のっぴきならない 意味 語源 事情 類語 例文 英語

「のっぴきならない」という慣用句をご存知でしょうか?使い方としては「のっぴきならない事情で帰ります」「のっぴきならない状況になった」などのよに言います。

何となく方言のようにも聞こえますが、実はちゃんとした標準語です。もしもこの言葉の意味を理解できれば、ビジネスや私生活にも大きく生かせることでしょう。

今回は、「のっぴきならない」の意味や短文、由来、英語訳などを詳しく解説しました。

のっぴきならないの意味

 

最初に、基本的な意味を紹介します。

【のっぴきならない】

引き下がることも、避(さ)けることもできない。進退きわまる。どうにもならない。

出典:三省堂 大辞林

のっぴきならない」とは「引き下がることも避けることもできない・進退きわまる」という意味です。

簡単に言うと「動きがとれないこと・どうにもならないこと」だと考えて下さい。

分かりやすい例文を紹介すると、次のようになります。

のっぴきならない用事がありますので、今日は早めに帰らせていただきます。

この場合はビジネスなどにおいて「どうにもならない用事があるので帰る」という内容を伝えています。具体的には、「家族の問題」や「法事の問題」といった他人が深入りできないような用事があるという意味です。

このように、「物事がどうにもならない様子・避けられない様子」を表した言葉が「のっぴきならない」という慣用句となります。

「のっぴきならない」は、一般的に後ろに「用事」や「事情」がくることが多いです。どちらの場合もその人が困難な状況にいることを意味します。

したがって、この言葉を使われた側としては「何か事情があるのかな?」「これ以上は聞かないでおこう」などと考えるのが自然な流れだと言えます。

のっぴきならないの語源・由来

 

「のっぴきならない」は「のきひき」が転じたものと言われています。

「のきひき」は漢字で「退」と書き、「退(しりぞ)く」と「引く」はどちらも「避ける・逃れる」という意味です。

この「退き引き」の後ろに「ならない」という否定をつけ加えると、「避けることも逃れることもできない」という意味になります。つまり、「身動きをとることができない」ということです。転じて、「どうしようもない」という意味になるわけです。

現在でも一部の辞書では、「のっぴきならない」を「退っ引きならない」と表記しているものもあります。ただし、読みにくい漢字なので一般的にはひらがなで使うことが多いようです。

いずれにせよこの言葉はどの辞書にも必ずある共通語です。したがって、冒頭でも説明したように、どこかの地方にあるような方言ではないということは押さえておきましょう。

のっぴきならないの類義語

のっぴきならない 類義語 同義語

続いて、「のっぴきならない」の類義語を紹介します。

抜き差しならない】⇒身動きがとれない。どうにもならない。「抜き差し」は「抜くことと差すこと」、転じて「身動き」という意味。
進退窮まる(しんたいきわまる)】⇒どうにもならない困難な状況のこと。「進んでも退いても窮まる」という意味。
逃げ場のない】⇒追い詰められた状況のこと。文字通り「逃げる場所がない」という意味。
引っ込みがつかない】⇒一度手を出した以上、退くことができない。「引っ込み」とは「退くこと」を表す。

以上、4つの類義語を紹介しました。いずれも共通しているのは、「どうしようもない様子・困難な様子」といった意味です。

この中でもほぼ同じ意味なのが「抜き差しならない」だと言えます。「抜き差しならない」は「のっぴきならない」の同義語と言っていいでしょう。

また、その他だと「背に腹は代えられない」も類義語と言えます。「背に腹は代えられない」とは「やむをえないこと・仕方ないこと」という意味です。こちらも同様にその人が追い詰められた状況を表します。

のっぴきならないの英語訳

 

「のっぴきならない」は、英語だと次のように言います。

helpless

unavoidable

「helpless」は「助けのない・無力な」、「unavoidable」は「避けることができない」という意味です。

どちらも「何もできない様子」を表す形容詞なので、「どうしようもない」という意味で使うことができます。

例文だと、次のような形です。

Having no weapons, he was completely helpless.(武器を持っていなかったので、彼はのっぴきならない状態だった。)

She left early because of unavoidable circumstances.(彼女はのっぴきならない事情により早退した。)

のっぴきならないの使い方・例文

 

最後に、「のっぴきならない」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. のっぴきならない事情があるため、本日は早めに退社させて頂きます。
  2. 部長が早めに帰るなんて、何かのっぴきならない用事があるに違いない。
  3. のっぴきならない事情により、彼女は会社を休職することになった。
  4. その政治家は失言により、のっぴきならない状況に追い込まれたようだ。
  5. 住む家も仕事も失い、のっぴきならない事態になってしまったことを悔いた。
  6. 課長は自分がのっぴきならない立場であることにようやく気付いたようだ。
  7. 申し訳ありませんが、のっぴきならない事情が生じたので、早退させて頂きます。

 

「のっぴきならない」は、例文のようにビジネスシーンで使われることが多い言葉だと言えます。特に、最初の例文のようにビジネスメールの中で用いられることが多いです。

ビジネスメールでは、会社を退職・休職する時、あるいは退社したりする時などに理由を説明しなければいけません。なぜなら、いきなり「退社します」「早退します」などといっても会社の上司は納得できないからです。

しかしながら、退社する側も詳細な理由をいちいち説明するのも億劫な場合があるでしょう。そんな時に、「のっぴきならない事情がありますので~」などのように言うことで相手にうまく自分の状況を伝えるわけです。

こちらが「のっぴきならない事情」と言うことにより、相手も「深く理由を聞かれたくないのかな?」と察してくれます。本当にあなたがどうしようもない状況にあろうとなかろうと、この言葉を使うことで相手から一定の距離を取れるのです。

ただ、もしもウソやごまかしなどを言った後に詳細な事情などの根拠を求められた場合、後々面倒なことにもなります。場合によっては、あなたの信用問題に発展する可能性もあります。

したがって、もしもこの言葉を実際に使う際は、後からしっかりと事情を説明できるような証拠などを残しておくのがよいでしょう。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

のっぴきならない」=動きがとれない・どうにもならない。

語源・由来」=退き引きできないのは、何も身動きがとれないから。

「類義語」=「抜き差しならない・進退窮まる・逃げ場のない・引っ込みがつかない」

英語訳」=「helpless」「unavoidable」

「のっぴきならない」は社会人の方であればこの先使う機会があると思われます。自分の語彙力を増やす意味でも、ぜひ正しい場面で使ってみてはいかがでしょうか?