諸行無常 意味 わかりやすく 簡単に 使い方 例文 類義語 英語

「諸行無常」という四字熟語があります。

古くは『平家物語』などにも使われており、最近では座右の銘としている人も多いようです。ただ、この言葉はよく目にするにも関わらず、意味が今一つ分かりにくいです。

そこで本記事では、「諸行無常」の意味や使い方、語源などをなるべく分かりやすく解説しました。

諸行無常の意味を簡単に

 

まず、「諸行無常」の意味を辞書で引いてみます。

【諸行無常(しょぎょうむじょう)】

世のすべてのものは、移り変わり、また生まれては消滅する運命を繰り返し、永遠に変わらないものはないということ。人生は、はかなくむなしいものであるということ。

出典:学研 四字熟語字典

諸行無常」は、「しょぎょうむじょう」と読みます。

意味は「この世のすべてのものは移り変わっていき、不変なものはないこと」です。簡単に言えば、「すべてのものは変わっていくこと」だと考えてください。

例えば、人間というのは常に変わっていきます。子供であれば、毎年身長が伸びていきますし、顔の形や足の大きさなども変わっていきます。

大人の男性であれば、年を取ればとるほど白髪が生えてきますし、顔のシワなども増えてきます。そして、最終的にはこの世からいなくなり、骨やチリへと移り変わっていきます。

人間以外の生き物でも、例えば犬や猫などがずっと同じ姿のままということはありません。野生の植物なども季節ごとに開花し、冬になると枯れてしまいます。

さらに、生き物以外の机やイス、テレビやパソコンなどもずっと同じままということはありません。いずれはモノとしての機能を失い、壊れてしまいます。

つまり、世の中に存在するありとあらゆるものは、常に移り変わっていき、永遠に変わらないものはないと言うことができます。このことを、「諸行無常」と呼んでいるのです。「諸行」とは「すべての物事」、「無常」とは「常に変わらないものはない」という意味です。

諸行無常は仏教が由来

諸行無常 語源 由来

「諸行無常」は、仏教を由来とする言葉です。仏教の根本思想で、「三法印(さんぼういん)」と呼ばれるものがあります。

「三法印」とは仏教の教えとそれ以外の教えを区別するためのもので次の三つのことを指します。

諸法無我(しょほうむが)」=すべてのものは因縁から生じ、実体性はないこと。

諸行無常(しょぎょうむじょう)」=この世のすべてのものは移り変わっていくこと。

涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)」=迷いや煩悩をなくし、悟りの境地に達すること。

仏教では、「すべての物事には原因と結果がある」と考えます。

例えば、自分の身に悪いことが起こるのは、自分自身が過去に悪い行いをしたからであり、逆に良い事が起こるのは過去に良い行いをしたからであると考えるのです。これを難しい言葉だと「因縁(いんねん)」と言います。

「因縁」があるからこそ、人は悩みや迷いが生まれます。

この悩みや迷いをなくして悟りの境地を得るには、「物事は常に移り変わり続け、すべて因縁によって生じる」ということを受け入れる姿勢が重要です。そうすれば、人の不安や悲しみというのは軽減していきます。

この考え方をまとめたのが、「三法印」なのです。

「三法印」の考え方はどれも素晴らしいですが、現在「諸行無常」という言葉が広く普及しているのは、世の中の真理を端的にそして本質的に表しているからだと言えます。

諸行無常の響きありとは

諸行無常の響きあり 平家物語

「諸行無常」の後に言葉が続き、「諸行無常の響きあり」と表記する場合があります。これは、『平家物語』の中の一文から来たものです。

『平家物語』とは鎌倉時代に書かれた軍記物語で、平家一門の興亡を中心に描かれたものです。以下、その中の『祇園精舎』から抜粋したものです。

原文(本文)

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。

沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。

奢れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。

猛き者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵におなじ。

現代語訳(口語訳)

祇園精舎の鐘の音は、世の中に不変のものはないと鳴り響いている。

沙羅双樹の花の色は、どんなに栄えた者でも必ず滅んで衰える世の中の真理を表している。

おごり高ぶっている人も永久に続くことはなく、まるで春の夢のようである。

勢い盛んな猛者も結局は滅び、風の前の塵(ちり)と同じである。

当時の「平家」はまさに敵なしといった状態で、その勢いのまま日本全国を支配するかのように思われました。ところが、実際に平家が勢いを保てたのはわずか20年ほどでした。

その平家のはかなさを、鐘の音や花の色、塵などに例えて世の無常さを描いていたということです。

諸行無常の類義語

諸行無常 類義語 言い換え 対義語

続いて、「諸行無常」の「類義語」をご紹介します。

万物流転(ばんぶつるてん)】⇒この世のあらゆるものは、絶え間なく変化していくこと。「万物」とは「すべてのもの」、「流転」とは「移り変わること」を表す。古代ギリシャの哲学者、ヘラクレイトスの思想を表した言葉。

盛者必衰(じょうしゃひっすい)】⇒勢いの盛んな者もいつかは必ず衰えて滅びること。「諸行無常」と同じく、仏教用語から来たもの。

有為転変(ういてんぺん)】⇒この世のすべての存在は、様々な条件によって移り変わっていくこと。「有為」とは、原因によって生じた一切の現象を指す。元は仏教語。

生者必滅(しょうじゃひつめつ)】⇒生きている者は必ず死ぬということ。世のはかなさを表した言葉。この世に生を受けた者は、必ず滅び死ぬことから。元は仏教語。

会者定離(えしゃじょうり)】⇒出会った者はいつか必ず別れること。人生は無常であること。「会者」は「会った者」、「定」は「必ず」という意。元は仏教語。

栄枯盛衰(えいこせいすい)】⇒栄えたり衰えたりすること。「栄枯」は、草木が生い茂ることと枯れしぼむこと。

是生滅法(ぜしょうめっぽう)】⇒命あるものは、いつかは必ず滅びて死に至ること。元は仏教語。「涅槃経(ねはんぎょう)」という経典の一句から。

「諸行無常」の類義語は数多くありますが、いずれも「物事は常に移り変わっていくこと」を表しています。

ほとんどの類義語は仏教を由来とするものですが、万物流転だけが異なります。万物流転は「万物は流転する」というヘラクレイトスの思想を日本の四字熟語に替えたものです。

「すべての事物は絶え間なく移り変わっていく」という意味で仏教と共通した考えを持っています。

諸行無常の対義語

 

逆に、「反対語」としては次のようなものが挙げられます。

永久不滅(えいきゅうふめつ)】⇒いつまでも滅びずに、残り続けること。

永久不変(えいきゅうふへん)】⇒いつまでもずっと変わらないこと。

千古不磨(せんこふま)】⇒遠い昔からずっと変わらないこと。特に文化的なものや芸術品に対して使われる。

意味としては「ずっと変わらないもの」を表しますが、世の中には不変的なものは存在しません。したがって、使い方としては「永久不滅を目指す(理想)」もしくは「永久不変ではない」などのように用いるのが一般的です。

諸行無常の英語訳

 

「諸行無常」は、英語だと次のように言います。

Nothing is permanent.(永久的なものなどない。)

Life is impermanence.(人生は永久的ではない。)

「permanent」は「永久的な、永続する」という意味です。頭に「Nothing 」を付けて否定することで、「永遠に続くものなどない」という意味になります。

また、「impermanence」は「一時的な・永久的でない」という意味です。こちらは「人生(life)は一時的である」⇒「すべては移り変わっていく」という意味で考えると分かりやすいかと思われます。

英語圏では、仏教ではなくキリスト教やユダヤ教などが主流なため、「諸行無常」という概念が存在しません。ゆえに、ネイティブの人には「諸行無常」と直接伝えるのではなく、このように間接的に表現します。

その他、堅い言い方だと次のような表現も可能です。

All things are in a state of flux.(万物は流転する。)

Everything including myself is constantly changing.(私を含めた全ての物は絶えず変化している。)

諸行無常の使い方・例文

 

最後に、「諸行無常」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. 桜が散る姿を見ると、自然というのは諸行無常そのものであることを感じる。
  2. 人生とは諸行無常である。つい最近元気にしていた彼が急死してしまった。
  3. ずっと大事にしていたコップを割ってしまったが、これも諸行無常である。
  4. 諸行無常を理解することは、仏教の仕組みを理解することと同じである。
  5. ビジネスの世界は諸行無常であり、企業が同じ状態のまま存続することはない。
  6. 私の座右の銘が「諸行無常」なのは、過去に学んだ教訓から来ているためです。

 

諸行無常は元々仏教用語なため、使いにくいと感じるかもしれません。しかし、実際にはそのようなことはありません。

日常的な会話や自然などを表した文章、ビジネスなど様々な場面で使うことができます。一般的には、今まで続いていたものが終わってしまったとき、すなわち世の中のはかなさを嘆くような時に使うことが多いです。

ただ、これをもう片方の側面から言うならば、「どんなに辛い事でもそのまま永遠に続くことはない」ということです。今は苦しくてもいずれは苦しみから立ち直り、喜べる日々が来るのが世の中の真理です。

諸行無常は、必ずしもネガティブな意味というわけではなく、このようにプラスの意味も含まれていると考えるとよいでしょう。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

諸行無常」=この世のすべてのものは移り変わっていき、不変なものはないこと。

語源・由来」=仏教の根本思想である「三法印」の中の一つから。

類義語」=「万物流転・盛者必衰・有為転変・生者必滅・栄枯盛衰」など。

対義語」=「永久不滅・永久不変・千古不磨」など。

英語訳」=「Nothing is permanent.」「Life is impermanence.」

諸行無常は「常に移り変わっていくこと」を表した四字熟語です。世の中のすべてのものは移り変わっていき、永遠に続くようなものはありません。そう考えれば、日々の悩みや不安も少しは軽減されるのではないでしょうか。