「しっぺ返し」という慣用句をご存知でしょうか?
日常的な場面、特に人間関係を表す上でよく使われるものです。
気になるのは、
「しっぺ」という言葉だと思います。
本記事では、そんな疑問を解消すべく
「しっぺ返し」の意味や語源、使い方、例文などを含め詳しく解説しました。
さっそく、内容をみていきましょう。
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しっぺ返しの意味
まずは、基本的な意味の確認からです。
【しっぺ返し(しっぺがえし)】
⇒すぐにやり返すこと。また、ある仕打ちをうけたのと同じ程度、方法でやり返すこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「しっぺ返し」とは、
「すぐにやり返すこと・同じ程度や方法でやり返すこと」という意味です。
例えば、AさんとBさんがいて、
お互いが秘密にしている隠し事があるとしましょう。
両者とも「お互いの秘密は守る」と約束を決めました。
ところが、AさんがBさんの秘密を
Cさんにばらしてしまったとします。
そこで、Bさんは怒って
すぐに同じようにCさんに対してAさんの秘密をばらしました。
このような時、
「Aさんはしっぺ返しを食った」「Bさんはしっぺ返しをした」
などのように言うわけです。
「しっぺ返し」は、
自分が受けた仕打ちと同じような方法で仕返しをします。
そして、「(なるべく)すぐに仕返しをする」という点が特徴です。
5年後や10年後に仕返しをするようなことは、
「しっぺ返し」とは言わないので注意してください。
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しっぺ返しの語源・由来
「しっぺ返し」という慣用句は、
「しっぺい返し」という言葉から派生したものだと言われています。
「しっぺい」とは、漢字で「竹篦(しっぺい)」と書き、
「座禅の時に、修行僧を戒めるために打つ竹製の道具のこと」を指します。
お寺のお坊さんが座禅をしている時に、
もう一人の立ったお坊さんが細長い板で肩を叩いたりするシーンを
見たことないでしょうか?
あの細長い板のことを「竹篦(しっぺい)」と言うのです。
「竹篦」は、割った竹に漆(うるし)を塗った細長い板状の形をしており、鎌倉時代に禅宗の伝来とともに伝わりました。
お寺などで座禅を行う時は、
「竹篦」で打つ役を行う僧侶は次に自分が打たれる側にもなります。
別の言い方をすれば、
「打たれた側の人も打つ側になる」ということです。
このことから、
「やられたことをすぐにやり返すこと」を「竹篦返し」と言い、
次第に「しっぺい」が「しっぺ」に変わっていったということです。
なお、人差し指と中指をそろえて相手の腕を叩くことを
「しっぺ」と言いますが、これも同じ由来から来ています。
「しっぺ」は、昔から子供がよく行ってきた遊びですが、
これは「指」を「しっぺい」に見立てたもので、
相手に叩かれたら自分も叩き返すことを繰り返します。
そのため、「しっぺ」「しっぺ遊び」などと言うようになったのです。
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しっぺ返しの類義語
続いて、「しっぺ返し」の「類語・言い換え表現」をご紹介します。
【仕返し(しかえし)】⇒相手にやり返すこと。
喧嘩など個人的な関係に用いられ、与える害はそれほど大きくない。
【報復(ほうふく)】⇒「仕返し」の意を漢語にしたもの。
かなりの害を与える場合に使い、個人間だけでなく集団間も対象とする。
【返報(へんぽう)】⇒相手に対して仕返しをすること。人の恩に報いること。
よいお返しをする場合にも使うが、日常会話ではあまり使わない。
【復讐(ふくしゅう)】⇒仕返しやかたき討ちをすること。
相手にかなりの恨みを持つ人が計画的に行うような時に使う。
【お礼参り(おれいまいり)】
⇒刑期を終えて釈放されたやくざなどが、自分に不利な証言をしたりした者に仕返しをすること。
※本来は「願いがかなった時に神仏に参詣(さんけい)すること」を意味する。
【敵討ち(かたきうち)】⇒仕返し。報復。
主君や肉親・友人などを殺した相手に対して、恨みを晴らす時に使う。
【雪辱(せつじょく)】⇒受けた恥をそそぐこと。
特に競技などで一度負けた相手を打ち破り、名誉を取り戻すこと。
以上、7つの類語を紹介しました。
「しっぺ返し」の類語は多くありますが、
全く同じ意味の言葉、すなわち「同義語」と呼ばれるものはありません。
どれもわずかに意味が異なるため、
場面によって使い分ける必要があります。
相手への恨みや対象とする人の違いなども考えて、
うまく使い分けるようにしてください。
しっぺ返しの英語訳
続いて、英語訳です。
「しっぺ返し」は英語だと次のように言います。
「tit for tat」(しっぺ返し)
「retaliate」(しっぺ返しをする)
「tit for tat」は、「tip for tap」が変化したものだと言われています。
「tip」も「tap」も「軽く叩く・打つ」などの訳があり、合わせることで「ちょっと小突いてきたから小突き返す」という意味があります。
要するに、「殴られたら殴り返す」という行為が
この熟語の本来の意味ということです。
また、「retaliate」は「仕返しをする・報復をする」という意味の動詞です。
「revenge」や「avenge」などと似た単語ですが、「revenge」は「憎しみや恨みを理由に、(肉体的・精神的な)害を与える」、「avenge」は「(不正や悪事に対して、正当な)制裁を加える」という意味です。
対して、「retaliate」は「(肉体的・物理的・身体的に)仕返しをする」という意味の言葉です。
例えば、殴られたりぶたれたりした時に、
同じようにやり返すといったケースで「retaliate」を使います。
精神的に仕返しをするような場合は、「retaliate」は使わないので注意してください。
それぞれの例文も紹介しておくと、以下のようになります。
I got an unexpected tit for tat from him.(私は彼から思わぬしっぺ返しを食らった。)
She didn’t retaliate for the blow.(彼女は打たれても仕返しをしなかった。)
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しっぺ返しの使い方・例文
では最後に、「しっぺ返し」の使い方を
実際の例文で確認しておきます。
- 彼はついにいじめていた相手からしっぺ返しを受けることとなった。
- 仏教では、普段の行いが悪いとしっぺ返しを食らうとされている。
- 動物園の動物は野生ではないが、甘く見ているとしっぺ返しを食う。
- 職場で上司の悪口を言っていたら、上司からしっぺ返しを受けたよ。
- 第一戦ではうまく勝ったものの、第二戦では強烈なしっぺ返しを食らった。
- ゲーム理論では、「しっぺ返し戦略」と呼ばれるものが存在する。
「しっぺ返し」は、上記のように
日常会話やビジネス、スポーツなど様々な場面で使うことができます。
「しっぺ返しをする」「しっぺ返しをされる」のどちらも使うことが可能ですが、一般的には後者のように受け身で使うことが多いです。
その中でも、
「しっぺ返しを食らう」「しっぺ返しを受ける」といった言い回しが多いです。
また、場合によっては「しっぺ返し戦略」という言葉として使われることもあります。
「しっぺ返し戦略」とは、ゲーム理論の内の一つで、
「相手が協調してきたらこちらも協調し、相手が裏切ったり自分も裏切る」というものです。
簡単に言えば、
「やられた時だけやり返す」という戦略だと考えて下さい。
まとめ
以上、内容をまとめると下記のようになります。
「しっぺ返し」=すぐにやり返すこと・同じ程度や方法でやり返すこと。
「語源・由来」=「竹篦(しっぺい)返し」から。「しっぺい」とは座禅の時に修行僧を戒めて打つ竹製の道具。
「類義語」=「仕返し・報復・返報・復讐・お礼参り・敵討ち・雪辱」など。
「英語訳」=「tit for tat(しっぺ返し)」「retaliate(しっぺ返しをする)」
「しっぺ返し」という慣用句は、
普段の文章の中でも使いやすいものです。
覚えてからには、ぜひ今後の人生で使ってみてはいかでしょうか?
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国語力アップ.com管理人
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