「一言居士」と呼ばれる四字熟語をご存知でしょうか?
主に人と人が接する場面で使われ、最近ではビジネスにおいて使われる機会も増えてきました。ただ、具体的な使い方までは知らないという人が多いと思われます。
そこで本記事では、「一言居士」の意味や読み方、語源、英語訳などを含めなるべく簡単に解説しました。
一言居士の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【一言居士(いちげんこじ)】
⇒どんな事についても、なにか自分の意見を言わないと気のすまない人。いちごんこじ。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「一言居士」は「いちげんこじ」と読みます。
「いちごんこじ」と読むことも可能ですが、多くの場合は「いちげんこじ」と読みます。「一言」は「ひとこと」とは読まないので注意してください。
そして意味ですが、「一言居士」とは「どんな事にも何か自分の意見を言わないと気が済まない人」のことを指します。
例えば、会社の会議で今後のビジネスについて話し合っていたとしましょう。ところが、どんなに会議がスムーズに進んでいても毎回必ず意見を言ってくる人がいました。
- 「そこはこうした方がいいのでは?」
- 「前回の意見の方が良かったのでは?」
- 「他にもっと良い案があるのでは?」
のように横から意見を挟むような人です。
このような場面では、「彼は一言居士な人だ」などのように言うことができます。つまり、「何かにつけていちいち口を挟んでくる人の事」を「一言居士」と呼ぶわけです。
一言居士な人は、口を挟むと言ってもものすごい量の口出しをするというわけではありません。あくまで、一言だけ理屈を言ったり少しだけ注釈を加えたりするような人を指します。
一言居士の語源・由来
「一言居士」は、「一言」と「居士」の二つから成る四字熟語です。
まず、「一言」とは文字通り「ひとこと」という意味です。そして、「居士」ですがこちらは「学徳が高いが、仕官しない人」のことを指します。
「仕官(しかん)」とは、「官に仕えること・役人になること」という意味です。
「居士」は元々は仏教を由来とする言葉で、古代インドでは「資産家の家長」を指していました。そして、日本では「在家で修行する男子」のことを指していたと言われています。
江戸時代頃になると、「男性が亡くなった後の戒名の下に付ける敬称」として使われていました。さらに近代に入ると、ある特徴や性質を持った人に対し、親しみや軽い蔑みの意味を込めて「◯◯居士」と呼ぶようになりました。
この事から、何かにつけて一言言わずに済まない人を「一言居士」というようになったのです。
以上の経緯から考えますと、「居士」という言葉自体にはそこまで否定的な意味は含まれていなかったことが分かるかと思います。時代の流れとともに、「居士」は否定的なニュアンスとして使われるようになったのです。
一言居士の類義語
続いて、「一言居士」の「類義語」を紹介します。
以上、5つの類義語を紹介しました。この中では、「うるさ型」が一番意味としては近いと言えるでしょう。文字通り、相手に対してうるさく文句を言うような言葉です。
その他、ことわざ(慣用句)では、最後の「横槍を入れる」もよく使われています。
なお、「類義語」として間違えやすい四字熟語で「直言居士(ちょくげんこじ)」が挙げられます。
「直言居士」とは「相手が誰であろうと良いことは良い、悪いことは悪いとはっきり述べる人」のことを指します。
この四字熟語自体には、「一言」や「口を挟む」などの意味は含まれていません。「一言居士」と「直言居士」は、全く意味が異なる言葉なので注意してください。
一言居士の対義語
逆に、「対義語」としては次のような言葉が挙げられます。
「闊達自在」は、度量が大きく、細かいことにこだわらないことを表した四字熟語です。また、「行雲流水」は空を行く雲や流れる水のように、自然に任せて行動することを表した四字熟語です。
どちらも間接的に「口を挟まないこと」を意味する言葉なので、「一言居士」の反対語だと言えます。
一言居士の英語訳
「一言居士」は、英語だと次のように言います。
①「have something to say about everything」
②「always wants to comment on any (and every)subject」
①は直訳すると、「すべての事に対して、何か言うことを持っている」となります。すなわち、「何か必ず言ってくる」ということです。
また、②は「どんな話題に対しても常にコメントをしたがる」という訳となります。「subject」はここでは「話題」という意味で使われています。
その他、簡易的な表現では、「complain(文句を言う)」「find fault with(粗探しをする)」などの言い方も可能です。
一言居士の使い方・例文
最後に、「一言居士」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 父は一言居士な性格なので、仕事になると必ず口を出してくる。
- あいつの一言居士ぶりが疎まれるのは、何となく分かる気がするよ。
- 彼女は一言居士な人なので、周りから面倒臭いと思われているようだ。
- 彼は相変わらずの一言居士で、会議を引っかき回していたみたいだね。
- 悪気はないのかもしれないが、彼女の一言居士な性格は直した方がよいだろう。
- 上司の発言は一言居士な気もするが、言っていることはやはり理にかなっている。
- さすがに彼は一言居士と言われるだけある。良いアイデアがどんどん飛び出してくるものだ。
例文のように、「一言居士」は否定的な意味として使うのが基本です。多くの場合、「常に口出しをしてくる人」「何か一言言わないと済まない人」といった面倒な人を対象とします。
ただし、必ずしも否定的な意味として使うというわけではありません。例えば、例文の6や7のように、肯定的な意味として使う場合もあります。この場合は、「良いアドバイスをくれる人」「良いアイデアや知恵を出してくる人」といった意味で使われています。
由来の説明でも述べたように、元々の「居士」という言葉自体にはネガティブな意味は含まれていません。そのため、このように良い意味として使うこともあるのです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「一言居士」=どんな事にも何か自分の意見を言わないと気が済まない人。
「語源・由来」=仏教が由来。「居士」は「学徳が高いが、仕官しない人」を指す。
「類義語」=「一家言・頑固一徹・うるさ型・一徹短慮・横槍を入れる」
「対義語」=「闊達自在・行雲流水」
「英語訳」=「have something to say about everything」「always wants to comment on any subject」
どのような場であろうと、自分の意見を必ず述べないと気が済まない人はいます。周囲からすると「面倒くさい」と思われるような人です。一方で、「一言居士」には「ご意見番」「アドバイス訳」のような良い意味も含まれているということは覚えておきましょう。