「おさめる」を漢字で書く場合、「収める・納める・治める・修める」の4つがあります。どれも受験や漢字検定によく出てくる重要な漢字です。
ただ、具体的にどのように使い分ければよいのかという問題があります。そこで今回は、これらの「おさめる」の違いについて分かりやすく解説しました。
収めるの意味
まずは、「収める」です。「収める」の意味は全部で3つあります。
【収める(収まる)】
①中に入れる・しまう・記録する。
②自分のものにする・結果を得る。
③静める・元の安定した状態にする。
①【中に入れる・しまう・記録する】
- 財布にお金を収める。
- カメラに写真を収める。
- 映像をテープに収める。
- 矛(ほこ)を収める。
- 目録に収める。
※「目録」とは「本や雑誌の目次」のことです。
「収」を使った熟語は、「収容」「収録」などがあります。したがって、「収める」は「何かを収容したり記録を残したりする」という意味を持ちます。
②【自分のものにする・結果を得る】
- 勝利を収める。
- 成功を収める。
- 成果を収める。
勝利や成功などの良い結果を手に入れた場合に使います。「収める」の使い方としては、頻出のものです。
③【静める・元の安定した状態にする】
- 怒りを収める。
- インフレが収まる。
- 強風が収まる。
- 地震の揺れが収まる。
「事態を収拾する」などと言うように、「収」には「何かを静める」という意味があります。したがって、この場合の「収める」は物事を静めたり安定させたりするような意味を持ちます。
なお、この意味の場合は「治める」と同じ意味で使われる場合もあります。
納めるの意味
次に、「納める」の意味です。
【納める(納まる)】
①あるべきところに入れる。
②渡すべき金や物を払う・渡す。
③終わりにする。
①【あるべきところに入れる】
- 倉庫に納める。
- 箱の中に納める。
- 写真に納める。
- 遺体を棺に納める。
ものを本来あるべき場所に入れるような時に使われます。「おさめるべき場所に、当然のものを入れる」という意味が強調されるのがポイントです。
②【渡すべき金や物を払う・渡す】
- 税金を納める。
- 罰金を納める。
- 会費を納める。
- 注文の品を納める。
お金を相手に支払うという意味の「納める」です。これは「納税」という熟語もあるように、比較的覚えやすいでしょう。
③【終わりにする】
- 今日が仕事納めとなる。
- スキーの仕納めの時期だ。
- 今年で見納めの行事です。
「納」という字は「終わり」という意味も含んでいます。例えば、「大納会(だいのうかい)」という言葉です。「大納会」とは株の取引で一年の最後に行われる催し物のことです。
④【任務に就任する】
- 会長の地位に納まる。
- 社長のいすに納まる。
地位や任務に就任することも、「納まる」と言います。
治めるの意味
続いて、「治める」の意味です。
【治める(治まる)】
①統治する。
②苦痛が去る。
③静める・混乱した状態を元に戻す。
①【統治する】
- 国を治める。
- 領土を治める。
- 水を治める。
「統治する」とは簡単に言うと「支配する」という意味です。
これは、政治の「治」がイメージしやすいと思います。つまり、「政治家などが国や国民を統治する」ということです。
②【苦痛が去る】
- 頭痛が治まる。
- 腹痛が治まる。
- せきが治まる。
- 風邪が治まる。
頭痛や腹痛、せきなどの体の不調が治るような時に使います。これは「治療」の「治」と同じ漢字から来る意味です。
③【静める・混乱した状態を元に戻す】
- 紛争を治める。
- 暴動を治める。
- 騒ぎが治まる。
- 混乱した国が治まる。
- 腹の虫が治まらない。
騒ぎや暴動、混乱した状態などが静まり、問題事が治るような時に使います。
ちなみに、「治める」の③の意味は「収める」の③の意味とほぼ同じです。
「治める」=静める。混乱した状態を元に戻す。
「収める」=静める。元の安定した状態にする。
したがって、以下のような例文があれば「治める」と「収める」のどちらを使っても問題ないことになります。
- 内乱がおさまる。
- 騒ぎがおさまる。
- 風がおさまる。
修めるの意味
最後は、「修める」です。
【修める】
①学問などを修得する。
②心や行いを正しくする。
①【学問などを習得する】
- 学問を修める。
- 英語を修める。
- 武道を修める。
- フランス語を修める。
「単位を修得する」「柔道の技を修得する」などと書くことからも分かるように、「修める」には「学問や技芸を学んで会得する」という意味があります。
②【心や行いを正しくする】
- 身を修める。
- 素行が修まらない。
「修練・修行」などの熟語があるように、心や行いを良くする場合も「修める」を使います。
収める・納める・治める・修めるの違い
以上の事から、それぞれの大まかな意味は次のように定義できます。
「収める」=「中に入れる・結果を得る・静める」
「納める」=「入れる・金を払う・終わりにする・就任する」
「治める」=「統治する・苦痛が去る・静める」
「修める」=「習得する・心や行いを正しくする」
違いを覚えるコツとしては、それぞれの漢字を使った熟語をなるべく覚えておくことです。
「収める」は「収容・収録・成功・収拾」、「納める」は「納骨・納税・見納め」などがあります。
そして、「治める」は「統治・治療・治安」、「修める」は「学修・修練・修行」などがあります。
それぞれの熟語を覚えておけば、例えば同じ「中に入れること」でも「収める」と「納める」は明確に異なることが分かります。
「収める」は、元々「収容」や「収集」を語源とする言葉です。したがって、中に入れるものは「義務」というよりも「単にモノを入れる」という意味の方が大きいです。
対して、「納める」の方は「おさめるべき場所に、当然のものを入れる」という意味が強調されます。
例えば、「納骨(のうこつ)」や「納棺(のうかん)」などは、亡くなった人の骨や遺体を箱の中に入れる行為です。入れても入れなくてもいいわけではなく、「必ず入れる」という人間としての義務のような行為です。
また、所得税の「納税」や保険料の「納付」なども国民としての義務です。このように、義務的な意味が強調される場合は「納める」の方を使うと分かるわけです。
もしもどれを使うか迷った場合は、このように漢字本来の意味を思い出すのがよいでしょう。
確認問題
では、今までの内容を理解できたか問題を解いてみましょう。次の「おさめる」を漢字に直すとどうなるでしょうか?
①違反したので、罰金をおさめる。
②海外へ留学して、英語をおさめる。
③一致団結して、勝利をおさめる。
④薬を飲んだので、せきがおさまった。
⑤社長の地位におさまる。
⑥衣服をクローゼットにおさめる。
⑦騒ぎがやっとおさまる。
正解は、①⇒納める②⇒修める③⇒収める④治まった⑤納まる⑥収める⑦収まるor治まるとなります。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「収める」=①中に入れる・しまう・記録する。②自分のものにする・結果を得る。③静める・元の安定した状態にする。
「納める」=①あるべきところに入れる。②渡すべき金や物を払う・渡す。③終わりにする。④任務に就任する。
「治める」=①統治する。②苦痛が去る。③静める・混乱した状態を元に戻す。
「修める」=①学問などを修得する。②心や行いを正しくする。
違いを覚えるのは、最初は大変だと思います。ポイントは、漢字の成り立ちを思い出すことです。ただ丸暗記するよりも「納めるなら納税だから義務のおさめるだったな?」のように覚えておけば意味を忘れにくいでしょう。