今回は、
「兆候」と「徴候」
の違いを解説していきます。
「ちょうこう」という言葉は2つの漢字が使われていますね。
「地震が来る兆候」
「回復しそうな徴候」
どちらも「何かが起こる前ぶれ」というイメージの言葉ですが、
一体どう使い分ければいいのでしょうか?
さっそく、確認していきましょう。
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兆候・徴候の意味
まず、「ちょうこう」の意味を辞書で引くと、
次のように書かれています。
【兆候/徴候(ちょうこう)】
⇒物事の起こる前ぶれ。きざし。前兆。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
上記のように、
「兆候」と「徴候」は
1つの項目として載っています。
つまり、辞書の定義としては
両者は同じ意味ということになります。
意味としては、
「物事が起こる前ぶれやきざし」のことを言います。
例えば、以下のように使います。
台風が来るちょうこうが見える。
この場合はすなわち、
「雷が鳴り響いてポツポツ雨が降り出す」ようなことですね。
このように、何かが起こる前に発生する現象を
「ちょうこう」と言うのです。
兆候と徴候の違い
「ちょうこう」の大まかな意味は理解できました。
では、「兆候」と「徴候」は全く同じ意味なのでしょうか?
両者の語源を確認してみると、「兆候」の「兆」は、
元々「占い」という意味がありました。
昔の占いでは、亀の甲や獣骨を熱して、
割れてできた「ひび」を占いの印としていました。
この「ひび」を描いた象形文字が、
「兆」という字なのです。
現在でも、「吉兆」「凶兆」「予兆」などは
占いの時に使う言葉ですよね。
一方で、「徴候」の「徴」は、
「王様が隠れている人材を見つけて登用する」
というのが元々の意味です。
ここから、「徴」という字は、
以下のような意味として使うようになりました。
- 物事の気配が表面に少し浮かび出ること。
- 物事の起こりを予想させるしるしや証拠・事実のあらわれ。
現在でも、「特徴」や「象徴」という言葉は、
これらの意味が派生したものと言われています。
整理すると、
「兆候」=占いに出たしるし。
「徴候」=証拠となるしるし。事実のあらわれ。
となります。
つまり、
ほとんど同じ意味だが、わずかに違いがあるということですね。
ちなみに、両者に共通する「候」にも
「しるし」という意味があります。
こちらの方は、
「わずかに表面に出たしるし」という意味です。
よって、「占い」というよりも、
証拠や事実に近い意味となります。
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兆候と徴候の使い分け
それぞれの微妙な違いは理解できました。
なお、実際の所これらの言葉の原義は
現在ではそこまで意識されていません。
現在では、原則として「兆候」を用いるのが一般的です。
まず、新聞やニュースなどの
報道機関では「兆候」で統一しています。
別の言い方をすれば、
「徴候」の方は一切使わないということです。
報道機関というのは漢字の混同を避ける傾向にあります。
そのため、似たような漢字がある場合は基本的に統一するのです。
今回の場合は、
「字画が少ないため」という理由で「兆候」に統一されています。
要するに、簡単で分かりやすいので、
「兆」という字に統一したわけですね。
一般的には、他の業界もこのルールに則り、
報道機関の統一した漢字を使う傾向にあります。
ただし、場合によっては、
「徴候」の方を使うこともあります。
例えば、「医療業界」です。
医療業界では、
- がんの徴候
- 病気の徴候
- 異変の徴候
などの使い方をよくします。
これはおそらく、日本医学会の『医学用語辞典』に、
「徴候」という言葉が記されているからだと思われます。
医療業界に限らず、専門用語などで指定されている場合は
その漢字を優先的に使う傾向にあります。
そのため、医療に限っては
「徴候」の方を使われているのです。
以上のことから考えると、「兆候」と「徴候」の使い分けは、
「原則、兆候を用いるが、例外もある」という結論になります。
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前兆の意味
似たような言葉として、「前兆」もあります。
「前兆」の意味も押さえておきましょう。
【前兆(ぜんちょう)】
⇒何かが起こる前に現れるしるし。まえぶれ。きざし。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「前兆」とは、
「何かが起こる前に現れるしるし」という意味です。
この説明だけだと「兆候」と同じにも見えますが、
厳密には両者は違う意味を持った言葉です。
まず、「前兆」は、
「ある出来事が起こる前の具体的な現象」のことを意味します。
一方で、「兆候」は、
「ある出来事が起こりかける気配」のことを意味するのです。
簡単な例を出すと、以下のようになります。
「大雨の前兆」=辺りが暗くなり、黒い雲が現れ出す。
「大雨の兆候」=雷がゴロゴロ鳴り出し、小雨が降り出す。
つまり、時間の流れ的には、
「前兆」⇒「兆候」⇒「実際の現象」ということです。
「前兆」というのは、
「兆候」よりもさらに前に現れる現象のことを指すのです。
使い方・例文
では、最後にそれぞれの使い方を
実際の例文で確認しておきましょう。
【兆候の使い方】
- 外に出ると嵐が起こる兆候のような雰囲気だった。
- 怖い夢を見るなんて、悪いことが起きる兆候の気がする。
- 四つ葉のクローバーを見つけるのは、幸運の兆候だと言える。
- 危険な兆候がない時こそ、気を引きしめなければいけない。
【徴候の使い方】
- 1年ほど前から、胃ガンになる徴候を感じていた。
- ダルさを感じやすくなるのは、糖尿病の徴候である。
- 噴火の徴候が起こっているので、山登りはやめておこう。
【前兆の使い方】
- 犬や猫などの動物は、地震の前兆を予期できるらしい。
- 嵐が起こる前兆のような気がするので避難しておこう。
- 親しい友人によると、彼は犯罪を起こしそうな前兆があったらしい。
関連:>>違和感と異和感の違いとは?医療ではどっちが正しい?
まとめ
以上、今回の内容を簡単にまとめると、
「兆候」=物事が起こる前ぶれやきざし。「占い」が原義。
「徴候」=物事が起こる前ぶれやきざし。「証拠」や「事実」が原義。
「前兆」=ある出来事が起こる前の具体的な現象。
【原則として「兆候」を用いるが、医療に限り徴候を用いる。】
ということでした。
「兆候」と「徴候」は、意味自体にほとんど違いはありません。
そのため、どちらを使うか迷った場合は、
基本的には「兆候」を使えば問題ないです。
ただし、「徴候」の方は医療業界では専門用語として使われているため、医療に限っては「徴候」の方を使うのが望ましいと言えるでしょう。
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国語力アップ.com管理人
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