「胸襟を開く」という慣用句があります。見慣れない漢字なので、初めて見る人は戸惑うかもしれません。
この「胸襟」が一体何を指しているのか気になるという人も多いのではないでしょうか?そこで本記事では、「胸襟を開く」の意味や語源、例文、類語などを含め解説しました。
胸襟を開くの意味・読み方
まずは、この言葉の意味と読み方です。
【胸襟を開く(きょうきんをひらく)】
⇒思っていることをすっかり打ち明ける。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「胸襟を開く」は、「きょうきんをひらく」と読みます。意味は「思っていることをすっかり打ち明けること」です。
例えば、あなたが長年付き合っている非常に仲の良い親友がいたとしましょう。付き合いの浅い友人であれば、表面上の会話はできてもなかなか本音で語り合うことができません。
しかし、その親友とは良い事も悪いことも本音で語り合えるほど仲が良いです。このような時に、「彼とは胸襟を開くことができる仲だ」などのように言うわけです。
つまり、「胸襟を開く」とは心の中に思っている本音を隠さずに打ち明けることを表す慣用句ということです。
なお、よくある誤用として「胸筋を開く」がありますので注意してください。「きん」は「筋肉」の「筋」ではなく、「襟」と表記するようにします。
胸襟を開くの語源・由来
「胸襟を開く」の「胸襟」とは「胸(むね)」と「襟(えり)」のことを指します。
「胸」とは「首と腹の間の部分」、そして「襟」とは「衣服の首回りの部分」を表した言葉です。つまり、「胸襟」というのは具体的に言うと次のような箇所を示すことになります。
上記の水色で囲った部分が「胸襟」になります。昔から物事を考える時は「頭」ではなく、「胸」で考えるとされてきました。すなわち、人の思いや気持ちというのは胸の中にあるとされてきたのです。
その証拠に、胸を使った慣用句は「胸の内を語る」「胸の内を明かす」などが存在します。そして、人の気持ちを表すような時は「胸の中」「心の持ちよう」など胸や心という言葉を使います。
以上の事から考えますと、「胸襟を開く」は「人の心の中を開く」と言い換えることもできます。この事から、「自分の思いを正直に話す」「包み隠さず打ち明ける」などの意味で使われるようになったわけです。
「開く」は、ここでは「門を開く」「扉を開く」と同じで、「人の心の中の気持ちをオープンにする」という意味で使われています。
胸襟を開くの類義語
続いて、「胸襟を開く」の類義語をご紹介します。
「胸襟を開く」は様々な慣用句で言い換えることができますが、この中では「腹を割る」「胸の内を明かす」の二つがよく使われます。
その他、似たような言い方として「襟を開く」「胸臆(きょうおく)を開く」も挙げられます。どちらもはほぼ同じ意味の言葉なので、「胸襟を開く」の同義語と考えて問題ありません。
胸襟を開くの英語訳
「胸襟を開く」は、英語だと次のような言い方となります。
①「open my chest(胸の内を明かす)」
②「open my heart(心の中を開く)」
①の「chest」は「胸・胸中」などの意味を持つ名詞です。この「chest」を「開く(open)」ことで、「胸の内を明かす」と訳すことができます。
また、②の「heart」は「心・心臓」などを意味する名詞です。こちらも同じく「open」を使うことで、「心の中を開く」すなわち「胸襟を開く」と訳すことができます。
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
I was finally able to open my chest with him.(彼にはやっと胸の内を明かすことができた。)
I want to open my heart and talk with him once.(彼とは一度心を開いて語り合いたいものだ。)
その他、別の言い方だと、「to have a heart-to-heart talk(心を突き合わせて話すこと)」などの表現も可能です。
I want to have a heart-to-heart talk with her.(彼女とは心を突き合わせて話をしたいです。)
英語の場合は、「胸襟」そのものを表す単語は、このように「chest」や「heart」を使うようにします。
胸襟を開くの使い方・例文
最後に、「胸襟を開く」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 彼とはもう付き合って十年だが、ようやく胸襟を開くような関係になった。
- 胸襟を開いて話ができるのは、やはり幼い頃から同じ環境で育った兄です。
- 彼女は何を考えているかよく分からない。一度胸襟を開いて語り合いたいものだ。
- 本当にすべて正直に話したのかい?この際だから胸襟を開いて真相を話してくれ。
- 上司に対して一度胸襟を開いて質問をしてみよう。何か得るものがあるに違いない。
- あの夫婦は仲が悪いことで有名だ。どうやら一度も胸襟を開いて話したことがないらしい。
「胸襟を開く」という慣用句は、様々な使い方ができるため非常に便利です。まず、仲が良くなった間柄に対しては、「胸襟を開くような関係になった」などのように、良い結果になったことをアピールする意味で使えます。
また、仲が悪い間柄もしくはこれから仲良くしたいと思う間柄であれば、「胸襟を開いて話したい」「胸襟を開いて語りたい」など前向きな意味として使うこともできます。
実際の使い方としては、「胸襟を開く」という言い方よりも「胸襟を開いて」という言い回しの方が多いです。そのため、後ろに「話したい」「語りたい」などの動詞をつけて上手く文章の中で取り入れるようにしてください。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「胸襟を開く」=思っていることをすっかり打ち明ける。
「語源・由来」=「胸襟」とは「胸と襟」、転じて「人の心」を表すため。
「類義語」=「腹を割る・腹心を布く・膝を突き合わせる・胸の内を明かす・肺肝を開く」
「英語訳」=「open my chest」「open my heart」「to have a heart-to-heart talk」
「胸襟」とは「胸の内」「心の中」などを表した言葉です。それを明かすということは、本心を隠さずに打ち明けることだと覚えておきましょう。