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風林火山 意味 わかりやすく 由来 続き 使い方 例文

 

風林火山」という四字熟語をご存知でしょうか?

孫子の兵法や戦国時代の武将、武田信玄とも関わりがある言葉です。最近では、座右の銘として掲げている人も多いようです。

ただ、この言葉の具体的なイメージがしにくいという人も多いと思われます。そこで本記事では、「風林火山」の意味や由来、使い方などをなるべく簡単に解説しました。

風林火山の意味・読み方

 

まず、「風林火山」の意味を辞書で引くと次のように書かれています。

【風林火山(ふうりんかざん)】

戦いにおける四つの心構えを述べた語。風のように素早く動いたり、林のように静かに構えたり、火のような激しい勢いで侵略したり、山のようにどっしりと構えて動かない意。転じて、物事の対処の仕方にもいう。時機や情勢などに応じた動き方。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

風林火山」は、「ふうりんかざん」と読みます。

意味は、戦いにおける理想的な心構えを述べたもので「時期や情勢などに応じた動き方のこと」を表します。

「風林火山」は、文字通り「風」「林」「火」「山」の4つの字から成る四字熟語です。

」=風のように素早く俊敏に動く。※相手を攻める時はスピードこそが重要である。

」=林のように静かに構える。※敵に気づかれないように静かに機会を待つことが重要である。

」=火のように激しい勢いで攻める。※敵を侵略する時は燃え上がる火のような勢いで激しく攻めるべきである。

」=山のようにどっしりと構えて動かない。※敵の挑発や攻撃に動じず、不動の構えをすることが重要である。

これを簡単にまとめると、「早く動き、静かに待ち、攻める時は激しく攻め、やられても動じない」となります。

「風林火山」は、元々は昔の戦(いくさ)を表した言葉でしたが、現在では昔のように戦が頻繁に起きるという世の中ではありません。そのため、意味としては「時に応じて適切な行動をとること」と考えればよいでしょう。

風林火山は『孫子』が由来

風林火山 孫子の兵法  由来

 

「風林火山」という四字熟語は、中国春秋時代の兵法書である『孫子(そんし)が由来です。「孫子」とは兵法書の名前であり、なおかつ「孫武(そんぶ)」という人物の敬称(敬意を込めてつけられた名前)でもあります。

紀元前500年頃に、呉の国の軍事思想家である「孫武(そんぶ)」という人物がいました。「孫武」は戦争の記録を細かく分析・研究し、「どうやったら戦争で勝てるか?」という理論を書物でまとめました。

この書物は、元々正式なタイトルがありませんでした。そのため、書いた人物の名前を取り『孫子』と名付けたわけです。

『孫子』の内容は主に13篇に分かれ、漢文にすると計6000文字です。内容を簡単にまとめると以下のようになります。

①「計」 =戦争は開始する前が大切である。

②「作戦」=事前に準備して作戦を固めることが大切である。

③「謀攻」=戦わなくて済む方法があればその方法を選ぶべきだ。

④「形」 =守りを固めて待つべきである。

⑤「勢」 =個人よりもチームである。

⑥「虚実」=敵を操ることをすべきである。

⑦「軍争」=攻める時は早く仕留めるべきである。(風林火山)

⑧「九変」=9パターンの変化を考慮に入れるべきである。

⑨「行軍」=軍を進める上での注意事項を守るべきである。

⑩「地形」=地形によって戦術を変えるべきである。

⑪「九地」=9種類の地勢に応じた戦いをすべきである。

⑫「用間」=スパイを送り込んで敵情視察をすべきである。

⑬「火攻」=火攻めは5通りの変化に合わせた戦い方が必要である。

全13篇の内7篇目に「風林火山」の内容を示した兵法が出てきます。孫子の兵法と聞くと、何となく戦い方などの技術面を中心に書かれていそうですが、実際にはそうではありません。

『孫子』の中身の大半は、戦う前の準備や作戦であったり、そもそも戦わずにいかに勝つかといった戦略面を書き記したものなのです。

そして以下は、第7篇の中の原文と書き下し文です。

疾如風 疾(はや)きことの如(ごと)く

徐如林 徐(しず)かなることの如(ごと)く

侵掠如火 侵し掠(かす)めることの如(ごと)く

不動如山 動かざることの如(ごと)し

見て分かるように、「風林火山」という言葉がそのまま書かれているわけではありません。つまり、4つの文中のそれぞれの漢字を合わせて、「風林火山」が作られたということです。

風林火山には続きがある?

風林火山 続き その後

 

「風林火山」には、続きがあります。以下、実際の原文と書き下し文です。

難知如陰、動如雷霆

知り難きこと陰の如し、動くこと雷霆の如し

(しりがたきかげのごとし、うごくことらいていのごとし)

知り難きこと陰の如し」とは、「味方の戦略は陰のようにひそめるべきである」という意味で、「情報を隠すこと・守ること」の大切さを説いています。

そして、「動くこと雷霆の如し」とは「兵を動かすときは、雷のように激しく動かすべきだ」という意味です。こちらは攻撃する際のスピードの重要さを説いたものです。

そして、この続きの部分をくっつけて「風林火山陰雷」とすることもあります。

速く動き出す風、静かなる林、侵略は火の如く、動かない時は山、隠れる時は陰、動く時は雷。

要するに、「静かにするときは静かにし、早く動く時は早く動け」という意味です。もっと簡単に言うと「戦いというのはじわじわと長く続けてはいけない」という内容を示しています。

これは孫子の第二篇「作戦」にも次のように書かれています。

戦は「攻撃する」と決めたら、迅速に行わないといけない。なぜなら、長く続けていると資金面や体力面で兵全体がどんどん疲弊していくからである。長い戦いには何のメリットもない。

風林火山と武田信玄の関係性

風林火山 武田信玄 関係は

 

「風林火山」と聞くと、戦国時代の武将である武田信玄を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?実際に、武田信玄は戦の時に次の14文字を旗に記していたとされています。

「疾如、徐如、侵掠如、不動如

彼が合戦に挑んだ数はなんと130回とも言われ、敵軍はこの軍旗を見ただけで恐怖心を抱いたとされています。

ただ、すでに説明したように「風林火山」の由来は『孫子』から来ています。江戸時代の記録にも武田信玄の軍旗という記載だけが残っており、別に武田信玄が最初に使い出したからというわけではありません。

武田信玄の愛読書は『孫子』だとは言われていますが、なぜ孫子の中から部分的に切り取られているのかも謎です。したがって、日本で広まった風林火山に関しては現代になってからの創作ではないかという説もあります。

元々、孫子の兵法が世に大きく広まったのは、18世紀にフランスの軍人ナポレオンが『孫子』を読み、漢文から英語に翻訳されてからだと言われています。

日本には奈良時代頃には『孫子』の内容は伝わっていたとされていますが、正確な形になったのはもっと後だと言われています。いずれにしろ、日本で風林火山が使われるようになった経緯というのは未だ謎の部分が多いと言えます。

風林火山の類義語

 

「風林火山」の類義語は、次の通りです。

臨機応変(りんきおうへん)】⇒時と場合、状況に応じた行動をとること。
当意即妙(とういそくみょう)】⇒その場に応じて適切な行動をとること。機転を利かせること。
変幻自在(へんげんじざい)】⇒思いのままに変化するさま。自由自在なさま。
電光石火(でんこうせっか)】⇒動きが非常に素早いこと。※稲妻の光や石を打ったときに出る火の意から。

類義語の場合は、「その場の環境や状況に応じて行動をとること」「すばやく行動をとること」などを意味する言葉となります。なお、同じ意味の四字熟語(同義語)はありません。

風林火山の英語訳

 

「風林火山」は、英語だと「wind, forest, fire, and mountain」が直訳となります。

また、「Fu-rin-ka-zan」のように日本語の読み方をそのまま英語にして表すような場合もあります。ただ、これだけだと相手には伝わりにくいため、以下のように表現するとよいでしょう。

 

Swift as the Wind, Silent as a Forest, Fierce as Fire and Immovable as a Mountain.

 

「swift」は「速い・迅速な」、「silent」は「静かな・沈黙した」、「fierce」は「激しい・猛烈な」「immovable」は「不動の・動かない」という意味の形容詞です。また、「as」は「~として」を意味する前置詞です。

それぞれを合わせることで、「風として速く、林として速く、火として激しく、山として動かない」となります。

風林火山の使い方・例文

 

最後に、「風林火山」の使い方を実際の例文で紹介しておきます。

 

  1. 風林火山」の旗印の下、無敵を誇る武田信玄の軍が攻めてきた。
  2. 風林火山は、孫子の兵法の戦術の中から生み出された言葉である。
  3. 今回の作戦は、風林火山のように静かに待って素早く攻撃していこう。
  4. 会社の経営は、風林火山の心構えで迅速かつ適切に行わないといけない。
  5. ビジネスでは、風林火山のようにスピーディーな対応が求められる。
  6. 現代では、風林火山のごとく時代の流れに合わせた行動をとることが重要だ。

 

「風林火山」を用いる場面としては、主に2つに分かれます。

1つ目は、武田信玄や『孫子』などと関連した場面です。この場合は、過去の日本及び中国の歴史を語る中で用いられることが多いです。

そして2つ目は、ビジネスやスポーツなどを対象とする場合です。ビジネスやスポーツは、言わば現代における戦だと言えます。

結果を出して周囲に認められるためには、その時その場に合った適切な行動が求められます。ゆえに、「風林火山」を使う場面としては適しているということです。

どちらの使い方をすることも可能ですが、最近では後者の使い方をすることの方が多いです。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

風林火山」=時期や情勢などに応じた動き方時に応じて適切な行動をとること

元々の意味」=「風のように早く動き、林のように静かに待ち、火のように激しく攻め、山のように動じないこと」

語源・由来」=中国春秋時代の兵法書である『孫子』から。

類義語」=「臨機応変・当意即妙・変幻自在・電光石火」

英語訳」=「Swift as the Wind, Silent as a Forest, Fierce as Fire and Immovable as a Mountain.」

「風林火山」は、戦いにおける理想的な心構えと行動を説いたものです。何千年も前から伝えられている考え方ですが、現代にも通用する箇所は大いにあります。これを機にぜひ正しい意味を理解して頂ければと思います。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。