酸いも甘いも噛み分ける 意味 語源 使い方 類義語

「酸いも甘いも嚙み分ける」ということわざをご存知でしょうか?

実はこの言葉を投げかけられたら、とても喜ばしいことでもあります。「いつかは自分も言われるようになりたい」。この記事を読み終わる頃には、誰しもがそう思うでしょう。

今回は、そんな「酸いも甘いも嚙み分ける」の意味や由来、読み方、英語訳などを解説しました。

酸いも甘いも噛み分けるの意味・読み方

 

最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。

【酸いも甘いも噛み分ける(すいもあまいもかみわける)】

人生経験を積んで、人情・世事によく通じている。

出典:三省堂 大辞林

酸いも甘いも噛み分ける」は、「すいもあまいもかみわける」と読みます。

意味は「人生経験を積み、人情・世事によく通じていること」を表したものです。主に、人生経験が豊富で世の中のことをよく知っている人を例えるような際に用いられます。

例えば、社会に出てから様々な経験を積み、なおかつ豊富な知識を持ち合わせている人がいたとしましょう。そして、その豊富な知識を元に必要な答えを導いてくれたり、今までの経験を元に的確なアドバイスをしてくれたりしたとします。

このような人物は、まさに「酸いも甘いも嚙み分ける人だ」などのように言う事ができます。つまり、様々な経験により物事の良し悪しを知っている人のことを「酸いも甘いも噛み分けている」と表現するわけです。

なお、他の言い方としては「酸いも甘いも知り抜く」「酸いも甘いも知っている」などがあります。いずれの場合も意味自体は同じと考えてください。

ただし、「酸いも甘いも嗅ぎ分ける」とするのは誤用です。「嗅ぎ分ける」ではなく「嚙み分ける」が正しい使い方となります。

酸いも甘いも噛み分けるの語源・由来

 

「酸いも甘いも噛み分ける」は、酸っぱい味と甘い味の区別ができ、良し悪しを知り尽くしていることを語源とします。分かりやすいように、「酸い」「甘い」「嚙み分ける」の三つに分けてみます。

まず、「酸い」は「酸っぱい物・悪いこと」を意味します。「酸」が付く熟語としては「酸味」(酸っぱい味)や「辛酸」(辛い目・苦しい思い)などがあります。

そして、「甘い」は「甘い物・良いこと」を意味します。「甘」が含まれる言葉は、「甘味」(甘い味・面白み)や「甘い汁を吸う」(苦労せずに利益だけ得る)などが代表的です。

最後の、「嚙み分ける」は、「違いを区別して味わうこと」を意味します。ここで言う違いとは「酸い」と「甘い」の違いなので、つらくて苦しい人生経験を「酸い」、楽しくて心地よい人生経験を「甘い」に例えています。

以上、まとめますと、「酸いも甘いも噛み分ける」は「酸っぱい味と甘い味を区別して、良い点も悪い点も知り尽くしていること」が原義となります。転じて、「長い間に色々な人生経験を積み、人情や世の中の事によく通じている」という意味になるわけです。

酸いも甘いも噛み分けるの類義語

酸いも甘いも噛み分ける 類義語 言い換え

続いて、「酸いも甘いも噛み分ける」の類義語を紹介します。

機微に通じる(きびにつうじる)】⇒表面だけでは捉えることのできない微妙な事情や趣を詳しく知っている。「機微」とは「表面上は分かりにくい、人の心の微細な動き」を表す。
世慣れる(よなれる)】⇒多くの経験を積み、世間の事情に通じている。「世慣れ」は文字通り「世間のことに慣れる」という意味。
花も実もある(はなもみもある)】⇒外観だけではなく、内容も優れていること。「花」を「外側・外観」、「実」を「内側・内容」に例えた表現。
世故に長ける(せこにたける)】⇒世間の事情を詳しく知っていること。「世故」とは「世間の習慣・俗事・事情」という意味。

以上、四つの類義語を紹介しました。この中だと、「世慣れる」と「世故に長ける」は比較的近い意味だと言えます。

人生で色々な経験を積んだことを元にして、良い事も悪い事も何でも知っている様子であれば類義語となります。

酸いも甘いも噛み分けるの英語訳

 

「酸いも甘いも噛み分ける」は、英語だと次のように表現します。

①「taste the bitter and the sweet(苦しみや喜びを味わう)」

②「know both the bitter and the sweet of life(人生の苦しみと喜びを知っている)」

①の「bitter」は「苦味・苦しみ」、「sweet」は「甘味・優しさ・喜び」という意味です。「the bitter and the sweet」で、「酸いも甘いも」を表すことができます。

また、「taste」は「味見をする」という意味が一般的ですが、比喩的な表現として「喜びや悲しみなどを経験する」という意味でも使うことができます。

そして②の「know」は「知っている」、「both」は「両方」、「life」は「人生」という意味です。これらを合わせることで、「人生の苦しみと喜びの両方を知っている」⇒「酸いも甘いも噛み分ける」と訳すことができます。

例文だと、次のような言い方です。

You have tasted the bitter and the sweet.(あなたは酸いも甘いも嚙み分けた人です。)

She has known both the bitter and the sweet of life.(彼女は世間の酸いも甘いも嚙み分けています。)

酸いも甘いも噛み分けるの使い方・例文

 

最後に、「酸いも甘いも噛み分ける」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. 私の祖父は、世の中の酸いも甘いも嚙み分けた人物である。
  2. 彼女は酸いも甘いも嚙み分けているので、今度質問してみます。
  3. この地区の自治会長は、酸いも甘いも嚙み分けた頼れる人物です。
  4. 彼は酸いも甘いも嚙み分けているから、心配する必要はないだろう。
  5. 先生は酸いも甘いも嚙み分けた人だから、文化祭のことを聞いてみよう。
  6. 部長は酸いも甘いも噛み分けるほど経験豊富だから、一度相談するといい。

 

「酸いも甘いも噛み分ける」は、身近にいる頼りになる人や心の支えになってくれるような人を対象とします。そして、そのような頼りになる人物を褒めるような場合に使われます。

したがって、基本的には良い意味として使われることわざだと考えて問題ありません。人生経験が豊富で信頼できる人に使うのが適しているでしょう。

また、言い回しとしては「酸いも甘いも嚙み分けた」や「酸いも甘いも嚙み分けて」のように形を少し変えて使うことが多いです。さらに、「酸いも甘いも知りぬく」「酸いも甘いも知り抜いた」などの表現もよく使われます。合わせて覚えておきましょう。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

酸いも甘いも嚙み分ける」=人生経験を積み、人情・世事によく通じていること。

語源・由来」=酸っぱい味と甘い味を区別して、その良い点も悪い点も知り尽くしていることから。

類義語」=「機微に通じる・世慣れる・花も実もある・世故に長ける」

英語訳」=「taste the bitter and the sweet」「know both the bitter and the sweet of life」

「酸いも甘いも嚙み分ける」は、世の中のことをよく知っていて信頼できる人に使える言葉です。周りにいる心強い人を表すときにぜひ使ってみてください。