「酒池肉林」という四字熟語をご存知でしょうか?
宴会やパーティーなどに対して使われ、現在の例だと「酒池肉林の宴」「酒池肉林の接待」などのように用います。有名な故事成語なので、一度は聞いたことがあるかもしれません。
漢字だけを見ると、「酒」+「肉」なので何だかみだらなイメージだと思います。ところが、この言葉の意味を誤解している人が非常に多いようです。
そこで本記事では、「酒池肉林」の意味や由来、類義語、対義語などを詳しく解説しました。
酒池肉林の意味・読み方
最初に、基本的な意味と読み方を紹介します。
【酒池肉林(しゅちにくりん)】
⇒ぜいたくの限りを尽くした盛大な宴会。また、みだらな宴会のたとえ。
出典:三省堂 新明解四字熟語辞典
「酒池肉林」は「しゅちにくりん」と読みます。意味は「非常にぜいたくな宴会」を表したものです。
例えば、ビジネスで大きな成果を上げた人たちが皆で飲み会を開くことにしたとします。せっかくなので、高いお金を払って豪華な会場にするとします。
具体的には、高級ステーキのフルコースを注文したり高いワインを注文したり、あるいはすべての料理を食べ放題にしたりといったことです。
このような宴会は、非常に贅沢で豪華なものです。よって、「酒池肉林」と言えるのです。
つまり、「酒池肉林」とは非常に贅沢でなおかつ盛大な宴会を表した四字熟語ということです。
なお、「酒池肉林」は場合によっては「淫らな宴会」という意味で使うこともあります。
「淫(みだ)ら」とは「性的に乱れた様子のこと」だと考えてください。要するに、女性に囲まれて大騒ぎしたり、一気飲みしたりといったことです。
私たちが普段から考える「酒池肉林」はこのイメージではないでしょうか?しかし、厳密にはこのような使い方は誤用だと言われています。
誤用なのですが、一般的には「淫らな宴会」という意味でも使われています。そのあたりの理由を詳しくみていきましょう。
酒池肉林の語源・由来
「酒池肉林」の由来は、「司馬遷」が書いた歴史書の『史記』という書物が由来です。『史記』の中の一節に、次のような記述があります。
これを簡単に訳すと以下のようになります。
当時の中国は、「殷(いん)」の「紂王(ちゅうおう)」という王様でした。「紂王」は、大好きだった女性の「妲己(だっき)」のために宴会を開く計画を立てます。
そこで、自らの庭園の中に大量の酒を注いで池を作り、肉の塊を林のように束ねるほど贅沢な宴会を開きました。この逸話が現在の「酒池肉林」の由来だと言われています。
つまり、漢字の成り立ちだけで言えば特にいやらしい意味は含まれていないということになります。ここで言う「肉」とは、あくまで豚や牛などの食肉のことであり、男女の肉体や肉欲という意味ではありません。
当時は、肉という食べ物は身分の高い人しか食べられない高級食材でした。そのため、「肉」=「ぜいたくな食べ物」という意味で使っていたのです。
ではなぜ現在でも性的な意味でも使うのか?ということですが、実はこの話にはまだ続きがあります。以下は、簡単にその内容を記した一文です。
「その後、裸にした男女を池や林の中で追いかけ回しながら宴を続けた。」
要するに、「史記」の話自体には男女の淫らな様子が語られていたわけです。この話のイメージが強いため、現在の例として「淫らな宴会」が使われているということになります。
以上、まとめますと「酒池肉林」という四字熟語は「言葉そのものには淫らな意味はないが、元になった話の中に淫らな要素が含まれている」ということになります。
これが今もなお、性的なイメージが残っている理由だと言えます。
酒池肉林の類義語
続いて、「酒池肉林」の類義語を紹介します。
四つ類義語を紹介しましたが、共通しているのは「ぜいたくをする」ということです。四字熟語以外だと、「豪勢・高級・享楽」などで言い換えることもできます。
「酒池肉林」には「豪華な食べ物・飲み物」という意味が基本にあります。したがって、そこから派生して「享楽(楽しむ)」などの言葉も類義語に含まれます。
酒池肉林の対義語
「酒池肉林」の対義語としては、次のような言葉が挙げられます。
反対語の場合は「ぜいたくではない」、すなわち「質素な生活」を表す言葉となります。
前者は四字熟語として比較的よく使われるものです。後者の方は頻繁に使われるほどではありませんが、一つの慣用句として覚えておいて損はありません。
酒池肉林の英語訳
「酒池肉林」は、英語だと二つの言い方があります。
「sumptuous feast」(豪華な宴会)
「debauch」(道楽・堕落)
「sumptuous」は「豪華な・ぜいたくな」などの意味です。「sumptuous」に「feast(宴会)」が付くことで、「豪華な宴会」と訳すことができます。
また、「debauch」には「道楽・堕落」などの意味があります。「道楽」とは「酒色やばくちなどにふけること」、「堕落」とは「生活が崩れ、品行が卑しくなること」を表した言葉です。
こちらは「宴会」などの意味はないですが、「酒池肉林」と同じような意味として使うことができます。例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
The sumptuous feast held last night.(昨夜の宴は酒池肉林だった。)
The party was debauch.(そのパーティは酒池肉林でした。)
酒池肉林の使い方・例文
最後に、「酒池肉林」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 明日は取引先の社長を酒池肉林の接待で迎える予定です。
- お金持ちが開催する酒池肉林の宴に行ってきました。
- 大富豪たちはいつも酒池肉林の暮らしをしているらしい。
- 酒池肉林に溺れることなく、質素な生活をする予定です。
- 株で儲けたので酒池肉林のごとく宴を行うことにした。
- 今日は年に一回、酒池肉林の宴を楽しみましょう。
- 私は酒池肉林の祭りごとには一切興味がありません。
「酒池肉林」は、例文のように様々な場面な場面で使うことができます。実際の用例としては、良い意味と悪い意味の両方の文脈で使われています。
良い意味の場合は、「高級さ・リッチさ」を強調するような時に使います。逆に、悪い意味の場合は「派手さ・堕落さ」を強調するような時に使います。
どちらの文脈でも使えますが、強いて言うならば良い意味として使うことの方が多いです。いずれにせよ「酒池肉林」は、ぜいたくな宴会を客観的に表した言葉ということになります。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「酒池肉林」=非常にぜいたくな宴会。(淫らな宴会)
「語源・由来」=酒を池にためて、肉を林のごとくぶら下げることから。司馬遷の『史記』。
「類義語」=「肉山脯林・長夜之飲・贅沢三昧・活計歓楽」
「対義語」=「質素倹約・爪に火を点す」
「英語訳」=「sumptuous feast」「debauch」
「酒池肉林」の「肉」は「男女の肉欲」ではなく「食肉」のことを表しています。この言葉自体には性的な意味は含まれていません。したがって、ぜいたくな宴会であれば現在でも普通に使える四字熟語ということになります。