「やわらかい」を漢字で書く場合、次のように二つの書き方があります。
「柔らかい毛布」「軟らかいお肉」
両方ともよく見る表記ですが、この二つはどう使い分ければいいのでしょうか?本記事では、「柔らかい」と「軟らかい」の違いを詳しく解説しました。
柔らかい・軟らかいの意味
まず、「やわらかい」という語を辞書で引いてみます。
【柔らかい/軟らかい】
①ふっくらとして堅くない。また、しなやかである。
②おだやかである。柔和である。
③堅苦しくない。融通がきく。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「やわらかい」の意味は全部で三つあります。
主な意味としては①の「ふっくらとした・しなやかである」、②の「おだやかである」がよく使われます。
それぞれの使い方は、①「やわらかい食べ物」、②「やわらかい人柄」などが多いです。つまり、物や人に対して使われることが多い言葉ということになります。
このように、物や人に対してよく使われる「柔らかい・軟らかい」ですが、多くの辞書ではどちらも一つの項目として統一されています。そのため、どちらを使ってもよいと思う人もいるかもしれません。
ただ、一般的には使い分けがされているようです。辞書の記述がすべてではないということになります。
柔らかいと軟らかいの違い
両者の漢字を比較してみると、「柔」という字は「柔毛・柔和・柔道・柔弱」などの熟語があります。元々は「曲げても折れない、しなやかさ」という意味が「柔」の由来と言われています。
一方で、「軟」という字は、「軟体・軟球・軟骨・軟鉄」などの熟語があります。こちらは元々、「手ごたえがない」という意味からきています。もっと簡単に言えば「ぐんにゃりした」という意味です。
よって、両者の本来の意味は次のようになります。
「柔らかい」=しなやかな。(おだやかな)
「軟らかい」=ぐんにゃりした。(手ごたえがない)
イメージとしては、「柔らかい」は「ふわっとしたやわらかさ」、「軟らかい」は「グニャッとしたやわらかさ」と考えれば分かりやすいでしょう。
柔らかいと軟らかいの使い分け
以上の事から考えますと、両者の使い分けは以下のように定義できます。
「力を加えた後、形が元に戻るかどうか」
「柔らかい」は、形が元に戻る場合に使います。一方で、「軟らかい」は、形が元に戻らない場合に使います。
具体例を挙げますと以下の通りです。
【形が元に戻る場合】
- 柔らかい枕。
- 柔らかい布団。
- 柔らかいイス。
- 柔らかいボール。
【形が元に戻らない場合】
- 軟らかい肉。
- 軟らかいご飯。
- 軟らかい土。
- 軟らかい地盤。
「柔らかい」の方は、ふわっとしていて、なおかつ乾燥しているようなやわらかさです。そのため、手で押しても形がある程度は元の状態に戻ります。
対して、「軟らかい」の方は、グニャッとしていて、水分が入ったような湿ったやわらかさです。したがって、こちらは強く押すと形は戻らなくなってしまうのです。
まとめると、
「柔らかい」=(手で押しても)形が元に戻る。
「軟らかい」=(強く押すと)形が元に戻らない。
となります。
基本的には上記のような使い分けで問題ありません。ただ、場合によっては両者の線引きは曖昧になることもあります。
例えば、「柔軟剤」や「柔軟体操」などの言葉です。「柔軟(じゅうなん)」という言葉は「柔」と「軟」が合わさっており、いわば両者が混合してできたものです。
このように、「具体的にどれだけやわらかいか?」という基準が曖昧になる場合もあります。したがって、もしもどちらを使うか迷った場合は、「柔らかい」を使っておく方が無難と言えるでしょう。なぜなら、「柔らかい」の方が意味も広く、使用例も多いからです。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で確認しておきます。
【柔らかいの使い方】
- 柔らかいベットの上で、一日の疲れを癒した。
- 柔らかいイスに腰かけて、友達と会話しました。
- 柔らかいゴム製のバットで野球をするつもりです。
- 怪我防止のため、柔らかいゴムボールを選択した。
- 彼女は人当たりが柔らかく、相手に良い印象を与える。
【軟らかいの使い方】
- 雨が降ったため、グラウンドがだいぶ軟らかくなった。
- 圧力鍋で煮込んだたため、魚の骨は軟らかくなっていた。
- マグロの大トロは赤身と比べると身が軟らかい部位である。
- 彼女は硬いご飯よりも軟らかいご飯の方が好みのようだ。
- この土地は軟らかい土壌なので、作物を育てるのに適している。
補足すると、両者の対義語は「柔」⇔「剛」、「軟」⇔「硬」です。
「剛」という字は「剛球」「剛毛」「剛健」などがあるように「力強さ」や「勇ましさ」を表します。そのため、「しなやかさ」を表す「柔」の反対語となります。
一方で、「硬」の方は、「硬球」「硬貨」「硬材」などがあるように「物理的な硬さ」を表した字です。したがって、「手ごたえがない様子」を表す「軟」が反対語となります。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「柔らかい」=しなやかな・おだやかな。(ふわっとしたような乾燥したやわらかさ)
「軟らかい」=ぐんにゃりした・手ごたえがない。(グニャッとしたような湿ったやわらかさ)
どちらも「やわらかさ」を表すことに変わりはありません、ただ、力を加えて元に戻るのが「柔らかい」、逆に力を加えて戻らないのが「軟らかい」だと覚えておきましょう。