か具体的な出典があるわけではありません。中国の故事成語などにもない言葉なため、正確な由来は現在の所不明です。
運否天賦の類義語
「運否天賦」の意味は、「運・不運を天に任せる」ということでした。したがって、この中では「天命を待つ」という表現が最も近い意味だと言えます。
ただ、実際の国語の授業などでは「人間万事塞翁が馬」の方がよく登場します。こちらは故事成語の中ではとても有名なものなので覚えておくとよいでしょう。
運否天賦の英語訳
「運否天賦」は、英語だと次のように言います。
「trust to chance(運を信じる)」
「to trust in providence(運を天に任せる)」
前者の「chance」はここでは「チャンス」という意味ではなく「運」という意味で使われています。その「運」を「信じる(trust)」ので「運否天賦」と訳すことができます。
また、後者の「providence」は「天・神」という意味です。こちらも同様に、「天」や「神」を信じるので同じように訳すことができます。
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
You should trust to chance.(君は運を信じるべきである。)
I had no choice but to trust in providence.(私は運を天に任せるしかなかった。)
運否天賦の使い方・例文
最後に、「運否天賦」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 面接に受かるのはやはり難しい。こればっかりは運否天賦です。
- 勝負事は何が起こるか分からない。運否天賦とはよく言ったものです。
- 鬼が出るか蛇が出るか。こうなったら運否天賦で向かっていこう。
- 競馬の予想なんて当てにならない。運否天賦で買ったほうがいいよ。
- いよいよ明日は決勝戦だ。変に気負わず運否天賦に任せることにしよう。
- 受験当日ですが、できることは全てやりました。今は運否天賦の気分です。
- 運否天賦じゃないが、まずは行動だ。ビジネスなんてやってみないと分からない。
「運否天賦」は、ゲームやスポーツ・賭博(賭け事)などの勝負事に使うことが多い四字熟語です。これらの勝負事を人の実力ではなく、運に任せるような時に使います。
ただし、必ずしもこれらの用途に限定されるわけではありません。場合によっては受験やビジネスなどに使う場合もあります。例文だと、最後の6と7が当てはまります。
いずれにせよ、「運否天賦」は「自分の未来を天にゆだねること」です。したがって、「何とか良い結果になってほしい」と願うような時に使うのが適切だと言えます。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「運否天賦」=人の運を天に任せること。
「語源・由来」=「運があるか否か、天が賦する(与える)こと」から。
「類義語」=「勝負は時の運・運を天に任せる・人間万事塞翁が馬・天命を待つ・墜茵落溷・乾坤一擲」
「英語訳」=「trust to chance」「to trust in providence」
昔から「苦しい時の神頼み」とは言ったものです。もちろん、自分自身が日々努力をすることに越したことはありません。しかし、最終的には天を味方にすることが生きていく上では重要なのかもしれません