「勧善懲悪」という四字熟語をご存知でしょうか?
ドラマや映画・小説などによく登場し、普段の文章でも用いられています。ただ、この言葉の具体的な使い方がわかりくいという感じる人も多いようです。
そこで本記事では、「勧善懲悪」の意味や語源、類義語などを含め分かりやすく簡単に解説しました。
勧善懲悪の意味・読み方
まず、この四字熟語を辞書で引くと次のように書かれています。
【勧善懲悪(かんぜんちょうあく)】
⇒善良な人や善良な行いを奨励して、悪者や悪い行いを懲らしめること。
出典: 三省堂 新明解四字熟語辞典
「勧善懲悪」は、「かんぜんちょうあく」と読みます。
意味は、「善い人や善い行いをした者をほめ、悪者や悪い行いをした者を懲らしめること」です。
例えば、水戸黄門などの時代劇では、私利私欲のために悪事を働く悪代官に対して、黄門様が懲らしめて善人を救います。また、ウルトラマンなどの戦隊映画でも、主人公であるウルトラマンが町を荒らしている怪物を倒し、善人を救います。
つまり、「善いことはちゃんと奨励する一方で、悪いことにはとことん罰を与えること」を「勧善懲悪」と言うわけです。
映画やドラマでは、善人が最後には勝ち、悪人はいつか滅びるという王道のストーリー展開が多いです。そのため、「勧善懲悪」はこうした分かりやすい「善」と「悪」を表すような物語でよく使われているのです。
勧善懲悪の語源・由来
「勧善懲悪」は、中国春秋時代に書かれた歴史書である『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』に由来します。
『春秋左氏伝』の中に「悪人を懲らしめて、善人を勧め励ます」という内容の記述があります。
これを簡単に訳すと、「悪人には罰を与え、善人になることを勧める」となります。つまり、「悪い人にはそれ相応の罰を与え、善い人になりなさい」という意味です。
日本にもこの言葉は古くからあり、聖徳太子の17条憲法第6条には「懲悪勧善。古之良典」と記されています。これも同じような意味で、「悪を懲らしめて善を勧めること。古くからの良いしきたりである」ということを言っています。
以上の事から考えますと、「勧善懲悪」は紀元前の春秋時代にはすでにあり、その後、聖徳太子がいる飛鳥時代にはすでに日本に入っていた言葉であることが分かります。言い換えれば、非常に古くから存在する四字熟語ということです。
勧善懲悪の類義語
続いて、「勧善懲悪」の「類義語」を紹介します。
以上、4つの類義語を紹介しました。
基本的にはどれも「悪事をなくし、善行や善人を奨励していく」という意味を持っています。正義のヒーローのようなイメージを持てば分かりやすいのではないでしょうか。
勧善懲悪の対義語
逆に、「対義語」としては次のような四字熟語が挙げられます。
反対語の場合は、「悪人がはびこったり、悪事が放置された状況」などを表す言葉となります。当然良い意味として使われることはなく、いずれも悪い意味として使われます。
勧善懲悪の英語訳
「勧善懲悪」は、英語だと次のように言います。
「poetic justice」
「poetic」は「詩的な・詩の」という意味の形容詞、「justice」は「正義・公正・公平」などの意味を持つ名詞です。合わせることで、「詩的な正義」と訳すことができます。
ここでの「詩的」とは文学などの詩という意味ではなく、「物語でヒーローが悪役に勝つ話」というイメージで考えると分かりやすいでしょう。
また、少し難しい表現だと次のような言い方も可能です
「virtue rewarded and vice punished」(善行は称賛され、悪口は罰せられる)
「virtue」は「善行」、「reward」は「称賛する」、「vice」は「悪口」、「punish」は「罰する」という意味の単語です。こちらの方が難しい表現なので、口語ではあまり使いません。
勧善懲悪の使い方・例文
最後に、「勧善懲悪」の使い方を例文で確認しておきましょう。
- 水戸黄門のような勧善懲悪な時代劇は、いつの時代も人気がある。
- 勧善懲悪のドラマは王道だが、多くの人に共感を与えることができる。
- 古典的な小説には勧善懲悪な様子を描いたストーリー展開が多い。
- アンパンマンや仮面ライダーが人気なのは、純粋に勧善懲悪であるからだ。
- 正直に言うと、私は勧善懲悪な漫画やアニメがあまり好きではありません。
- 映画では勧善懲悪の内容が称賛されるが、現実は必ずしもそうではない。
- 悪人が処罰され、善人が報われる。そんな勧善懲悪な世界が理想です。
「勧善懲悪」は、上記のようにドラマや映画、漫画・アニメ、小説、時代劇など様々な対象に使うことができます。どれも物語の中身や主人公を称賛する内容なので、基本的には良い意味として使うと考えて問題ありません。
ただ、必ずしも良い意味で使うか?と言うとそうではありません。例えば、例文5や6のように「勧善懲悪」を否定的な意味として用いることもあります。
昔と比べて今の世の中は複雑になり、善悪の判断が難しい場面が多々あります。また、一言で「善」や「悪」と言ってもその定義が曖昧なため、場面によってはその境界があいまいになるケースもあります。
そんな時に、あまりに「勧善懲悪」を振りかざしてしまうと使われる側としては違和感を覚えてしまうでしょう。
「勧善懲悪」は、あくまで道徳の基本を表した四字熟語です。したがって、それが絶対的に正しいという意味までは含んでいない言葉だと考えて下さい。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「勧善懲悪」=善い人や善い行いをした者をほめ、悪者や悪い行いをした者を懲らしめること。
「語源・由来」=中国春秋時代の歴史書、『春秋左氏伝』から。
「類義語」=「天網恢恢・遏悪揚善・破邪顕正・激濁揚清」
「対義語」=「極悪非道・悪逆無道・跳梁跋扈」
「英語訳」=「poetic justice」「virtue rewarded and vice punished」
「勧善懲悪」であることは望ましいことです。しかし、実際の世界では正義が必ずしも勝つとは限りません。だからこそ、「勧善懲悪」なストーリーが世の人々には受けると言えるのではないでしょうか?