「たえる」を漢字で書く場合、次のように二つの書き方があります。
「ストレスに耐える」「聞くに堪えない話だ」
両方とも「我慢する」というイメージですが、どのように使い分ければいいのでしょうか?今回は、「耐える」と「堪える」の違いについて詳しく解説しました。
耐えるの意味
まずは、「耐える」の意味からです。
【耐える(たえる)】
①苦しさ・悲しさなどに屈せず我慢する。こらえる。
②他から加えられる力に負けずにもちこたえる。
出典:三省堂 大辞林
「耐える」には二つ意味があります。一つ目は、「精神的に我慢する」という意味です。
【例】
- 悲しみに耐える。
- 苦しみに耐える。
- ストレスに耐える。
この場合は、心の中でぐっとこらえるようなイメージだと考えて下さい。悲しみや苦しみなどを感じたものの、心の中で何とか我慢したという意味です。
そして二つ目は、「物理的に持ちこたえる」という意味です。
【例】
- 100キロの重さに耐える。
- 雨風に耐える建物。
- 爆発に耐えるシェルター。
この場合は、「目に見えるような力に対して持ちこたえる」という意味を持ちます。物の重さや自然現象などにより、物理的な外圧が加わった時に使います。
このように、「耐える」は、精神的な意味でも物理的な意味でも使える言葉ということになります。
堪えるの意味
続いて、「堪える」の意味です。
【堪える(たえる)】
①苦しさ・悲しさなどに屈せず我慢する。こらえる。
②他から加えられる力に負けずにもちこたえる。
③負担や任務に対応できる能力や技量がそなわっている。
④それをするだけの値打ちがある。~に値する。
出典:三省堂 大辞林
「堪える」には複数意味がありますが、主に③と④の意味で使われます。(※①と②は、「耐える」と全く同じ意味です。)
それぞれの意味を説明すると、③は「能力や技能が備わっている」という意味です。
【例】⇒「任に堪える人」
この場合は「任せられた任務や責任に対して、能力が備わっている」ということです。
そして、④は「値打ちがある・値する」という意味です。
【例】⇒「聞くに堪えない話だ。」
この場合は、後ろに「~ない」が付く否定文として用いられるのが特徴です。上記の例文だと、「聞く値打ちがないほどつまらない話」という意味になります。
耐えると堪えるの違い
ここまでの内容を整理すると、
「耐える」=精神的に我慢する。物理的に持ちこたえる。
「堪える」=能力が備わっている。値打ちがある。(我慢する・持ちこたえる)
ということでした。
両者の使い分けを簡単に言うと、
原則として「耐える」を使うが、「能力や値打ち」の意味の場合は「堪える」を使う。
ということになります。
まず、どちらも「我慢する・持ちこたえる」という意味は共通しています。したがって、この意味で使う場合はどちらを使っても問題ありません。
ただ、「耐える」の方は「能力が備わっている」「値打ちがある」という意味は持っていないです。そのため、これらの意味の場合は「堪える」を使うようにします。
実際には、同じ意味の場合は「耐える」を使うことの方が多いです。理由についてですが、「耐える」の方が一般的な意味として認知されているからだと思われます。
それぞれの漢字を比較すると、「耐」は「耐久・耐震・耐熱・耐火・忍耐」など多くの熟語があります。一方で、「堪」の方は「堪忍(かんにん)」くらいしかありません。
つまり、「堪」という字自体がそもそもあまり使われない漢字ということです。よって、「我慢する・こたえる」の意味の場合は「耐える」の方が一般に使われているのです。
なお、同じ読みの言葉で「絶(た)える」があります。「絶える」とは「続いていたものが途中で切れる・続かなくなる」「完全になくなる」などの意味を持つ言葉です。
使い方としては、「人通りが絶える」「仕送りが絶える」「紛争が絶えない」などのように使います。見て分かるように「耐える」や「堪える」とは全く別の意味を持つ言葉ですので、混同しないように注意してください。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【耐えるの使い方】
- 彼は重圧に耐えながらも結果を残す人だ。
- 昨日はずっと悲しみに耐えながら生活していた。
- 200キロのバーベルに耐えて、筋肉をつける。
- 寒がりなので北海道の寒さには耐えることができない。
- アスリートは厳しい練習に耐えることで成長する。
【堪えるの使い方】
- その映画は鑑賞に堪えない作品だ。
- 見るに堪えないので、ケンカはもうやめてくれ。
- 彼女の言い訳は聞くに堪えないほど幼稚であった。
- 彼のレベルではその任に堪えられないのは明らかだ。
- 聞くに堪えない演奏なので、やめた方がいいよ。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「耐える」=精神的に我慢する。物理的に持ちこたえる。
「堪える」=能力が備わっている。値打ちがある。
「使い分け」⇒原則として「耐える」を使い、「能力や値打ち」を表す際は「堪える」を使う。
「耐える」と「堪える」は、どちらも「精神的・物理的に我慢する」という意味を含んでいます。ただ、「耐える」の方は「能力や値打ち」の意味は含まれていません、したがって、この意味の場合は「堪える」を使うようにしましょう。