「虫が知らせる」「虫の居所が悪い」
中でもよく使われるのが
「虫がいい」という表現です。
でも、そもそもなぜ「虫」を使うのか
考えたことはないでしょうか?
実はこの言葉には、興味深い由来があったのです。
今回は、「虫がいい」の意味や語源、使い方
などを詳しく解説しました。
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虫がいいの意味
まずは、基本的な意味からです。
【虫がいい(むしがいい)】
⇒自分の都合ばかりを考え、身勝手である。図々しい。
出典:三省堂 大辞林
「虫がいい」とは
「自分の都合ばかりを考え、身勝手なこと」を表します。
例えば、次のような使い方ができます。
働かずにずっと生きていきたい?そんな虫がいい話ないよ。
人間、働かずに生きていけることなど不可能に近いですよね。
もしもそんな発言をすれば、
周囲からは「自分のことしか考えていない」
と思われても仕方ありません。
このように、
周りの事を考えず、自分の好きなように振る舞う様子のことを
「虫がいい」と言うわけです。
補足ですが、「虫がいい」は、
「虫が良すぎる」という言い方をすることもあります。
後者の方が、
より身勝手な様子を強調させた言葉だと考えて下さい。
例えば、
①「全く勉強しないのに東大に入るなんて虫がいい。」
②「全く勉強しないのに東大に入るなんて虫が良すぎる。」
上記二つの例文だと、
②の方がより身勝手な様子となります。
微妙な言い回しの違いで
イメージが変わってくるわけですね。
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虫がいいの語源・由来
次に、「虫がいい」の由来を解説していきます。
まずここで言う「虫」とは、
「三尸(さんし)」という虫のことを指しています。
「三尸」とは、中国の同教から伝わった教えで、
昔から人間の体内にいたと信じられていた虫のことです。
と言っても、実際に形のある虫がいたわけでなく、
あくまで架空の話の中でのことです。
ここで、「三尸」について簡単に触れておきます。
「上尸(じょうし)」⇒人間の頭の中にいて、首から上の病気を誘発したり金貨を好ませたりする。
「中尸(ちゅうし)」⇒人間の腹の中にいて、内臓の病気を誘発したり大食を好ませたりする。
「下尸(げし)」⇒人間の足の中にいて、下半身の病気を誘発したり色欲を好ませたりする。
つまり、この3種類の虫が、
人間の体に色々と悪さをするわけですね。
この三匹の虫たちは、
体の内側から人間の食べ物や物への欲を刺激し、
病気を引き起こすという特徴を持っています。
そして、虫たちは人間の都合などお構いなしに、
虫たちの都合良く好き勝手に活動をするとされていました。
この虫の状態がいいということは、
人間にとっては大変都合の悪いことです。
このことから、
「虫がいい」=「自分の都合ばかりを考えて、都合がいいこと」
という意味になっていったわけですね。
現代のように医学の発展していなかった時代、
昔の人々は言葉で説明できないような人の感情・行動などを
目に見えない体の中の虫に例えていました。
それが、このことわざの由来なのです。
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虫がいいの類語
続いて、「虫がいい」の
「類語」を見ていきましょう。
【差し出がましい(さしでがましい)】
⇒前にでしゃばるような感じを与える。
もっとシンプルな言い方だと、
「厚かましい」などもあります。
【千枚張りの面の皮(せんまいばりのつらのかわ)】
⇒恥知らずで厚かましいこと。
「顔の皮を千枚も貼り合わせたほど厚いこと」から来ています。
【辺り構わず(あたりかまわず)】
⇒周りの状況を考えない様子。
自分勝手に振る舞う時に使います。
【土足で踏みにじる(どそくでふみにじる)】
⇒相手にとって知られたくない事情を、遠慮せず聞くこと。
本来靴を脱ぐという礼儀を尽くす場面で、土足で踏み入る様子から来ています。
以上、四つの類語を紹介しました。
どれも「周りの事は考えず、自分勝手な様子」
を意味する言葉です。
「虫」という言葉を使わずとも
身勝手さを表す言葉は意外と多くあるわけですね。
虫がいいの英語
続いて、英語訳です。
「虫がいい」は英語だと次の2つの言い方があります。
①「selfish(自分勝手な・わがままな)」
②「asking too much(不当な要求をする)」
①の「selfish」は「わがままさ」や「身勝手さ」を表す形容詞です。
また、②の「asking」は「求める」
「too much 」は「過度に」という意味です。
合わせることで、
「必要以上に何かを要求する」という訳になります。
例文だとそれぞれ以下のような言い方です。
He is a selfish man.(彼はわがままな男だ。)
I think you are asking too much.(君はちょっと要求しすぎな所があるよ。)
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虫がいいの使い方・例文
最後に「虫がいい」の使い方を例文で確認していきます。
- それはあなたにとって虫がいい話よ。
- 手伝いもせず夕食だけ食べに来るなんて虫がいい人だ。
- 楽してお金をもらおうなんて虫がいい。やめておきな。
- 横領をした役員が多額の報酬を貰うなんて、虫がいい話だね。
- 勉強しないで試験に合格する?ずいぶん虫がいい話だね。
- あんなに怒らせておいて、謝りもせず許してもらう?虫がよい話だ。
すでに説明しましたが、
「虫がいい」は、自分勝手である様子を
体に宿る悪い虫を使って例えた慣用句です。
したがって、
基本はマイナスなイメージで使うと考えて下さい。
多くは自分の欲望をむき出しにする人を
批判するような時に使います。
この言葉を使うような時は、
相手がかなり図々しい人だと考えて問題ありません。
ちなみに、使い方としては、
「虫のいい話」「虫のいい人」のように、
語尾に「話」や「人」が来ることが多いです。
このことも覚えておくとよいですね。
まとめ
以上、内容を簡単にまとめると
「虫がいい」=自分の都合ばかりを考え、身勝手な様子。
「語源」=人の欲は体の中に宿る悪い虫(三尸)によって操られているという言い伝えから。
「類語」=「差し出がましい・千枚張りの面の皮・辺り構わず・土足で踏みにじる」など。
「英語」=「selfish」「asking too much」
ということでした。
人間は誰しも欲という名の「虫」を心に宿しています。
しかし、
何事も虫のせいにしていては意味がありません。
なので、最終的には
自分自身の欲をうまくコントールできるのが望ましいですね。
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国語力アップ.com管理人
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