「なかみ」を漢字で書く場合、「中身」と「中味」の二つがあります。
「財布の中身」「中味のない話」
上記の「なかみ」には一体どんな違いがあるのでしょうか?また、どちらを使えばよいのでしょうか?
本記事では、「中身」と「中味」の違いについて詳しく解説しました。
中身・中味の意味
まず、「なかみ」の意味を調べると次のように書かれています。
【中身/中味(なかみ)】
①中に入っているもの。中に入れてあるもの。
②物事の内容・実質。
③刀剣の刃の部分。刀身。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「中身」と「中味」は、辞書だと一つの項目として載せられています。
主な意味としては、三つあります。
①は「中に入っているもの」という意味です。この場合は、実際に目で見ることができるものが対象となります。
【例】
- 箱のなかみを当てる。
- 財布のなかみを確認する。
一方で、②は「物事の内容・実質」という意味です。この場合は、目で見ることができないものが対象となります。
【例】
- なかみのない話。
- なかみのない人間。
つまり、「面白くない・つまらない」など「精神的ななかみ」ということです。
そして、最後の③は「刀剣の刃の部分」という意味です。
ただし、この意味では使うことはほとんどありません。一種の専門用語に近いため、実際には覚える必要はないでしょう。
中身と中味の違い
「なかみ」の大まかな意味は理解できました。では、「中身」と「中味」には一体どのような違いがあるのでしょうか?
両者の語源を確認してみると、「中身」の「身」は「身体」「身長」などと同じ漢字です。よって、「中身」は「目に見える大きさや長さがあるもの」という意味が含まれることになります。
一方で、「中味」の「味」は、「意味」「正味」などと同じ漢字です。つまり、こちらは「目に見えない内容や本質があるもの」という意味が含まれることになります。
したがって、漢字の語源から考えると以下のような違いになります。
「中身」=目で見えるもの。「中味」=目で見えないもの。
ただ、実際にはこの二つの使い分けはややこしいです。例えば、紙パックのジュースやシャンプーの容器には以下のような記述がよく書かれています。
- 「中味が飛び出す恐れがあります」
- 「中味をつめ替えてください」
この場合、ジュースもシャンプーも目に見えるものです。一体なぜこのような表記がされているのか、そのあたりの理由を詳しくみていきましょう。
中身と中味の使い分け
結論から言いますと、両者の使い分けに迷った場合は、原則として「中身」の方を使うと考えれば問題ありません。
順を追って説明していきますと、まず大事なのは「中味」の方は「当て字」ということです。
「当て字」とは「漢字本来の意味を無視して作った字が一般的に広まったもの」です。つまり、元々は「中身」という漢字だけが存在し、「中味」の方は存在しなかったのです。
「なかみ」には、元々精神的な意味はありませんでした。ところが、後から「中味」という漢字が作られた結果、両方とも広まるようになったのです。
よって、漢字本来の歴史から考えれば「中身」を使うのが正しいという結論になります。その証拠に、日本新聞協会・日本放送協会では「中身」だけを使うことで統一しています。
また、辞書の説明でも「中身・中味」という順で書かれるか、「中味は当て字」などと注記するものがほとんどです。
辞書の原則として、「先頭の漢字を優先的に使う」という暗黙のルールがあります。つまり、この場合だと「中身」の方を使うということです。
このように、「なかみ」という言葉は、漢字の語源ではなく漢字の種類で使い分けているのが現状なのです。
ちなみに、以下のような辞書は一つもありません。
- 「中味」だけしか書かれていないもの。
- 「中味・中身」の順番で記されたもの。
使い方・例文
最後に、「なかみ」の使い方を例文で紹介しておきます。
【中身の使い方】
- 持ち物検査でカバンの中身をすべて出す。
- ペットボトルの中身を一気に飲み干した。
- 送られてきた封筒の中身をチェックした。
- 彼は服装は立派だが、中身のない人だ。
- 見た目は成長したが、中身が全く変わらない。
【中味の使い方】
- 調味料の表示を見て、中味をチェックする。
- 中味が飛び出す恐れがありますので、気をつけてください。
- 中味を使い切ってから、つめ替えるようにしてください。
すでに説明した通り、一般的には、「中身」の方を使えば何も問題ありません。こちらは「目に見えるもの・見えないもの」の両方に対してよく使われています。
対して、「中味」の方は企業の商品説明や広告の文言に対して使うことが多いです。企業というのは、いかに消費者に商品をうまく伝えられるかを重視しています。そのため、当て字である「中味」の方を使っているわけです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「中身・中味」=①「中に入っているもの」②「物事の内容・実質」
「違い」=本来の語源としては①が「中身」、②が「中味」となる。
「使い分け」=原則として「中身」を用いる。「中味」は当て字なので使う場面は少ない。
「中味」は「当て字」なので、一般的な読み書きの際には使いません。迷った場合は「中身」を使うようにしてください。