「古色蒼然」という四字熟語を聞いたことがあるでしょうか?
「古い」と書くので、何となく建物や骨董品に使われているイメージかと思われます。実はこの言葉は、お酒の名前になっているほど有名な四字熟語です。
本記事では、そんな「古色蒼然」の意味や語源、使い方などを詳しく解説しました。
古色蒼然の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味をご紹介します。
【古色蒼然(こしょくそうぜん)】
⇒ひどく古びたさま。いかにも古めかしいさま。また、古めかしく趣のあるさま。
出典:三省堂 新明解四字熟語辞典
「古色蒼然」は「こしょくそうぜん」と読みます。
意味は「ひどく古びていて趣のあるさま。いかにも古めかしいさま」などを表したものです。「古めかしい」とは「古い感じがするけども、それなりの価値がある様子」という意味です。
例えば、あなたが実家の蔵の中に眠っている古い壺を発見したとします。その壺を実際に古物商に鑑定させてみたら、意外にも高価な値段が付いたとします。
この場合、古びた壺ではあるものの、それなりの価値がある物です。よって、「古色蒼然とした壺である」などと言うことができます。
「古色蒼然」は、一般的には「古びて趣がある」という肯定的な意味で使われる四字熟語です。ただし、場合によっては単に「古びたさま」という客観的な様子、もしくは「古びていてぼろぼろである」という否定的な意味で使われることもあります。
どの意味で使うかは、場面や状況などによっても異なってくることになります。
古色蒼然の語源・由来
「古色蒼然」は、「古色」と「蒼然」の二つから成る四字熟語です。
まず「古色」は「古い色」と書くので、「古びた色合いや古びた雰囲気」を表します。
そして「蒼然」は「古くなって色あせたさま・色つやがないさま」を表します。「蒼然」の「蒼」という字は、「灰色が混じった青色」すなわち「くすんだ青色」を指すため、このような意味となります。
以上、両者を合わせることで、「古びた色合い」+「色あせたさま」⇒「いかにも古めかしいさま」という意味になるわけです。現在ではここから派生し、「趣や味わいのある様子」という意味でも使われています。
なお、「古色蒼然」は中国、明時代の文人である謝肇淛(しゃちょうせい)と呼ばれる人物が書いた書物『五雑組(ござっそ)』に由来します。
「五雑組」は、国の政治や歴史、文化など様々なテーマについて書かれた随筆集です。文献や実際の見聞に基づき、豊富な話題が記述されています。特に民俗に関する記述には、興味深い内容が残されています。
日本でも江戸時代には『五雑組』が多くの人に読まれ、百科事典のような役割として使われるようになりました。現在でも日本語版が出版されているため、入手することができるものです。
古色蒼然の類義語
「古色蒼然」の「類義語」は以下の通りです。
基本的に、「古色蒼然」は「古さ」と「趣」の二つの意味でイメージすると分かりやすいです。両方の意味、もしくはどちらかの意味に準じた言葉が類義語となります。
この中だと「古色古香」が一番近い意味の四字熟語だと言えます。ただ、「古色古香」は同じ古いものでも、対象が墨で書かれた絵や書物に限定されるという特徴があります。
その他、一般的な語だと「古臭い」「薄汚れた」「くすんだ」なども広い意味では類義語だと言えるでしょう。
古色蒼然の対義語
逆に、「対義語」としては次のような言葉が挙げられます。
こちらは「新しいものが入ってくる」という意味を持つ四字熟語です。明確な「対義語」というわけではありませんが、古い様子がなくなっていく様子を表したものであれば、反対語となります。
古色蒼然の英語訳
「古色蒼然」は、「英語」だと次の5つの単語があります。
- 「ancient(昔の・古代の)」
- 「patina(古さび・古色)」
- 「antique(古くて価値のある・骨董の)」
- 「timeworn(使い古した)」
- 「very old(とても古い)」
「古色蒼然」は、ただ古いだけではなく「そこに趣がある」という意味も含まれる言葉でした。したがって、5つの中では、「古くても価値がある」という「antique」が訳としては一番ふさわしいと言えます。
例文だと、以下のような言い方です。
This beautiful French furniture is antique-looking.(この美しいフランス家具は、古色蒼然としている。)
また、次のような使い方も可能です。
the antique-looking book (古色蒼然とした本)
「antique-looking」は、形容詞として使うので、この場合は後ろの名詞「book」を修飾している形となります。
古色蒼然の使い方・例文
最後に、「古色蒼然」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 古色蒼然としたお寺に、日本の風情を感じるこの頃である。
- 古色蒼然たるその古時計は、多くの人を魅了してきました。
- この建物は古色蒼然とした雰囲気で、伝統さを感じさせてくれます。
- 古色蒼然たる風情を醸し出している挿絵なので、素晴らしい。
- 思った印象とは異なり、古色蒼然とした業界だと感じました。
- よく見たら、ただ古びているだけの古色蒼然とした門であった。
- 古色蒼然とした街並みばかりで、周辺の雰囲気はどんよりしている。
- あの会社の社風は昔からずっと変わらない。古色蒼然そのものだね。
「古色蒼然」は、良い意味でも悪い意味でも使うことができるということでした。前半4つが「肯定的な例文」、後半4つが「否定的な例文」です。
肯定的な意味の場合は、古さの中に風情や趣があるような文脈で用います。逆に、否定的な意味の場合は「ただ古いだけである」「時代遅れである」といった文脈で用いられます。
後者の方は現代の文章ではあまり使われませんが、昔の小説文などでは意外と使われることが多いです。いずれにせよ、お寺や建物、古物や業界など幅広い対象に使える言葉が「古色蒼然」ということになります。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「古色蒼然」=ひどく古びていて趣のある様子。ひどく古い様子。
「語源・由来」=「古びた色合い」+「くすんだ青色」。謝肇淛『五雑組』。
「類義語」=「古色古香・名所古刹・時代錯誤・神韻縹緲」
「対義語」=「新陳代謝・新旧交代」
「英語訳」=「antique-looking 」
「古色蒼然」は日本の伝統や趣などを感じさせる四字熟語です。。この記事をきっかけに、ぜひ正しい使い方を覚えて頂ければと思います。